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続)ムスリムの子ども教育-11- 思春期※の子どもとのかかわり方

2019年09月27日 | 預言者の教育方法

慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において

 

続)ムスリムの子ども教育-11-

 

ハビーブ・アリー・ジェフリー師(アッラーのご加護あれ)TV番組「私たちの人生15」(22.57~32:30)

http://bit.ly/2lqXvqQ  

前回の復習:子どもを持つことの「目的」を明確にすること、このことによって、今後お話する多くの子育てに関する事柄が変わって来ます。すでにお子さんが大きくなっている方も、今からでも、子育ての正しいニーヤ(意思)、「アッラーのご満足を求めて、子どもを育てます。」というニーヤ(意思)をしておきましょう。

 

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イスラームにおける思春期※の子ども達とのかかわり方(2)

 

※思春期:

医学的には「第二次性徴の発現の始まりから成長の終わりまで」と定義。(ウィキペディア)

イスラーム的には「10歳からブルーグ※までの時期」

※ブルーグとは?:ムカッラフ(イスラーム法学上の義務行為を行う義務が課せられる者)になること。男の子は精通、女の子は初潮が来ると「ムカッラフ」となる。ブルーグに達した子どもたちは、すでに思春期を卒業し、「ムカッラフ」として、アッラーの元でイスラーム的な義務を負う「成人」の状態になる。

 

先生:現在は、「思春期(日本では反抗期という言葉も同意で使われているかもしれません。)」という言葉が、影響力のある言葉になってしまっています。それがある種の言い訳を与え、子ども達が何か問題を起こすと、「思春期だから」、責任感のない行動をとると「思春期だから」、思春期の子どもを持つ親たちも、「うちの子は思春期で、親の言うことをまったく聞かない。本当に難しい。頭が痛い。」と子どものことで愚痴を言い、とても苦労しています。

 

(ゲストの18歳の男の子に向かって)あなたは18歳ですね、ということは、もう思春期ではない。18歳は、ウマル様(アッラーのご満悦あれ)が、イブンアッバース様(アッラーのご満悦あれ)を、サハーバ達(アッラーのご満悦あれ)のシュウラ(イスラーム帝国会議)に代表として参加させた年齢です。イスラーム帝国のウンマ(イスラーム共同体)の重要事項を決定する会議に、長老たちと一緒に参加させた年が、18歳です。当時は、18歳になると、もう信頼のおける一人前の人として、周りが扱っていました。そうすると、その期待に応えて、彼らも、信頼のおける言動で応じていたのです。それは男の子も女の子も同じです。しかし、現在のようにその年齢の子を、ティーンエイジャーとして、まだ幼い子ども、と大人が見てしまうと、彼らもそれにふさわしい応対をしてしまいます。

 

ウマル様(アッラーのご満悦あれ)がイブンアッバース様(アッラーのご満悦あれ)をウンマの命運を決めるシュウラに参加させた際、一部の年配のサハーバ達(アッラーのご満悦あれ)が、イブンアッバース様(アッラーのご満悦あれ)の年齢を軽んじるような発言をしました。ウマル様(アッラーのご満悦あれ)は、彼らの見方が間違っていることを示すために、その席で、全員にある質問をしました。

 

「あなた方は、ナスル章から何を理解しましたか?」

 

援助章(アン・ナスル) マディーナ啓示 3節

 

بِسْمِ اللهِ الرَّحْمنِ الرَّحِيمِ

1. アッラーの援助と勝利が来て、

إِذَا جَاء نَصْرُ اللَّهِ وَالْفَتْحُ 1

2. 人びとが群れをなしてアッラーの教え(イスラーム)に入るのを見たら、

وَرَأَيْتَ النَّاسَ يَدْخُلُونَ فِي دِينِ اللَّهِ أَفْوَاجًا 2

3. あなたの主の栄光を誉め称え、また御赦しを請え。本当にかれは、度々赦される御方である。

فَسَبِّحْ بِحَمْدِ رَبِّكَ وَاسْتَغْفِرْهُ إِنَّهُ كَانَ تَوَّابًا 3

 

そこで長老たちは、この章の意味を説明しました。すると、ウマル様(アッラーのご満悦あれ)は、イブンアッバース様(アッラーのご満悦あれ)の方を見て、「アブドゥッラーよ、あなたはこの章から何を理解しましたか?」とお尋ねになりました。

すると、イブンアッバース様(アッラーのご満悦あれ)は、「長老たちと同じことを理解しました。ただ、私は、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)の死が近いと宣告されたことも理解しました。」とおっしゃいました。

つまり【人びとが群れをなしてアッラーの教え(イスラーム)に入るのを見たら、】ということは、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)がその使命を果たした、とアッラーが告げており、【あなたの主の栄光を誉め称え、また御赦しを請え。】つまり、アッラーの元へ帰る準備をしなさい、ということなのです。実際、この2年後に、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)は亡くなりました。長老たちは、このイブンアッバース様(アッラーのご満悦あれ)の深いクルアーンの理解に、とても驚嘆しました。

 

イブンアッバース様(アッラーのご満悦あれ)は、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)が亡くなられた時には、12歳だったと言われています。この逸話は、大人が、この年頃の子ども達に適切に接することで、彼らのすばらしい才能が、その後、見事に開花するという善い見本です。ここで、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)が、イブンアッバース様(アッラーのご満悦あれ)と接している3つのハディースから、思春期の子ども達との適切な関わり方を学んでいきましょう。

 

預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)の思春期の子どもへの接し方~イブンアッバース様(アッラーのご満悦あれ)を通して~:

 

1.       大人の集まりにいる思春期の子どもの存在に敬意を払うこと:

現代の私たちの文化では、大人の集まりでは、思春期の子どもがそこにいても、敬意を払われることなく、しつけのためなど、と言って、邪魔者扱いしたり、無視したり、もしくは、からかわれる対象にしたりします。例えば、「わっはっは、この子は、ひげが生えてきたぞ!見てみろ(笑)」などふざけて言ったりします。しかし、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)は、12才より下の年齢の少年であっても、イブンアッバース様(アッラーのご満悦あれ)の存在に敬意を払っていたという逸話があります。

 

ある時、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)にミルクが差し出された時、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)の右横には少年のイブンアッバース様(アッラーのご満悦あれ)が、左横には、ハーリド・ブヌ・ルワリード様(アッラーのご満悦あれ)※がいらっしゃいました。

※ハーリド・ブヌ・ルワリード様(アッラーのご満悦あれ):イスラーム初期の正統カリフ時代の武将。「アッラーの剣」という異名で知られる。

預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)がそのミルクをお飲みになった後、スンナでは右の人が次に飲みますが、左には、イブンアッバース様(アッラーのご満悦あれ)よりもかなり年配のハーリド様(アッラーのご満足あれ)がおられたため、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)は、イブンアッバース様(アッラーのご満悦あれ)にこう尋ねました。

 

《ハーリドにこれを飲ませることを、あなたは私に許可してくれますか?》イブンマージャ伝承

 

預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)は、10歳そこそこの少年に、きちんと許可を求めましたが、現代では、その年代の子ども達は、大人からこんな丁寧な対応は受けず、「年配の人が優先されることを、子どもはきちんと理解すべきだ。」と、勝手に左にいる年上の男性を優先してしまうでしょう。まるで、それが礼儀作法、子どものしつけだと言わんばかりに。しかし、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)は、礼儀のために、人の権利を勝手に奪うことはなさいませんでした。ですから、イブンアッバース様(アッラーのご満悦あれ)にきちんと許可を求めたのです。預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)に「いいですか?」と尋ねられたら、あなたならどう返答するでしょうか?

 

すると、イブンアッバース様(アッラーのご満悦あれ)は、こう言いました。

「私は、アッラーの御使い様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)の飲み残し(のバラカ(祝福))を、自分以外の誰にも優先したくありません。」

そうして、イブンアッバース様(アッラーのご満悦あれ)がお飲みになり、その後、ハーリド様(アッラーのご満悦あれ)がお飲みになりました。》イブンマージャ伝承

 

ここに、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)の思春期の子ども達に対する模範的な対応が表れています。この年代の子ども達は、どんな時代であっても、誰かが、自分の意見を聞いてくれること、自分の選択に耳を傾けてくれることを願っています。子どもだから、こうしなさい、と言うだけで、その子が何をしたいのか、どんな風に思ったのか、まったく聞かずに命令だけを与える、という対応では、この年代の子ども達の要求を満たすことができません。

 

2.子どものやる気をそがずに、善いことをしたらすぐに褒める:

イブンアッバース様(アッラーのご満悦あれ)は、自分の叔母さんにあたる、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)の奥様のマイムーナ様(アッラーのご満悦あれ)の家に泊まるのが好きで、よく泊まっていました。ある夜、10歳か11歳だったイブンアッバース様(アッラーのご満悦あれ)が、マイムーナ様(アッラーのご満悦あれ)の部屋に泊まっていた時のハディースがあります。

 

イブンアッバース様(アッラーのご満悦あれ)はこうおっしゃいました。

 

《預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)が用足しに行かれたので、私は彼のためにウドゥー(小浄)の水を置いておきました。

そして彼が戻って来て「誰がこれを置いたのか?」と言いました。

すると彼ら(ズハイルの伝承)、私(アブー・バクルの伝承)は「イブン・アッバースです」と言った。

そこで彼はこう言った。

「アッラーよ、彼に宗教への深い洞察の才を与えたまえ。اللَّهُمَّ فَقِّهْهُ فِي الدِّينِ」》ブハーリーとムスリム伝承

 

イブンアッバース様(アッラーのご満悦あれ)はこの時、3つの善いことをなさいました。ひとつは、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)に対する大きな関心と愛情と敬意の念を現したこと、自分からウドゥーの水を用意しようと思いつき行動に移したこと、そして、何をするかよく考えてから行動したこと、です。

 

この年代の子ども達は、「自分から」何かをすることがとても大切です。親に、「○○をしなさい」と言われてしぶしぶやるのでは、受け身の姿勢ですが、自分から、やりたいと思ってやることには積極性、主体性があります。この年代のお子さんを持つご両親は、子どもに、「○○しなさい」、「××ができていない」、と命令するばかりでなく、「自分から」やる気を出す、積極性を認めて伸ばしてあげることが重要です。イブンアッバース様(アッラーのご満悦あれ)は、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)や誰か大人に言われてウドゥーの水を持ってきたのではありません。「自分から」やりたい、と自らの働きかけで行動を起こしました。その自主性を預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)は即座に評価して、彼(アッラーのご満悦あれ)のために、すばらしいドゥアーをしてくださいました。

 

ハディース学者のイブン・ハジャル師(アッラーの慈悲あれ)は、このハディースの解説で、イブンアッバース様(アッラーのご満悦あれ)には、この時3つの選択肢があったと解説しています。

(1)10歳か11歳の子どもらしく、トイレのドアを開けて、水を置いてから閉める。

(2)水を持って行くのは面倒だから、持って行かない。

(3)水を持って来て、ふさわしい場所に置く。

この3つの選択肢から3を選んで、行動に移したことに、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)は満足なさって、彼(アッラーのご満悦あれ)にドゥアーをなさいました。

この預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)のドゥアーのおかげで、イブンアッバース様(アッラーのご満悦あれ)はその後、ハディースを多く伝承する大イスラーム学者となりました。

 

ここでひとつ注目して頂きたいことは、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)がイブンアッバース様(アッラーのご満悦あれ)に与えたご褒美が、ドゥアーであったという点です。親は、子どもが善い行いをした時のご褒美を、お金や物だけに限らないようにすべきです。物質的なものだけでなく、精神的なご褒美も与えるよう習慣づけてください。それは、思春期になる前から、行うことが重要です。

 

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