日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

民営化郵政は年賀状配達でもう少し努力すべきと思う件

2012-12-25 | 経営
行きつけのスポーツクラブのロッカールームで、初老の紳士お二人が着替えながらこんな会話をしていました。

「年賀状は元旦に着くためには25日までに出せとテレビで言ってたけど、なかなかそうは言ってもできないんだよね」
「私もまだ出せていませんよ。普通なら翌日には届く場所への郵便が1週間かかるってのは、いくら特別な時期とは言ってもどうなんだろうって思いますがね」
「それが昔から当たり前になっちゃっているからね。やっている側には何の問題意識もないんだと思うよ。年賀状を書け書けってさんざん商売しておいて、元旦に届けたいなら1週間前に出せって言うのは、殿様商売だよね。うらやましい話だ」

人生経験豊富な先輩方のこの会話から、私はとてもいい気づきをちょうだいしました。企業の利用者の満足度を高めるサービスのあり方についてです。

確かにこの紳士方がお話されているように、年賀状は通常の郵便とは異なって、元旦に相手宅に届けるためには、一週間前には投函する必要があるというのは今も昔も変わるところがありません。郵便番号すら存在しなかった時代も、郵便番号が7ケタに細分化された今も。すべて手作業でおこなっていた時代も、機械化やIT化が進んだ今の時代も。そして、官業として営業していた時代も、民営化した今も。10年1日の如く変わることがありません。

そうもっとも重要なポイントは、最後の「民営化した今も」の部分です。民営化した以上民間ですから、サービスの向上は組織繁栄に向け不可欠な企業努力であるはずです。郵政批判が本エントリーの目的ではないのですが、選ばれる企業になるためには「今までの“当たり前”をいかに打破するか」がセオリーであり、どうもそこが甘いのじゃないのかなと思わずにはいられないのです。もっとも現在年賀状配達におけるライバルが存在しないので、現状のままでも「選ばれる」ことは間違いないのですが。

冒頭の初老紳士方のご指摘部分について申し上げるなら、民営化郵政はいかに一日でも短く元旦に届けるかについて、まず努力姿勢を見せることこそが企業の対利用者サービスとして重要なのであって、「毎年こういうことになっていますので」という姿勢のままいつまでもこの状態をよしとするのなら、ライバルが存在したなら「選ばれる企業」にはなり得ないと思うのです。もし仮に、宅配業者が年賀状配達に参入して「当社は3日前投函で、元旦にお届けします!」なんていうサービスをぶつけられようものなら、そこで初めて満足度を高める不断の努力の重要性を知ることになるのかもしれません。

膨大な量の郵便物の仕分け作業に、膨大なコストがかかることも分かりますが、テレビスポットで「年賀状は25日までに投函を」を告知するコストだってバカにできない金額がかかっていると思いますし、要はどこによりコストのかけるかの問題なのかなと。また、上乗せコスト説明をした上で「元旦に着くためには、25日まで投函なら50円、26日投函なら60円、27日投函なら70円…」のように、金額を段階的に変えていく方式で利用者に選択権をゆだねることだって民間としてはあっていいサービスのようにも思います。

プロダクトアウトの時代はとっくに去りマーケットインの時代になって久しい今、消費者向けのサービスを提供する企業が何より利用者の満足度を高めるサービスに腐心するのは、どこの業界でも当たり前のことになっています。そしてまた、より一層利用者の満足度を高め企業価値を高めるためには、「消費者から見ても当たり前と思っていることでも打ち破る努力を怠らないこと」にこそ、秘策が隠されているのです。

初老の紳士方の会話に今の時代のあるべき民間のサービスを思い、民営化郵政が本当の民間意識を持つまでにはまだまだだ時間がかかるのかなと感じさせられた次第です。

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