日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

経営のトリセツ96~「尖閣ビデオ流出事件」に改めて学ぶ“見える化”の重要性

2010-11-05 | 経営
「見える化」のセミナー等でお話する際に、「“見える化”は組織内ストレスを抑える万能薬」「組織内トラブル発生はまず“見える化”不足を疑え」「組織内トラブル防止は“見える化”から」などの決め台詞があります。このところのニュースでは、まさにこの決め台詞を思い浮かべてしまう出来事が相次いで起きています。

ひとつは、昨夜来トップニュースで報じられている「尖閣ビデオ流出事件」です。先般の一部国会議員への短縮版ビデオ公開よりもさらに生々しい編集前の動画を一体誰が流出させたのか、当局の管理上に問題があったのではないか、と政府は躍起になっているようですが、残念ながら重く考えるべき論点はそこではないと思います。なぜこんな形で外に出る事になったのか、そこをもっと考えるべきなのです。なぜ?って理由は簡単です。国民にとって「見える化」させるべきものがされていなかった、さらに言えば国民が「見える化」を望んでいるモノに対してこのまま「見える化」されずに過ぎてしまう可能性が高くなったからに他ならないのです。誰がやったのかという点に関して、一部憶測で「反民主党勢力」といった言い方がされているようでありますが、今回ばかりはそうではなく「国民の声」の代表と受け止め、これまでの「見える化」不足路線を反省するべきではないかと思うのです。

政府にとっては痛手でしょう。13日からの横浜でのAPEC首脳会議を前に中国の胡主席の出席なるか否かが今後の日中関係修復のポイントになると考えているようですから、かなり厳しい横ヤリを入れられた形になったと言わざるを得ないからです。そもそも、今回の尖閣問題での政府の対中国外交には国民的不満が渦巻いており、このやり方で中国政府優位のままのウヤムヤ決着は許すべきでないと言う声はあちこちから聞こえていました。その不満がもっとも集中していたのが、件の尖閣ビデオ未公開問題だった訳です。なぜ、我が国が持っている「真実の記録」を公開して事の是非を明確化し、場合によっては国際世論の判断を待つようなやり方をしないのかと。本来見えてしかるべきものを見せないことは、まさしく「見える化」不足による国民的フラストレーションを高ぶらせ、このような「流出」という最悪の流れを起こしてしまった訳なのです。

企業経営でも同じこと。社長が何らかの理由で本来「見える化」すべき事項を見せずに経営を続けていけば、いずれ社員のフラストレーションが爆発して思わぬ事態を招き、組織内コミュニケーションの崩壊に至る危険性をはらんでいるのです。「見える化」すべき事項は会社によっても違いますが、よくあるのは「会社の財務内容」「人事評価基準」「オーナー社長による適正範囲での会社の私物化理由」などが見えない事で疑心暗鬼を生みおかしなことになっていく、そんな実例をいくつも見て参りました。思い当たる方は要注意です。尖閣ビデオのように社員が見たいと思うものあるいは当然見せるべきものを、「見える化」せぬがために、あらぬ噂や憶測に基づいた不平不満が巻き起こって会社を危機的状況に追い込みかねないのです。

さて話を戻しますと、今の民主党政権の運営において大きな「見える化」不足と思われる問題はもう1点あります。それは、「小沢氏の政治とカネ問題説明」です。この問題も早くから、国民の多くが「見える化」を望んできたものです。それがまたここに来て、小沢氏本人の口から、我田引水の理論で詭弁を弄し「政倫審への出席はしない」との開き直り発言が飛び出しました。小沢氏問題での本人説明不足に関する国民的フラストレーションは一層高まることでしょう。この状態が打開できないなら、国会空転等の好ましからざる問題に発展し国民経済にも大きな損失を与えかねないと思うのです。岡田幹事長の申し出が小沢氏にに直接断られた現在、もはや管首相の出番以外にないでしょう。しかも政倫審での説明ができないのなら、民主党も参考人招致、証人喚問に賛成せざるを得ない、との強い態度で説得にあたるべきタイミングに来ていると思うのです。

「見える化」は政治でも、行政でも、企業でも、家庭でも、運営上円滑に物事を運ぶためには本当に重要な施策です。中でも「見えてしかるべきモノが見えない」というフラストレーション状態は致命傷を及ぼしかねない最重要ポイントなのです。「尖閣ビデオ流出事件」はそんな万事に通じる大切な問題を示唆しているのです。政府もメディアも、国民は今回の件での犯人探しには関心はなく、真実を「見える化」することを重視している点を十分認識して、その言動、報道姿勢を正して欲しいと思います。

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1 コメント

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同感 (しんちゃん)
2010-11-07 09:27:09
情報管理は閉鎖的思想なき脆弱な統治者なるものにその管理権があり、
残念ながら国の[見える化]は皆無。意見の集約なく一貫性のなさを露呈してしまった統治権者達の為、一連の事象が表面化してしまったのが今の日本の不幸と言わざるを得ませんね。
次の火種もだいたい想定できると思う方も多い事でしょう。

理科的ロジックに考えると[見える化]のメリットは

見える化…顕在化による情報の共有…サイレントマジョリティーを減らす効果・考え方及び意見の多様性などの発信力の増加…やる気思考の人数増加…アクション者増加による活性化…成長循環スパイラル…

米国では当たり前の事です。



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