日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

〈70年代の100枚〉№80~ライブで知る本場エンターティナーの実力

2009-08-22 | 洋楽
アメリカの音楽ショービズ界には、日本とはちょっと違うスターのタイプが存在しています。一言で言うとエンターティナー。日本の北島三郎や五木ひろしとは違うし、音楽的には布施明に近いのかもしれませんが、もっと大物感があるとでもいいましょうか。代表格は何と言ってもフランク・シナトラな訳で、そのシナトラ自身から70年代に自分の後継者と名指し指名を受けたエンターティナー、それがバリー・マニロウです。

№80       「ライブ/バリー・マニロウ」

バリー・マニロウは、その下積み時代をベッド・ミドラー(この人もアメリカショービズ界の重鎮です)とともに過ごし、彼女の1、2枚目のアルバムの共同プロデューサーとしてその名を知られるようになります。そして、73年に自作曲中心のアルバムでソロ・デビューするも全く売れず。ところがその直後、所属レコード会社がクライブ・デイビスのアリスタに統合されたことで一転。彼の才能を見抜いていたクライブは、74年彼に他人曲である「哀しみのマンディ」を歌わせ、見事全米№1を獲得するのです。この曲を含んだセカンド・アルバム「バリー・マニロウⅡ」も大ヒットし、彗星の如く現れた新人として、一躍全米中の注目を集める存在になったのでした。この頃の彼のイメージと言えば、「哀しみのマンディ」こそ他人曲であったものの、エルトン・ジョンばりのピアノで弾き語るシンガー=ソング・ライターといった印象でした。少なくとも「哀しみのマンディ」の彼からは、およそシナトラを継ぐエンターティナーのイメージは皆無です。ではいつから彼はエンターティナー路線に移行したのでしょう?

ディック・クラークのTVショーへのレギュラー的出演が、大きく彼を飛躍させたと言われています。ディックは、「マンディ」でブレイクした直後の彼に目を止め、TVエンターティナーとして育てることを思いついて所属レコード会社のボスであるクライブ・デイビスに相談し、彼のエンターティナー化戦略を練り上げたのです。以降、ディックのレギュラー・プログラムの他、いくつかの特番が放映され、TV会のオスカーと言われるエミー賞を受賞するなどの栄誉にも輝き、当時の他のシンガーたちとは違った路線で独自の地位を築きあげたのです。言ってみれば、バリー本人とボスのクライブ、そしてTV界のカリスマ、ディック・クラークの3人の英知を結集した戦略だったわけです。バリーはそんな戦略に上手に乗って、「歌の贈り物」「涙色の微笑」「思い出の中に」「愛を歌に込めて」「愛に生きる二人」などのヒット曲を連発。「歌の贈り物」と「思い出の中に」はともに全米No.1を記録しています。日本では、その最大のヒット曲がダンスナンバーの「コパカバーナ」だったことから、ややもするとディスコ・シンガーのように思われている向きもありそうですが、やはり彼の真骨頂はどんなタイプの歌も自分のスタイルで歌いあげる、その歌唱力にこそあるのです。

さてさてアルバム「ライブ」は2枚組レコードに、彼のエンターテイナーとしての魅力をギッシリ詰め込んだ珠玉のライブ・アルバムであり、スタジオ盤からだけではうかがい知れないバリーのエンターティナーとしての実力の一端を垣間見ることができます。特にメドレーで展開される曲たちには、あらゆるタイプの楽曲を確実に自身のスタイルで歌いあげていくものであり、その熱唱はある意味圧巻であります。ちょっと間違うとオヤジ臭さの極致になりそうな、日本で言うことろの「歌謡ショー」的展開でもあるのですが、それをそうさせないところが彼の底力であり、シンガー=ソング・ライターと実力派シンガーそしてプロデューサーとしての経験と才能をミックスし、独自のスタイルを作り上げているが故の真の実力であると言っていいと思います。

77年リリースのこのアルバム、それまでのベスト盤的性格と評判が高かったテージをおさめた待望の企画モノであり、全米チャートではバリー初めての、その後のキャリアを通じても彼唯一の№1アルバムとなっています。近年のロッド・スチュワートの素晴らしい活躍にすら正当な評価が下せないほどショービズに対する認識に乏しい日本では、なかなか受け入れられない類の音楽であるのかもしれませんが、これぞ本場のエンターティメントとの賞賛に値するすばらしいライブ盤でありもっと多くの音楽ファンに聞いていただきたい作品なのです。本作は近年、日本でも大幅に未発表音源を加えたデラックス版2枚組CDがリリースされています。バリー・マニロウ=「コパカバーナ」のイメージしかない方々には、ぜひともこのライブのデラックス版で、彼のエンターティナーとしての素晴らしさを味わってみていただきたく思います。

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