◎ジェイド・タブレット-10-31
◎垂直上昇への仕掛け-31
◎大逆転と倒立-10
◎真の人間は我が身の属性を一顧だにしない
ハッラージは、処刑台の上で、四肢を切り落とされつつ、冷静にいや何も感じていないかのように、わが身に起きていることを評価してみせる。
『それから手が切り落されたが、彼はにやりと笑った。「笑うとはどういうことだ」と言われて彼は言った。
「縛られた者の手を切り離すことは容易い。真の人間というのは、意志の王冠を玉座の先端から奪ってしまう、あの属性という代物の手を断ち切る者のことだ」
それから足が切り落とされた。彼は微笑をうかべて言った。
「この足では地上を旅したものだが、私にはこうしている今も二つの世界を旅する別のもう一本の足がある。できるものなら、その足を切ってみよ」
すると、彼は血まみれの両手で顔をこすり、顔と腕を血だらけにした。
「なぜ、そんなことをするのか」
「血が私の肉体からあふれ、私の顔色が蒼白であることが私にはわかる。あなた方が、私が恐怖のあまり青ざめたと思うのではと考え、顔に血をぬり、血色良く見えるようにしたのだ。
ほんとうの人間たる者の化粧の紅はその者の血だ」』
(前掲書P357-358から引用)
腕を切り落とされても、真の人間は我が身の属性には一顧だにしないのだと微笑してみせる。これは、例の禅の三祖の信心銘の好き嫌いのことを属性として表現している。こういうのを高度に人格を解放したとでも云うのだろうか。
足を切られて後のもう一本の足とは、微細身のことだろうが、もう一つの世界である永遠不壊なる今ここなる第六身体に到達するものでなければならない。
真人間の化粧とは、真紅の血によるとは、人と人との出会いの窮極形である愛は、血によらなければ成就しないということか。