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預言者伝4

2010年08月17日 | 預言者伝関連

بسم الله الرحمن الرحيم
12.ハディージャ(御満悦あれ)の家で:
  今までに遭遇したことのない出来事に恐怖を覚えた預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)は、心臓の動悸を激しくしながら帰宅しました。そして「私を包んでください、包んでください !私は自分が恐ろしい。」とハディージャに訴えるのでした。彼女が、なぜこのような状態にあるのか理由を尋ねると、預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)は洞窟で起こったことを話しはじめました。ハディージャはしっかりとした考えを持った女性でした。以前から預言者や天使たちについて聞き知っており、キリスト教に改宗したいとこのワラカ・イブン・ナウファルを訪問していたのです。ワラカは聖典を読み、律法と福音の民から学習し、純正な理性の持ち主がマッカの民の行いを否定するように、彼もその醜行を嫌っていたのでした。
  ハディージャは妻であるというその近さゆえに、人々の中で最も預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)の人格を知った人でした。その人格からアッラーに選ばれ、成功することを裏付けるその高貴な人徳の数々を彼女は目の当たりにしていたのでした。このような人となりと素行を備えた彼が悪魔に襲われたり、ジンに憑かれることは考えられません。またそのようなことはハディージャが知っているアッラーの叡智や被造物に対するアッラーの慈しみと相反していたので、自信と信仰と確信を持って、預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)にこう言うのでした:
「いいえ!アッラーに誓って。アッラーはあなたを辱められません。あなたは親族を大切にし、誰にでも親切にし、貧者に施し、客人をもてなし、不幸に見舞われた者を助けてきたではありませんか。」

13.ワラカ・イブン・ナウファルと:
  ハディージャは、この言葉を、健全な理性と純正な天性、これまでの経験と人々に対する知識に基づいて口にしたのでした。
  しかし事はさらに重大でしたので、各宗教に詳しい人の助言が必要でした。そこでハディージャは学者でもあるいとこのワラカ・イブン・ナウファルを頼ることを思いつき、預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)を連れて彼のもとへ赴きました。
  預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)が洞窟で見たことをワラカに話すと、ワラカは言いました:
「私の魂を手にする御方にかけて。それはムーサーを訪れたナームース(啓示伝達の天使、ジブリール)じゃ。やがて人々はそなたを嘘つき呼ばわりし、危害を加え、そなたをここから追い出して、戦いを挑んでくるじゃろう。」
  預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)は、クライシュ族における自分の(高い)地位を知っており、人々から「信頼のおける人」や「誠実な人」と呼ばれていたため、ワラカの「人々はそなたを追い出すじゃろう」という言葉に驚愕したのでした。「彼らが私を追い出すのですか?!」と。
  ワラカは続けます:「その通り。そなたに起こったようなことに見舞われた者で、敵対されなかった者はおらぬ。もしそなたのその日までわしが生きていられたら、大いにお助け出来るのじゃが。」
  その後まもなくしてワラカは亡くなりました。啓示はしばらく途切れた後、また降り始めます。
  啓示が途切れていた期間は、数日間と言われています。預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)はこの間、悲しみと当惑と驚きに晒されましたが、きっとワラカの助言から、自分がジンに憑かれたのではなく啓示を授かったのだ、と知っていたことで安堵感を覚えていたことでしょう。

(次回は、預言者(平安と祝福あれ)の身の回りの人たちの入信などについて、インシャーアッラー。)

(参考文献:①「預言者伝」、アブー・アルハサン・アリー・アルハサニー・アンナダウィー著、ダール・イブン・カスィール出版、P117~118
      ②「封印された美酒」サフィーユッラフマーン・アルムバーラクフーリー著、ダール・アルフィクル出版、P42~43
      ③「預言者ムハンマドの足跡を辿って(前編)」、アブー・ハキーム・前野直樹編訳、ムスリム新聞社発行、P52~53)

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