イスラーム勉強会ブログ

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79.引き離すもの章(アン・ナーズィアート)【4】

2007年09月04日 | ジュズ・アンマ解説

 アッラーは預言者ムーサーに、フィルアウンに忠告するように命じました。「そしてかれに言ってやるがいい。『あなたは(罪から)清められたいのか。」:ここで出てくる疑問詞には、文章をやわらかくする作用があります。意味は、あなたは不信という汚れと、自分は神であるという主張、あなたの目にあまる行動、あなたのイスラエルの民に対する虐待罪から清められたいと思うか?「わたしはあなたを,主の御許に導く。あなたは(かれを)畏れなさい。』」:わたしはあなたを主が満足するものへ導こう。そしてあなたは主に対する義務を行い、主が禁じたものを避けることによって罰を怖れるのだ。

  『アッラーを畏れること』は、導き(الهداية)の後にしか現れません。アッラーへ導かれた者は、アッラーの偉大さを知るわけで、人間はアッラーの偉大を知らずにかれを畏れることはありません。

 続けてクルアーンは、ムーサーとフィルアウンの間に起こったことを告げます。
 「(ムーサーは)偉大な印をかれに示した。だがかれ(フィルアウン)はそれを嘘であるとし,(導きに)従わなかった。背を向けて急いで去った。かれ(フィルアウン)は,(その民を)集め宣言して言った。「わたしはあなたがたの主,至高者である。」」

  ムーサーはフィルアウンに自分に与えられたメッセージを説明し、その真実性を証明する、アッラーから与えられた奇蹟(ここでは、杖の蛇への変身)をかれに見せました。この奇蹟は『偉大な印』と表現されています。これはムーサーの預言者性を最大限に強固にするものです。しかしフィルアウンはムーサーを嘘つき呼ばわりし、アッラーの命に背きました。そして彼はムーサーが警告したものに背を向け、人々がムーサーの使命を信じないように策を練りました。そこでフィルアウンは魔法使いたちを集めて、「わたしはあなたがたの主,至高者である。」と宣言しますが、これは彼の策略であり、全くの嘘であることを自分自身で十分に知っているのでした。

  しかしアッラーの慣習は、自分を神であると言い張る人間に厳しい罰を与えないでいるわけにはいきません。

  「そこでアッラーはかれを懲しめ,来世と現世の生活に懲罰を加えられた。本当にこの中には(主を)畏れる者への一つの教訓がある。」:アッラーは来世でかれを火で懲らしめ、現世では海で溺死という罰を与えた。実にこの話の中には、アッラーとアッラーの罰を怖れる者への教訓がある。

 続いてクルアーンは、人間が死んで骨が朽ち果てた後に生き返ることを否定する人たちに語りかけます。

  「あなたがたは(かれが)うち建てられた天(の創造)が,あなたがたを創ることより難しいとでも思うのか。」:人々よ、あなたがたが、主がお創りになった天よりも、あなたがたの方自身の創造の方が難しいと思うのか?実に、この堅固な天を創造した方にとって、あなたがたやあなたがたのような創造物を生かし、生き返らせることはとても容易いことである。そして、あなたがたを生き返らせることは、天を創造することより難易であるわけがない。 この意味のアッラーの言葉はクルアーン内で何度か繰り返されています:「天と地の創造は,人間の創造などよりも俸大である。だが人びとの多くはそれを理解しようとはしない。」(ガーフィル章57)

  アッラーは天の創造を、『建てる』という言葉で表現しています。『建設』には、一つのものになるために、ばらばらの部品がくっつけられ、何かで結ばれる、という意味があります。こういう風にアッラーは天体を創りました。星一つ一つが己の軌道を持っていて、他とぶつかることなく重力で結び付けられています。

  そして大地を表現して「その後,大地を延べ広げられた。」:天の創造後、生き物のために大地を創造した、ということです。

  「そこから水と牧場を現われさせた。」:クルアーンは少ない語数で地上に起こる自然現象を表現しています。それは水と植物です。クルアーンの他に、簡潔な修辞力と正確さを持った表現方法はありません。
 
 そして山々を表現して「また山々をそれにしっかりと据えられた。」:山々を堅固に大地に据えることは、アッラーの御力の表れの一つです。大地を広げ、そこから水と牧場を現れさせ、山々を据えさせるという現象すべてがアッラーの御力の印です。これらは人間の益であると同時に動物の益でもあります:「あなたがたとあなたがたの家畜のための,用益に供される。」