イスラーム勉強会ブログ

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預言者伝21

2011年03月31日 | 預言者伝関連

بسم الله الرحمن الرحيم

68.アッラーの使徒(平安と祝福あれ)によるムハージルーンとアンサールの連帯作りとユダヤ人との協定締結:
  アッラーの使徒(平安と祝福あれ)はムハージルーンとアンサールの関係を明確にする証書を作成し、その中にユダヤ人たちと結んだ協定を記しました。具体的には、彼らの宗教、財産を認め、彼らの条件を受け入れ、また彼らに条件を課したという内容が盛り込まれました。

69.アザーンの制定:
  預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)がマディーナに落ち着くと、イスラームの存在はどんどん強く大きくなっていきました。人々は当時、礼拝の時刻になると、呼びかけられることなく、預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)の元に集まっていました。預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)は、人々を招集するための方法として、ユダヤ人やキリスト教徒が使っていた、礼拝の呼びかけ用のラッパや火などを使った方法を模倣することは好まれませんでした。そこでアッラーは信徒たちにアザーンという方法をお恵みになりました。実は幾人かの信者がそれを夢に見、アッラーの使徒(平安と祝福あれ)が認め、信徒たちが施行したという背景がありました。アザーン役には、ビラール・イブン・ラバーフが選ばれ、彼は、審判の日が来るまでアザーンを行う者たちの代表であるとも言われています。

70.偽信仰の登場とマディーナにおける偽信者:
  マッカには、偽信仰は存在しませんでした。それは、当時イスラームが弱く、何の力も持たず、誰に対しても益を与えることも害を加えることもなかったためです。またその当時は、イスラームに入ることは、自分の身を危険に投じることを意味し、周りの敵対心を煽る行為と捉えられていました。そのため、強い信仰を持ち、命と未来を危険にさらすことを誠実に決心した者だけが、イスラームに入って行ったのです。

また当時のマッカでは、同等の二つの勢力ではなく、圧倒的な多神教徒と、弱く虐げられるイスラーム教徒という二つの勢力が存在していました。クルアーンが次のように描写している通りです:

「あなたがたは地上において少数で弱く、虐待されていた時を思いなさい。人びと(マッカの多神教徒たち)があなたがたを、うち滅ぼしてしまうのではないかと恐れた。」(8/26)
  

そしてイスラームがマディーナに移動し、アッラーの使徒(平安と祝福あれ)と仲間がそこに安住するようになると、イスラームはどんどん広がり上昇して行きました。そしてイスラーム社会が実行すべきすべてのことを完遂すると状況は変化し、偽信仰が現れ始めました。実は偽信仰が現われることはごく普通の、起こるべくして起きたことです。偽信仰の兆候は、競争しあう二つの勢力が存在する環境に現われます。そこにはその二勢力の間をふらふらする不安定な要員が出現し、どちらかに傾こうとします。イスラームの呼びかけに対し、元の勢力に留まる場合、元の勢力に自身の忠誠と愛情を捧げる一方、物質的利益のためや、敵対しているイスラーム勢力の拡大とその勝利のせいで、自身の立場を公表することができません。イスラーム勢力に加わりながら、元の勢力との関わりを持つ…クルアーンはこの不安定な立場を詳細に描写しています:

「また人びとの中に偏見をもって、アッラーに仕える者がある。かれらは幸運がくれば、それに満足している。だが試練がかれらに降りかかると、顔を背ける。かれらは現世と来世とを失うものである。これは明白な損失である。」(22/11)、彼らは次のように表現されます:「あれやこれやと心が動いて、こちらへでもなくまたあちらへでもない。」(4/143)


  彼らアウス族とハズラジュ族とユダヤ教徒から成る偽信者たちの代表に、アブドゥッラー・イブン・アビー・イブン・サルールという男がいます。彼はイスラームがマディーナにやって来る直前に、彼らの代表となることが決まっていたのですが、マディーナの人々がイスラームにどんどん入って行ったため、アブドゥッラーはイスラームを敵視しました。アッラーの使徒(平安と祝福あれ)に指導権を奪われたと感じたアブドゥッラーは、人々がイスラーム以外を受け入れないのを目の当たりにした後、無理やり彼自身もイスラームに入りました。しかしその後も、頑なに、嫌悪と偽信仰にしがみつき続けました。


  心に病を持つ者は皆、イスラームに敵対し、この前進的な新しい宗教に屈折した想いを抱きました。イスラームは彼らが築き上げたものを壊し、締結したことを解き、マディーナに重大な変化をもたらしたためです。そこにはムハージルーンとアンサールから成る新しい共同体が生まれ、彼らの心は親愛で結びつき、信徒たちは預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)に対する愛を、先祖、子孫、配偶者より優先したので、偽信者たちの心は怒りと嫉妬でいっぱいになりました。そのため彼らはイスラームに対して策略を図り、事を難しくしようと陰謀を企て始めます。こうした背景により、マディーナには敵対する勢力が形成され、信徒たちは常に彼らを警戒する必要がありました。イスラームと信徒たちにとって最大の危険となる可能性があったためです。クルアーンはこのような彼らの様子を詳細に伝えています。偽信者の存在はイスラームにとって重く、預言者伝でも数多く登場します。

(参考文献:「預言者伝」、アブー・アルハサン・アリー・アルハサニー・アンナダウィー著、ダール・イブン・カスィール出版、P201~204)

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