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No786「ドキュメンタリー映画を考える」講座

神戸映画資料館で、連続講座「映画批評 新しい映画と観客のために」が始まり
第1回目の今日は、葛生賢さんの「ドキュメンタリー映画を考える」。

4時間半以上にわたるものだったが、
内外のドキュメンタリー作品の断片をたくさん見せてもらい、
なかなか興味深いものだった。

『福島の原子力』(1985年27分カラー)という
東京電力企画、日映科学製作所がつくった、
1966年12月から建設が開始した福島原発が完成するまでの過程を記録した作品。
原子力発電の仕組みもわかりやすく、
溶鉱炉を運び込んだり、建設工程も記録されていて
安全とかいう言葉は、いまや、なんとも、空々しく聞こえるが、
当時の人びとが寄せる期待は相当なものだったと思われる。
これは、「科学映像館」というサイトから無料配信されていて、
ネットでも簡単に観られます。
葛生さんいわく、
商業映画では、スポンサーの意思が重要になるので、
監督の作家としての主体の確立ができないとのこと。

 『ナイト・メイル』(1936年23分)
私は知らなかったが、
イギリスドキュメンタリー映画の父と目されるJohn Griesonの指揮の下
集まった若い人材によって作られた短編作品。
郵便の仕分けとかおもしろかった。

『空の少年兵』井上莞について
葛生さんいわく、
三点照明、コンティニュイティ編集、しっかりしたカメラワークから、
全くリアルというわけではなく、
「再現」していることが、わかる。
少年たちが整列して動く人間の美は
明らかにナチスを思わせる。
少年たちが、次々と海に飛び込むシーンは、
レニー・リーフェンスタール『オリンピア』に
同様の場面があるそうだ。

カール・ドライヤーの『彼等はフェリーに間に合った』
何度観ても、怖い。
これが、交通安全のためにつくられた作品とは…、

ハンフリー・ジェニングス(Humphrey Jennings)という
第二次世界大戦の戦中・戦後のいわゆるイギリスの「ドキュメンタリスト」による
『I was a Fireman』。
実際の火事ではなく、別のところを燃やして
その消火活動を撮ったという「再現」。
でも、出演した消防士いわく、今までのどの現実の消火活動より
大変だったとか。

小川紳介、土本典昭らとはまた違って、
再演するドキュメンタリーを中心に紹介してもらい
ドキュメンタリーにも、いろいろ可能性があると思った。

肝心の講座については、あまりメモもとれず、
未消化で、申し訳ないです。

明日、明後日と、神戸映画資料館では
『意志の勝利』『ルイジアナ物語』(絶品です!)『カメラを持った男』
来週末はアンドレ・マルローの『希望 テルエルの山々』と
ロッセリーニの『戦火のかなた』が上映されますので
ぜひご覧ください。

コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
東電のPR映画は過剰品質であった。 (カワゴンちゃん)
2011-07-18 00:43:14
>『福島の原子力』(1985年27分カラー)という
>東京電力企画、日映科学製作所がつくった、
>1966年12月から建設が開始した福島原発が完>成するまでの過程を記録した作品。

↓↓↓これですね。
http://www.kagakueizo.org/2011/01/post-332.html
また深夜に見入ってしまった。なんなんだよ、この凝ったカメラワークは『ワイルドバンチ』のオープニングテーマ曲が流れてくるのは、本当に笑います。
1966から84年まで、20年かけて、こういう記録映画をつくってしまうというのは、凄いですね。

>カール・ドライヤーの『彼等はフェリーに間に合っ>た』
>何度観ても、怖い。
>これが、交通安全のためにつくられた作品とは…、

やっぱり神がかった映画だと思うんです。
普通、ヘルメットもかぶらずに、時速100kmを超えてたら、髪は乱れるわ化粧は剥げるわで大変でしょう。
でもこのオートバイの男女の髪型はきちっとセットされているし、会話も出来ている。
あぁこの男女は、この世のものではないんだなぁ、と思わされました。
 
 
 
確かに (パラパラ)
2011-07-18 04:04:53
ドライヤーの映画のバイクの走行音は
わすれられないです。
『ワイルドバンチ』は、ちょうどTOHOシネマズ梅田で上映中で、ぜひ見てみようと思ってます。
やはり、原子力ができた当時の、
過剰な期待の度合いを、どこか反映した
ドキュメンタリー作品でしたね。
 
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