◎メソッドとその結果の不定性
真言宗中興の覚鑁(かくばん)。彼ほど、メソッドとその結果の不定性を身をもって体現している者も少ない。
まず彼は虚空蔵菩薩求聞持法を8度修したこと。虚空蔵菩薩求聞持法とは
ノウボーアーカーシャギャラバヤ オンアリカマリボリソハカ
という虚空蔵菩薩の真言を日に一万遍、百日間唱え続け、同時に印契を結び、虚空蔵菩薩を観想し、牛酥を加持するもので、成就すれば牛酥が霊気を発したり、光を放ったり、煙が立つなどの奇瑞があり、その牛酥を食すると超人的な記憶力を得て、一度聞いたことはその言葉も意味も決して忘れないというもの。
一節によれば、それまでの八回とは異なり、導師を賢覚法眼に変えて、虚空蔵求聞持法の9回目のチャレンジを行ったところ、漸く成就した。
要するに虚空蔵菩薩求聞持法といえども一回やっておけば大丈夫などということはなく、ダメな場合のほうがむしろ多いらしいということ。メソッドの効果に絶対はない。
おもしろいことに、覚鑁は、22歳から27歳までの間に伝法潅頂だけでも8度受けている。伝法潅頂は修行ではないが、重要な微細身の操作なのだろうから、これまた評判の高いとされるメソッドであっても、メソッドの効果の確実でないことを、彼が感じて、何度も請うて伝法潅頂をやったということになるだろう。
※現代女性の虚空蔵菩薩求聞持法の行例