日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

広域地銀再編へのミスリードを正す!

2013-08-07 | 経営
東京都民銀行と八千代銀行の統合が報じられ、地銀再編に関する議論がにわかに騒がしくなってきました。

平成の初めには13行あった都市銀行は、バブル経済の崩壊後急速に再編が進んで3メガバンク体制になり体力を蓄えたのに対して、地銀は現状でなお105行体制とほとんど再編が進んでいないのが実情ではあります。日経新聞をはじめマスコミの論調は今回の両行の統合報道を機にした、地銀の単独資金量10兆円規模化に向けた広域統合歓迎あるいは推奨でありますが、話はそんなに簡単ではないと思っています。

マスコミが地銀の広域統合による再編を歓迎するのは、一行あたりの体力を増強することで地域金融機関の収益環境悪化による金融不安を回避することにメリットを見出している感が強いのですが、私はその見方は単純な破綻リスク軽減の観点から見ただけのあまりにも単視眼的な見解であると思います。

そもそも地銀の役割と言うものを考えてください。地銀のもっとも大きな存在意義は、地域金融の担い手として、各地域における中小企業への円滑な資金供給を通じた地域経済の安定成長の底支えをすることにこそあるのです。そのためには、地域活動の基本ユニットである都道府県単位での存続がもっとも有効であり、各都道府県が地元地銀としっかりと協力体制を組みながら、中小企業支援をしていく必要があると考えます。その観点で想定できる地銀の統合は、同一都道府県内の地銀統合に限定される形になるわけですが、その場合の統合後の地銀数は都道府県数と同じ47ということになります。

一方、日経新聞などが推奨する地銀の経営リスク軽減化に向けた広域化の基準は、再編後の資金量で一行当たり10兆円以上と言う見解であり、現状の地銀、第二地銀の資金量合算から一行当たりの資金量が10兆円規模になるための再編を単純計算で考えると、今の105行が広域統合により約4分の1の20数行にならないといけない計算になるのです。この考え方だと、単純に言って地方銀行は2県に1行という計算になるのですが、これでは地方金融は十分に機能するとは思えません。

私が銀行に入った80年代前半頃までは、今のメガバンクの前身である都市銀行と地方銀行の間には、厳然たるスタンスの差がありました。都市銀行は上場企業やその予備軍等大企業融資を中心とした融資姿勢であり、町工場などの中小零細企業支援はもっぱら地方銀行の役割だったのです。それがバブル景気を機に、だぶついた資金の貸し先を求めて都市銀行はこぞって「リテール重視」を打ち出し中小企業融資に本腰を入れ始めます。一方の地銀も同時期以降、国際化、業務自由化の波に乗って都市銀行的な全方位金融サービス戦略をおしすすめ、両者の境目が見えにくくなってきたのです。

しかし、本来都市銀行と地方銀行では先にも述べたとおりその依って立つ存在基盤から考える役割は全く異なっています。バブル期に都市銀行と地方銀行の役割の違いを勘違いし誤った舵取りをして、痛い目に会った地銀もたくさんあります。同じ過ちを繰り返さないためにも、地銀の役割とそれがゆえの進むべき道を周囲がミスリードしてはいけないと思うのです。

ここでまた都市銀行と地銀を混同するような、広域に及ぶ地銀再編をおしすすめるのは明らかな間違いであると思います。地方銀行は最低一県一行必要なのです。自治体との連携による地域活性化を考えれば至極当然のことでもあります。財政の再建を念頭においた行財政改革によって小さな政府を推し進めていく上では、なおさらのことでもあるでしょう。

むしろ、地銀に対しては自治体がその連携策をきっちり構築して、地域の中小企業の支援策を強化して欲しいところです。これ以上、地銀をメガバンク化させその違いが一層見えにくくなるのは、地域経済にとって決してプラスではないからです。考えうる施策として、例えば保証協会利用を地銀に限定するのはどうでしょう。保証協会保証と言うものは、信用力の面でなかなか銀行融資が受けられない中小企業向けに公的保証が支援する制度です。これ以上地銀にふさわしい制度はなく、メガバンクがこの制度を活用すること自体が私はおかしいと以前より強く感じているところでもあります。

いずれにしましても、メガバンクと地銀は双方の明確な違いが利用者からも見えなくてはいけない。そのためには、やはりいたずらに県境を越えた規模の拡大による再編の流れを作ることはプラスではないと思います。むしろそれはメガバンクとの競争をより一層激化させることにもつながり、地銀自身にもまたその顧客にも決してプラスを生むものではないと思うのです。

東京都民銀行と八千代銀行の統合の英断には敬意を表しつつも、地銀統合の流れに関してはその本来の役割とメガバンクとの違いを認識しつつ慎重を期すべき。地域経済の健全な発展を考える上からも、そのように考える次第です。

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1 コメント

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日本に週給制の導入を (溝口一人)
2013-08-08 10:56:34
日本に週給制、日給制の導入が可能なサービスを提供する予定です。
できればお会いしてご紹介できればと存じます。
mkazu@bsam.biz
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