POWERFUL MOMが行く!
多忙な中でも,美味しい物を食べ歩き,料理を工夫し,旅行を楽しむ私の日常を綴ります。
 





 PHP研究所刊の「驚異の超大国 インドの真実」という本があります。神戸市に生まれ、神戸とロサンゼルスに居を構えるインド人のビジネスマン、キラン・シン・セティ(Kiran Singh Sethi)氏が著者です。その中にこんな記述があります。(シン(Singh、「ライオン」の意)という名前がついていることから、シーク教徒のようです。シーク教徒は頭にターバンを巻くことから一見して分かります。但し、これはインド以外でのことで、インドではターバンを巻かないシーク教徒も多く見かけるようです。)

 「ときおりインド人が数字を得意にしていることに関して、「数千年前に、ペルシャでうんぬん…」なんて書いてある本も見かけるが、果たしてそれは本当だろうか。僕には、疑わしい。最近巷で流行っている「インド数学ドリル」とか、「インド式計算ドリル」なんていうのも、僕はインドで目にしたことがない。

 インド式計算とは、大雑把な説明をすると、例えば、2桁と2桁の掛け算をするときに
(1)九九は小学校のときに繰り返し覚えさせられるので反射的に答えが出せる。
(2)2桁どうしの足し算も比較的早く答えが出せる。
という人が多いことに着目して2桁どうしの掛け算を九九の掛け算と2桁どうしの足し算に分解して解こうとするものです。

 これには中学生のときに習う分配法則を利用します。例えば、53×47を分配法則の一つ「和と差の積」を利用して、(50+3)×(50-3)=50×50-3×3=2500-9=2491と計算する方法を言います。数を分解する必要があり、ある程度のロジック(思考を進めていく筋道)を必要とします。



 インド人は計算が速いかどうかについては私にはそんな場面に出くわしたことがありませんから、そうだともそうでないとも言えませんが、計算の速さだけでいうなら日本人で算盤を習っている人の計算の速さには驚嘆したことはあります。インド人は計算が速いからITで成功していると説明することには、疑問を呈さざるを得ません。計算が速い→数学が得意→IT産業の発展に寄与できる、という図式は短絡的すぎるのではないでしょうか。その図式が成立するならば、日本は算盤振興策を講じ、暗算の成績で理系大学の入試に変えたらいいでしょう。

 キラン・S・セティ氏は、インド人が数学が得意であることを否定せずに次のように述べます。

 「まだ計算機のなかった時代、たとえば、今から50年前の日本では、市場や商店でモノを売り買いする際には、ソロバンを使って、買ったものの総額やお釣の金額を計算していた。
 では、インドではどうだったのか。インドには、ソロバンはない。インドの人々は、すべてを暗算で計算していたのだ。売るほうはもちろん暗算ができなければ商売にならないし、買うほうにしてもごまかされずに商品を購入するためには暗算の心得が必要だった。
 人々は、勉強のために数学を学ぶのでなく、生きる知恵として数学を学び始めるのだ。インドの国民が数学に強くなった理由は、このようにシンプルなものだ。


 インドの南西部にカルナータカ州という地方行政区分があり、その州都が「ベンガルール(Bengaluru、以前はバンガロールと呼ばれていた)」です。ベンガルールは「インドのシリコンバレー」と呼ばれ、インドのIT産業の中心地です。



 ベンガルールには、インドを代表する軍需企業や陸海空軍の研究施設が集中していたこと、優秀な高等教育機関が多く存在していたことなどが要因となって、IT産業の中心地となったと言われています。外資系IT企業も優秀なIT技術者を求めてこの地に多く進出しています。

 キラン・S・セティ氏は、それを次のように分析します。

 「ベンガルールの人々は子どもたちに教育を受けさせるのに熱心で、それを適切な方法で与えることに成功したのだと思う。九九を覚えさせ、数学を学ばせ、ロジックを扱うことに長けた人々を育てることに成功したのだ。言うまでもなく、ソフトの開発は、ロジックの能力によっている。そうして、教育を受け、大学を卒業したIT技術者が、それこそ、毎年、何千万人も出てきているのだ。

 一定期間内に国内で産み出された付加価値の総額を表すものに、国内総生産(GDP、Gross Domestic Product)という指標があります。そのなかにIT産業がどの程度の割合を占めているのかわかりませんが、大きなものと言えるのなら、日本も国を挙げて数学教育に力を入れるべきでしょう。しかし、それは計算の速さではなく、ロジックを扱う能力に秀でさせるという方向で行われるべきものでしょう。

 残念ながら、日本はインドに勝ることはできません。インドのIT産業の優位は、IT技術者の能力にあるのではなくて、その賃金水準の低さにあるからです。アメリカのIT技術者の賃金の5分の1以下であると言われています。日本のIT技術者は、「日本語」を扱うことで守られている面があるのですが、英語を扱うアメリカのIT技術者はインドのIT技術者と争うことはできなくなってきています。

 ムンバイ(Mumbai)には、タタ財閥系のソフトウェア会社「タタ・コンサルタンシー・サービシズ(TCS、Tata Consultancy Services)」があります。そこが日本向けに事業展開をしています。そのサイトにある文言です。

 TCSは、日本で事業を開始した最初のインドIT企業であり、1987年より日本の国内マーケットへ向けて積極的にIT関連サービスを提供しています。
また、日本マーケットでの豊富な経験により、日本のお客様が必要とされている技術や専門性を的確に理解し、ビジネスゴールに直結する最適なソリューションをご提示させて頂くことが可能です。
 現在、500名以上のコンサルタントが日本向け案件を担当しており、オンサイトで働くTCSスタッフの30%は日本人で構成されています。TCSは『non-Japanese』エンジニアの日本語トレーニングにも力を入れており、サービスクオリティーの更なる向上を目指しています。
日本の市場に対する高い理解力をもつ日本人スタッフが、全世界で実績を持つグローバルカンパニーTCSのプロセスとクオリティーを持って問題解決に当たる、これがTCSのアドバンテージです。


         (この項 健人のパパ)

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