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No782『ミルク』~沈黙のうちに、にじみだす苦悩~

先日ご紹介した『蜂蜜』の監督のユスフ3部作の第2部に当たる。このトルコのセミフ・カプランオール監督の映像感覚には、目を見張るものがある。美しい音、はっとさせられる映像に、ただ息をのむばかり。 高校を卒業したユスフは詩人を目指しながら、母親と、街へチーズや牛乳を売りに行く。家に帰れば、タイプライターに向かって詩作にふける。毎日、郵便局に行って、何か届いてないか、聞きにいき、とうとう雑誌に自分の詩が . . . 本文を読む
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No780-2白磁の壺にあう~1本の短篇アニメ映画のこと~

友達が言った。「まんまるだから」「子どもの頃、ビー玉や、スーパーボウルとか、カンロ飴だってみんな、まんまる。まるいもんって、つい手にとりたくなるやろ」日曜、美術館で出会った、白くて大きい白磁の壺のことを話したのは、一昨日のこと。私が、その壺に強くひかれたのは、まんまるだから、という言葉が私の胸を打った。 いうならば、まんまるにはなれず、でも、限りなくまんまるになろうとする力をあのてづくりの壺に、 . . . 本文を読む
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No781『東京公園』~寄り添い、たたずむ男たち~

週末、西宮まで、デジタル版を観に行ってきた。監督が言われていたとおり、カメラの焦点深度が浅いせいか、特に、公園では、人物がくっきりと鮮明に浮き上がり、背景の公園は、ほどよいぼけ加減だったのが、印象的だった。デジタル映像で気になる、色がべたついた感じも特になかった。 1回目のときは、好きになれなかった、妻の尾行を頼む中年男で歯医者の初島が、なぜか一番、共感した。女性たちのすてきさは、1回目で実感し . . . 本文を読む
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No780白磁の壺に出会う~そこにあること~

友達に教えられ、中之島の大阪市立東洋陶磁美術館で開かれている特別展「浅川巧(たくみ)生誕百二十年記念 浅川伯教(のりたか)・巧兄弟の心と眼-朝鮮時代の美-」を観にいってきた。 私は、美術館とかでは、たいがい、絵は念入りにみても、工芸、陶芸になると、よくわからず、早歩きになるのが常。しかし、今回は違った。まんまるい大きな壺をみていると、心が吸い取られるような気がしてどきどきした。わけがわからず目頭 . . . 本文を読む
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No779侯孝賢監督と朱天文さんの講演(その5 おしまい)

◎朱さんのお話  『フラワーズ・オブ・シャンハイ』(98) の原作は、ハン・チーユンが1894年に上海の遊郭に関する光景を蘇州語で描いた本を、中国文学の女流作家チャン・アイリンが北京語に訳したもので、上下冊にわたる長編。私は何度もトライしたが、一度も最後まで読みきることができなかった。97年に日本から鄭成功について撮る話があり、南京近くの遊郭街も舞台の一つになっていたので、この本のことを思い出し . . . 本文を読む
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No778『蜂蜜』~森の中の音と光と…~

あまりにすばらしい映画に出会ったので、講演紹介は1回休憩させてください。冒頭、森のシーンから、いきなりひきつけられる。木洩れ日がさし、ひっそりとした森の中、誰もいない空間をかなりの長回し。日差しが微妙に揺れる感じとか、まるでストローヴ=ユイレが撮った森のようだと思いながらその美しさにうっとりしていると、やっと男が一人、馬を連れて森の奥から現れる…。男は、馬を置いて、一旦画面から消える . . . 本文を読む
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No777侯孝賢監督と朱天文さんの講演(その4 お二人のお話はまだまだ続く)

  ◎朱さんのお話  監督と組んで29年目を迎える。18作品のうち14作品の脚本を担当した。その中から2つの作品についてご紹介したい。  一つは、『風櫃(フンクイ)の少年』。台湾ニューシネマの時代、2つの派があって、侯監督のように、いわゆる土着の方法でやってきたつくり手と、アメリカ帰りで、映画言語にも通じた人たち。両者は全然違う環境だが、互いに仲良くしてきた。侯監督は、彼らから、そ . . . 本文を読む
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No776侯孝賢監督と朱天文さんの講演(その3、朱さんのお話、そして侯監督へとバトンリレー)

◎朱天文さん(脚本家 ‘56年生まれ)の講演「私と侯孝賢映画」   映画は映画以外のところからやってくるし、文学も文学以外のものからやってきて、できあがる。以外というのは、現実生活の中で、人が人とまっすぐ向き合う時に、ストレートにキャッチする力。それは難しい行為だと思う。 一人の中国の画家を例をあげたい。彼は、NYのメトロポリタン美術館で毎日模写に励み、本物と同じくらい . . . 本文を読む
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