イスラーム勉強会ブログ

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預言者伝43

2013年03月21日 | 預言者伝関連

135.英知と寛容と権利放棄:
  預言者(祝福と平安あれ)は書記であるアリーを呼んで、「ビスミッラーヒッラフマーニッラヒーミ(慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において)」と書きなさいと命じました。
  スハイルは言います:アッラフマーン(慈愛深き御方)とは何だか全く分からない。だから「ビスミカッラーフンマ(あなたアッラーの御名において)」とおまえが昔書いていたように書くよう。「アッラーに誓って、私達は、ビスミッラーヒッラフマーニッラヒーミとしか書かない!」と信徒たちが怒りました。しかし預言者(祝福と平安あれ)は「ビスミカッラーフンマと書きなさい」と言われたのでした。

  続けて彼は言われました:「これがアッラーの使徒ムハンマドが和解に同意した事項である、と書きなさい」スハイルは言いました:「いや、お前が本当にアッラーの使徒であるとわれわれが知っていたなら、聖なる館からお前を追放することも、攻撃することもなかったのだ。ここにはアブドゥッラーの子、ムハンマドと書け。」
  預言者(祝福と平安あれ)は言われました:「皆さんがどんなに私のことを嘘つきだと言われても、私は確かにアッラーの使徒です。アリーよ、アブドゥッラーの子のムハンマドと書きなさい」アリーは、「アッラーに誓って、(先に書いたアッラーの使徒という言葉を)消しません!」、と言いましたが、アッラーの使徒(祝福と平安あれ)は:「どこにそれが書かれているか示しておくれ。」とアリーに言われ、アリーがその場所を指すと、そこにある(アッラーの使徒という)言葉を消されました。

136.調停と試練:
  続けて預言者(祝福と平安あれ)は言われました:「これは、アッラーの使徒(祝福と平安あれ)が和解に同意した事項である。つまり、そちらは、われわれに聖なる館を巡回できるようにすることである。」
  スハイルは言いました:「アラブに(クライシュは)無理強いされたと言われるのは堪らないが、来年からは、そうできるようにしよう。」アリーもそのように書きました。
  スハイルは続けました:「他にもある。われわれのところから誰もそちらには行かせないこと。もし(お前たちのところに)来た者が、おまえの教えに従っている場合は、われわれに追い返すこと。」これを聞いた信徒たちが叫びました:「なんということ!ムスリムとしてやって来た者を多神教徒のところに戻せというのか!」
  そんなやり取りの最中に、アブージャンダル・イブン・スハイルがマッカの奥深くから縛られたままの状態で逃げてやって来ました。信徒たちのところに身を投じに来たのです。
  スハイルは言いました:「ムハンマド。この男をこちらに返してもらうことで、初めての和解としよう。」
  預言者(祝福と平安あれ)は言われました:「われわれはまだ協定を交わしていない」
スハイル:「ならば何においても和解しない」
預言者(祝福と平安あれ):「アブージャンダルを私に返してください」
スハイル:「いや、彼は渡さない」
預言者(祝福と平安あれ):「そんなことを言わずに、ぜひ」
スハイル:「いや、だめだ」
そこでアブージャンダルが言いました:「信徒の衆!私はムスリムとして逃げてきたのに、多神教徒らのところへ戻されてしまうのか?!私がどんな目に遭っているか、ご覧になっていないのですか?」彼は確かにアッラーを信じているがために酷く迫害されていました。それでも、預言者(祝福と平安あれ)は彼を多神教徒たちのもとに返しました。
  最終的に、両側は、10年間の休戦と、クライシュからムハンマドのもとに主人の許しを得ずにやって来た者はクライシュに追い返され、ムハンマドのもとからクライシュに行った者は返されない、またムハンマドの契約に入りたい者は入り、クライシュの契約に入りたい者は入る、という内容で合意しました。

137.和解したことで発生した信徒らの災難とマディーナへの帰還:
  和解という出来事やマディーナへ帰らなければならない状況の発生を目の当たりにした信徒たちの心に大きな衝撃が走りました。ウマルはアブーバクルに:「アッラーの使徒様(祝福と平安あれ)は私たちに聖なる館を訪問して巡回するとお話になったのではなかったか?」
アブーバクルは答えました:「確かに」
ウマル:「それならば」
アブーバクル:「君はきっとそこを訪れ、巡回もする」

  和解を終えた預言者(祝福と平安あれ)は、一緒に連れてきていた犠牲の動物を屠り、そして頭の毛を剃りました。マッカに入ってウムラ出来ることを確信していたにもかかわらず、実行できなかった信徒たちは当惑していましたが、預言者(祝福と平安あれ)が屠殺と剃髪する姿を見て、自分たちも同じように屠り、頭を剃ったのでした。

(参考文献:「預言者伝」、アブー・アルハサン・アリー・アルハサニー・アンナダウィー著、ダール・イブン・カスィール出版、P277~279など)