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91章解説

2011年03月08日 | ジュズ・アンマ解説

بسم الله الرحمن الرحيم
91章解説

1. 太陽とその輝きにおいて、
2. それに従う月において、
3. (太陽を)輝き現わす昼において、
4. それを覆う夜において、
5. 天と、それを打ち建てた御方において、
6. 大地と、それを広げた御方において、
7. 魂と、それを釣合い秩序付けた御方において、
8. 邪悪と信心に就いて、それ(魂)に示唆した御方において(誓う)。
9. 本当にそれ(魂)を清める者は成功し、
10. それを汚す者は滅びる。
11. サムード(の民)は、その法外な行いによって(預言者を)嘘付き呼ばわりした。
12. かれらの中の最も邪悪の者が(不信心のため)立ち上がった時、
13. アッラーの使徒(サーリフ)はかれらに、「アッラーの雌骼駝である。それに水を飲ませなさい。」と言った。
14. だがかれらは、かれを嘘付き者と呼び、その膝の腱を切っ(て不具にし)た。それで主は、その罪のためにかれらを滅ぼし、平らげられた。
15. かれは、その結果を顧慮されない。

 この章は、罪業から魂の浄化は好ましいことだと説明しています。そこには魂の勝利があり、また不信と背信行為を原因とする損失に対する脅迫があるからです。また、マッカの不信仰者たちなどに、アッラーの使徒だったサーリフを嘘つき呼ばわりし、アッラーに背いたサムードの民に振りかかったような罰と滅亡があるだろうとの警告も含まれます。

 まずアッラーは、太陽とその光において誓い給います。「太陽とその輝きにおいて」この言葉は、人々の関心を太陽の荘厳さとそれを創造した主の偉大さ、また太陽が放出する熱、光線、地球に命が宿る基になるエネルギーに向けます。じつに太陽はその光と熱を決まった量だけ放出します。もし太陽が地球に送る以下の温度の熱を出していたら、地球上のあらゆるものは凍ってしまうでしょうし、それ以上の温度の熱を出していたら、森林は燃え、地球上の大部分に火が点いてしまうでしょう。ここで問いが出ます:どこから太陽が燃えるための燃料がやって来るのだろう?仮に太陽の内部に保存してあるものが燃料として使われているとしたら、年を重ねるたびに太陽の温度は下がるはずですが、遠い過去を振り返ってみると、太陽は未だに植物と動物が生きていけるためのある一定の温度の熱を地球に送り続けていることが分かります。

 では太陽はどこからそのエネルギーの元を得ているのでしょうか?また何が、太陽から放出される熱の大元なのか?一定の温度を保って燃え続けさせているものとは?

 それこそは、至高なる「アッラー」です。かれの御力は全てを超越しています。

 続けてアッラーは月において誓い給います。月は太陽が沈んだ後、その光に従います。「それに従う月において」太陽が持つ重要性を強調するために、アッラーがどのように月と太陽を関連付けたかについて熟考してみましょう。なぜなら月の光は太陽の光から派生しているからです。以上から、月は数あるアッラーのしるしの一つと言えます。月はその優しい光とそれに伴う有益なものを生き物に放出します。同様にアッラーは、私たちが月日の計算が出来るように、月が流れる道を規定し給いました。以上はアッラーの存在とかれの叡智の存在を示し、物質主義が主張する、「偶然によって世界が存在した」ことを否定します。

 アッラーは、太陽を出現させ、眺める者たちにそれを晒す昼において誓い給います。「(太陽を)輝き現わす昼において」アッラーは昼を人間が主の恩恵としての生活の糧を求める場所とし給いました。

 またアッラーは、太陽を覆う夜においても誓い給います。「それを覆う夜において」夜は仕事で疲れた身体の休息とされました。もし人生すべてが昼だったなら、人間は生産生活を活発に継続することが出来なかったでしょう。

 続けてアッラーは、天において誓い給います。「天と、それを打ち建てた御方において」この天とそれを創造し、高めた御方アッラーです。これら諸天は、主の御力の偉大さを目立たせる無数の星や惑星を含有しています。

 アッラーは大地において誓い給います。「大地と、それを広げた御方において」つまり、この大地とそれを広げた御方アッラーです。かれは人間と動物が生きるために有用な土地を広く延ばしてくださいました。

 最後にアッラーは、人間の魂において誓い給います。「魂と、それを釣合い秩序付けた御方において」つまり、その創造を完遂させた至高なるアッラーです。アッラーは人間の肢体を創造性と有益さの極限とし給うた上に、思考の道具として理性を、話すために舌を、見るために目を、聞くために耳を、臭うために鼻を、生活のために両手と両足を追加し給いました。これら以外にも、創造の偉大さの秘密の数々が人間の身体に備わっています。

 続いてクルアーンは、人間の内部にアッラーが植え付け給うた、善と悪、導きと迷いを感じ取れる力の諸特徴の解明に移ります。アッラーは仰せになっています:「邪悪と信心に就いて、それ(魂)に示唆した御方において(誓う)」つまり、かれ(アッラーは)人間の魂に、悪や罪といった放棄すべき行為、善行や服従といった望ましい行為を解明し給うたということです。別の言い方をすれば、アッラーは人間に善の道と悪の道をはっきり見せてくださったということです。

 この後に、誓いの返答が登場します:「本当にそれ(魂)を清める者は成功し」つまり、自らの魂を罪から清め、良質の善で成長させ、篤信で高めた者は確実に勝利を得たということです。「それを汚す者は滅びる」つまり、自らの魂を罪で隠し(ダッサーハーの元は、隠すという意味を持つダッササハー。)、服従と善行で晒さなかったものは確実に失敗したということです。

 続いてクルアーンは、サムードの民と、彼らが預言者サーリフ(平安あれ)に背いたという罪の報いである罰の話に移ります。その説明の前に、クルアーンにおける物語の目的そしてサムードの民の物語の真実についてまず始めるのが良いでしょう。

 諸預言者の物語の目的:クルアーンの中に諸預言者の物語が登場する目的は、アッラーの満足についての吉報、かれに背くことについての警告、イスラーム宣教の基礎の説明、預言者と仲間の心を堅甲にすること、預言者性の証明です。クルアーンは諸預言者の物語の中から、訓戒を得られるものを選びます。ユースフ(平安あれ)の物語のように詳細まで述べることもあれば、大体の場合のように物語の一部を取ることもあります。なぜならその一部には、ムーサー(平安あれ)の物語のような核心をついた訓戒があるからです。

 諸預言者物語は、細かく述べられることもあれば、簡潔に述べられることもありますが、そこにこそクルアーンの奇跡が顕現し、その雄弁さが現われるのです。

 この章でクルアーンはサムードの物語を省略した形で登場させます。だからこそここでは、クルアーンの他の箇所に出てくる同物語を頼りに、詳細を見て行きましょう。

 サムードの物語:アッラーは御自身の預言者サーリフをその民であるサムードに遣わし給い、サーリフは彼らに訓戒を垂れ、偶像崇拝を放棄し、アッラーを崇拝することに呼びかけました。サムード―すでに滅びたアラブ部族の一つ―はヒジャーズの北方にあるアル=ヒジュルと呼ばれる地に住んでいました。現在は、「サーリフの都市」として知られています。サムードの人々は、自分たちに遣わされた預言者が齎したメッセージを信仰せず、預言者が示したような真実の道を歩まないどころか、彼の呼びかけを嘘としました。また彼がアッラーから遣わされた者であることを証明する奇跡を持って来るように要求しました。そこでサーリフは人々にアッラーが創造し給うた特別な雌ラクダを持って来て、悪さをしないよう命じました。アッラーはこの雌ラクダにあらかじめ水を飲む日を定め、人々にも水を飲む日を別に定め給い、ラクダにいたずらをしたならば罰が下るであろうことを約束し給いました。

 かのラクダはしばらくの間彼らの間に留まりました。一日は水を飲み、他の日には水を飲みません。このような状態を続けるラクダを見た多くの人たちが、サーリフが預言者であることを認めたのですが、貴族の人たちは怯え上がってしまい、自分たちの存在を脅かされることに恐怖したため、ラクダを殺そうと企てます。預言者サーリフは止めるよう警告したのですが、受け付けようとしません。彼らの中の極悪人がラクダの住む場所に向かい、仲間たちの同意のもと、ラクダをしてしまったため、人々にアッラーの怒りが相応しいものとなり、罰が確定しました。アッラーは彼らの罪を原因に、人々を全滅させ給うたのです。助かったのは、サーリフと彼を信仰した人々のみ。以上がこの章の後部にてアッラーが仰せになった内容です:
 「サムード(の民)は、その法外な行いによって(預言者を)嘘付き呼ばわりした。かれらの中の最も邪悪の者が(不信心のため)立ち上がった時、アッラーの使徒(サーリフ)はかれらに、「アッラーの雌骼駝である。それに水を飲ませなさい。」と言った。だがかれらは、かれを嘘付き者と呼び、その膝の腱を切っ(て不具にし)た。それで主は、その罪のためにかれらを滅ぼし、平らげられた。かれは、その結果を顧慮されない。」

 アッラーは、アッラーの使徒であるサーリフを嘘つき呼ばわりしたサムードの民について私たちに知らせ給うています。嘘つき呼ばわりしたのは、「その法外な行い」つまり、不信と罪深い行為において度を越してしまったためです。「かれらの中の最も邪悪の者が(不信心のため)立ち上がった時」サムードの中でも最も悪い人間、クダール・イブン・サーリフが悪さをしかけてはいけないと警告したラクダを不具にしました。「アッラーの使徒(サーリフ)はかれらに、「アッラーの雌骼駝である。それに水を飲ませなさい。」と言った」アッラーの雌ラクダだから、悪さをしてはいけない、水を飲ませるときも気をつけなさい、ラクダには決められた水飲みの日があり、あなたたちにも決められた水飲み日がある、ということです。「だがかれらは、かれを嘘付き者と呼び、その膝の腱を切っ(て不具にし)た。」人々はアッラーの使徒であるサーリフを嘘つき呼ばわりし、その中でも最も悪い者がラクダを不具にしてしまったということです。「それで主は、その罪のためにかれらを滅ぼし」アッラーは彼らを滅ぼし、不信と、預言者を嘘つき呼ばわりし、ラクダを不具にした罪のために罰を下し給うたということです。「平らげられた」子供、大人など人々全体に対して罰を与え給うたということです。「かれは、その結果を顧慮されない」アッラーは人々を滅ぼしたことに対する責任から誰も恐れないということです。アッラーはそのなされることについて責任を問われることはないのです。

(参考文献:ルーフ・アル=クルアーン タフスィール ジュズ アンマ/アフィーフ・アブドゥ=ル=ファッターフ・タッバーラ薯/ダール・アル=イルム リルマラーイーンP116~121)

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