ピカビア通信

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悪は存在しない

2024年06月21日 | 映画

 

レイトショーで映画。見たのは濱口竜介の「悪は存在しない」。撮影を近辺でやったので、地元の映画館でも上映することになったということだろう。地元の新聞でもよく取りあげられている。是枝裕和の「怪物」のパターンだ。しかし映画の内容と監督の知名度でその熱量には違いがある。「怪物」はストーリーの点で分かり易いが、この「悪の存在」は、結末一点であるが、かなり難解と言えるかもしれない。

話しそのものは単純で、村でグランピングを計画してる開発業者が住人に説明会を開くが、その内容に疑問を感じた住人側に徐々に開発反対の気運が生まれていく、というもの。しかし主人公の生活は何で成り立っているのかとかどこか怪しさがあったり、まき割が仕事かと思うほどまき割のシーンが続いたり、冒頭の下から梢を見上げる移動シーンが続いたと持ったら最後には夜の同じようなシーン(ちょっとフリードリヒを思い出した)が続いたりとか、「ドライブマイカー」でも感じた監督の表現スタイルがどこか心地いいのも事実。

個人的には主人公がカフカのムルソーのように見えた。森が大きな主題で、文明以前の象徴として描かれているとすると、この映画は悪の概念以前の世界として悪は存在しない、と言っているのかもしれない。まああまり解釈は必要なく、ちょっと不思議な世界を体験する、くらいの感覚で見るのが良い。しかし100人中98人は訳わからないで終わりそう。

訂正:カフカではなくカミユで、異邦人の主人公がムルソー

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