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106章解説

2010年06月24日 | ジュズ・アンマ解説

بسم الله الرحمن الرحيم
106章解説
1.クライシュ族の準備のため、
2.冬と夏のかれらの隊商の準備のため、(そのアッラーの御恵みのために)
3.彼らに、この聖殿の主に仕えさせよ。
4.飢えに際しては、彼らに食物を与え、また恐れに際しては、それを除き心を安らかにして下さる御方に。

 (象章のテーマである)アブラハとその軍隊による聖殿破壊は、アラブ人たちにとってのカアバをさらに神聖なものとし、カアバと巡礼客達に奉仕するクライシュ族の者たちの地位向上に影響を与えました。アッラーの聖なる館の民である彼らは、そこに住み着くことで尊厳と保護を与えられました。そのことは地上における安全な大地の行き来にも繋がりました。当時、アラブの間では強奪や略奪が頻繁に起こっていたものの、クライシュ族の誰もそういった害に遭うことはありませんでした。またこの安全はキャラバンを使った二つの貿易の旅に彼らを駆り立てました。一つは冬にイエメンへ。もう一つは夏にシャームへ。この貿易により、クライシュ族は豊かな富に恵まれることになりますが、注意すべき点は、彼らの土地は農耕に向いているわけではなく、また彼らは何か特別な手工業を担っていたわけでもなかったことです。安全に基づいた貿易がクライシュ族の基本的な糧の収入方法だったのです。

 至高なるアッラーは、クライシュ族に安全と糧の恩恵を施し給いましたが、アッラーを崇めることを拒否し自惚れる彼らの状態には驚かされます。本来なら、彼らはアッラーを崇め、頂戴した恩恵に感謝すべきであり、またかれに何者も配するべきではありません。

 アッラーはこの章を次の御言葉で始め給います:
 「クライシュ族の準備(إيلافイーラーフ)のため、冬と夏のかれらの隊商の準備のため、」

 つまり:アッラーの館が崩壊から救われ、アブラハとその軍隊が追い出されたことで彼らが何も得られなかったことは、クライシュ族に年二回の連結した貿易の旅を準備する結果になった。彼らは安心して糧を貿易から得られ、誰からも脅されて怖がることはない…アッラーは以上のことを、「彼らのために」成し給うたのではなく、アッラーが御自身の館を守るためだったのです。アッラーが御自身の館を守り給うという事実は、冬はイエメンへの旅を、そして夏にはシャームへの旅をクライシュ族に準備されるという出来事が付随しました。

 イーラーフという言葉が繰り返されていますが、クライシュ族の地位を示し、意味を誇張するための方法です。

 「彼らに、この聖殿の主に仕えさせよ。」つまり、カアバの主である至高なるアッラーを崇めるよう彼らに命じなさい、という意味です。アッラーが、「彼らの主に仕えさせよ」と仰せにならず、「この聖殿の主」と仰せになったことを熟考してみてください。これはまず、アッラーが当時クライシュ族だけに与えた恩恵と諸特徴の背景に集中されます。彼らはこの聖殿の名において、安全な貿易を満喫しており、危険に出くわしても、「私たちはアッラーの館の隣人だ」と言うことで悪さをしようとする者たちを鎮めていたのでした。

 クライシュ族に対するアッラーの恩恵には制限などありません。彼らがアッラーから頂戴したすべての恩恵のためにかれを崇めることがなくても、身に馴染んだ冬と夏の容易にしてもらえた安全な旅という境遇のためにかれを崇めるべきでしょう。

 「飢え(جوعジューゥ)に際しては、彼らに食物を与え、また恐れ(خوفハウフ)に際しては、それを除き心を安らかにして下さる御方に。」:ジューゥもハウフも、意味を強調する非限定の形が使われています。つまり、二つの旅によって、クライシュ族の土地が農耕地ではないために今までに晒されていた激しい空腹から食べさせ給い、アッラーが滅ぼし給うた象の主から来る大きな恐怖やあらゆる敵から彼らを救い給うたということです。その後アッラーはさらなる恩恵…つまりムハンマド(平安と祝福あれ)を預言者として遣い給うたこと…をクライシュ族に垂れます。人々は彼を求めてあらゆる国からマッカにやって来るようになりますが、クライシュ族はそれによって入る利益が増え、貿易もさらに盛んになりました。またアッラーの恩恵によって兄弟となった人々を恐怖から安全にし給いました。

 クルアーンが飢えに際して食事を与え、次に恐れに際して安心を与えたとの言葉の順番になっている点を熟考してみてください。実はこれは、食べ物を求める本能が数ある本能中で最も強く、最も現われやすく、そして安全を求める本能が次にくると心理学が証明していることなのです。

 つまり糧と恐怖から安心でいられることという恩恵は、アッラーが人間に与えられた最も偉大な恵みであるといえます。それらは崇拝と感謝と称賛がアッラーに相応しいと思わせるに十分なものです。代わってアッラーに仕えることを拒否し、アッラーが人間に行きわたらせ給うた数多くの恩恵を忘れることは、それらが消えてしまうことに繋がります。

(参考文献:①ルーフ・アル=クルアーン タフスィール ジュズ アンマ/アフィーフ・アブドゥ=ル=ファッターフ・タッバーラ薯/ダール・アル=イルム リルマラーイーン(P178~180)

②アッ=タフスィール・アル=ワスィート/ワフバ・アッ=ズハイリー薯/ダール アル=フィクル(第3巻P2937~2939)

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