日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

経営のトリセツ70~「事業仕分け」作業のポイントに学ぶ

2009-11-11 | 経営
政府の行政刷新会議が、2010年度予算の概算要求から無駄を洗い出す「事業仕分け」の本格作業を本日からスタートさせました。初日から、議論白熱。なかなかな展開に、不況下で業務の見直しを迫られる中小企業が学ぶべき点も多々ありそうに思いますので、「事業仕分け」の作業ポイントをそんな観点から少し見てみることにします。

まずはじめに、そもそも「事業仕分け」とは何かです。「事業仕分け」とは、既存の行政サービスの必要性を外部の目で検証する取り組みで、行政刷新会議事務局長の加藤秀樹氏が代表を務める民間のシンクタンク「構想日本」が提唱し、02年から地方自治体を中心に実施してきた手法です。今般、自民党から民主党への政権交代を機に政府の行政刷新会議が、税金の無駄遣いを洗い出す事業仕分けに着手し、初めて政府の「事業仕分け」に着手した訳です。

初日の様子ですが、本日取り上げの23項目50事業のうち、7項目10事業を「廃止すべきだ」と判定。「現状のままでいい」とされた事業はひとつもなく、事業自体は廃止しなくとも概算要求から減額する「予算削減」などの結論付けが相次いで出され、それなりの“成果”が得られたといいった感じがしております。事業存続を訴える官僚の一部からは、「仕分け人は“廃止ありき”のスタンスで臨んでおり、その姿勢に疑問を感じる」とのボヤキが出ているようですが、そもそもそのボヤキの発想は誤りです。事業の見直し検討においては、まず「止められないか」のスタンスから入るのは基本中の基本です。「止められないか」を議論して、どうしても止められないものは「縮小、統合等はできないか」に議論は移行する訳です。これは一流企業のリストラ会議では常識的な話なのです。中小企業では、業務の見直し議論をしてもなかなかこの基本が守られないケースが多く、成果が出にくいという話をよく耳にします。この点は今回の「仕分け人」のスタンスから学ぶべき部分であります。

同じく、今日の官僚のボヤキにあった「検討議論に1時間は短かすぎる」という声。1時間が適当かどうかは別にして、「見直し議論」に時間をかけるほど成果が出にくくなるということもまた、真理であるのです。じっくり検討すればするほど、「なんとなく必要な理由も見えてくる」訳でして、それが人情というものであったりもします。裏を返せば、本当に必要なモノなら短時間の説明、検討議論でも十分にその必要性を理解させられるハズであるということでもあります。すなわち、ダラダラ検討に時を費やすのではなく時間を区切って短時間で判断を下していくやり方をとれば、本来の事業の必要性の有無が明確になると言うことなのです。この点も、中小企業の業務の見直し議論でも取り入れたい考え方であると思います。予定の議論時間を大幅に超過することはおろか、結論を出せずに「次回へ持ち越し再議論」などというのは避けなくてはいけない最悪のパターンであると言っておきたいと思います。本当に必要なモノは即座に結論がでる、ということをお忘れなく(万が一廃止して重大な問題が発生したら、また再開という選択肢はアリです)。

おまけにもう一点。今日の「業務仕分け」は公開の場で行われたということ。会場での一般人の傍聴に加えて、インターネット上での中継もなされているそうで、私も今日は一日出ていたので見れませんでしたが、明日以降是非見てみたいと思っています。この「議論の公開性」はものすごく大切なのです。密室で物事を決めないこと、少なくとも業務の見直し議論のような重要な課題を、トップひとりや一部の幹部だけでいつの間にか決めてまったというのでは、担当セクションをはじめ社内の納得性は得られず、仮に見直しによる業務効率は向上しても、求心力低下は避けられないでしょう。業務の廃止・縮小・統合に関する「密室決議」は、絶対にやってはいけないことなのです。オーナー企業等ではよくありがちな「議論の見える化の欠如」には、十分ご注意願います。

このように今回の「事業仕分け」からは学ぶことも多く、注目に値します。国のムダ遣いの実態をチェックするとともに、「業務見直し手法」の参考事例として着目してみてはいかがでしょうか。

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2 コメント

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一番の無駄は。。。 (くまくま)
2009-11-20 12:00:26
天下り先の元役人の人件費でしょ!
役人の質も悪い上に、その人の数が多く、彼らプレゼンやディベートがないが為に本当に必要なところがカットの対象になっている印象が。。。
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からめ手 (OZ)
2009-11-21 11:06:31
おっしゃる通りです。

コンサルタントがクライアント先の改革を進める時にも、いきなりの“本丸”攻撃は抵抗も強く改革が失敗に終わりがちです。からめ手からから徐々に入り込み、気がつけば“本丸”陥落、というのが理想ですね。

民主党もそんな考えでいてくれるものと願いたいところです。
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