日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

「70年代洋楽ロードの歩き方19」~パワーポップ2

2010-08-08 | 洋楽
今回はアメリカ産のパワーポップに着目してみます。

60年代アメリカで英国ビートルズに対するパワーポップのルーツ的存在と言えば、ビーチ・ボーイズやモンキーズ(彼らは作られたアイドルと言う点でも、ある意味重要なルーツかもしれません)でしょう。70年代アメリカに登場したパワーポップは、ビートルズ(特にポール・マッカートニー)の影響をストレートに受けた英国産とは一味違う、独自のパワーポップが生み出されたのでした。その代表格がラズベリーズです。

ラズベリーズといってピンとこない方、「あのエリック・カルメンが在籍した」と言えば「なるほど!」と思っていただけるかと思います。「ゴー・オール・ザ・ウェイ」「明日を生きよう」「レッツ・プリテンド」「トゥナイト」・・・、ビッグヒットこそないものの72~75年頃にかけてスマッシュヒットを連発。日本ではむしろ本国以上の人気を集めていたかもしれません。中でも「レッツ・プリテンド」のメロディアスな甘さは、極め付けと言っていいでしょう。この曲は後にあのベイシティ・ローラーズをはじめ、多くのフォロワーにカバーされ、まさしくパワーポップの名曲として君臨してます。彼らはメンバーチェンジを経て75年に解散してしまうのですが、リーダーのエリック・カルメンはソロでラズベリーズ以上の成功をおさめます。ソロでは名バラード「オール・バイ・マイ・セルフ」が有名で、バラード・シンガーの印象が強いのですが、「すてきなロックンロール」「恋をくれたあの娘」「ヘイ・ディニー」など、パワーポップ路線の佳曲を何曲も書いてもいるのです。

ラズベリーズの解散後、その後を継いでアメリカン・パワーポップの雄になったと言えるのはチープ・トリックでしょう。やや、バブルガム・アイドル的な印象が強いのですが(アメリカでの出世作ライブ「at武道館」は黄色い歓声で埋め尽くされています)、77年日本でのデビューヒット「甘い罠」をはじめ、「サレンダー」「ドリーム・ポリス」「ヴォイシズ」と日本でも大ヒットした数々の曲はどれも、ロックとしてのB級加減は否めないものの、かなり魅力的なパワーポップであることは保障付きといった感じです。代表曲を1曲選ぶなら断然「甘い罠」。音楽評論家の渋谷陽一氏が自身のラジオ番組で彼らを紹介したのがキッカケで、アメリカよりも先に日本でブレイクしたという逸話を持っています。それにしても「チープ・トリック=安っぽい仕掛け」とは、あまりにパワーポップ的なネーミングです。

さらに79年彗星のごとくアメリカに登場したパワーポップ・バンドがいます。ザ・ナック。デビュー曲の「マイ・シャローナ」を、いきなり全米チャートのトップに6週連続で送り込んだというパワーポップ界一のツワモノです。恐らくパワーポップに分類されるアーティストが、全米チャートを制覇したのは先にも後にもこのナックだけではないでしょうか。彼らはあの、スウィートやスージー・クアトロを世に出した、マイク・チャップマンがプロデュースしたバンドあり、そう言われてみるとラズベリーズやチープ・トリックとは一線を隔すどことなく英国的な香りがするバンドであるのです。デビュー曲の鮮烈さから、一般的には一発屋であったかのように思われがちですが、実は他にも「グッド・ガール・ドント」「ベイビー・トークス・ダーティー」のヒットがあるのです。まぁでも彼らには「マイ・シャローナ」にまさる曲はないですね。

<70年代洋楽ロードの正しい歩き方~パワーポップ2>
★パワーポップを正しく知るアルバム★
1.「ラズベリーズ・ベスト~フューチャリング・エリック・カルメン」
パワーポップはやはりベスト盤で。彼らは近年ベストCDが数種類出ていますが、オリジナル・ベストはこれです。レコード時代のものなので曲数は少ないですが、デビューからメンバーチェンジを経て解散まで代表曲は全て収録。エリックのその後のソロ展開もイメージしてか、「アイ・キャン・リメンバー」なんていう組曲的なナンバーも入っています。オリジナル・アルバムでは、「サイド3」がおすすめ。一般的に評価は高くないのですが、バンドしてのまとまりが出てきた時期でバッド・フィンガーともイメージがダブる“パワーポップ・バンド”の正しいあり方がそこにはあるように思えます。

2.「ザ・ベスト・オブ・エリック・カルメン」
こちらはエリック・カルメンのソロになって以降のベスト盤です。確かに「オール・バイ・マイセルフ」は荘厳な印象の名曲ですが、他のメロディアスでキャッチーな曲の数々はやはり“パワーポップの旗手”的な彼の資質を感じさせるのに十分なものがあります。オリジナル・アルバムで聞くならば、満を持してリリースされたソロ第一弾「サンライズ」でしょう。「サンライズ」~「素敵なロックンロール」~「恋にノータッチ」~「オール・バイ・マイセルフ」と続くアナログ盤で言うところのA面は圧巻。彼の才能に脱帽です。

3.「グレイテスト・ヒッツ/チープ・トリック」
90年代に出された彼ら初のベスト盤です。代表曲とともに未発表トラックのビートルズのカバー「マジカル・ミステリー・ツアー」やプレスリーの「冷たくしないで」、ファッツ・ドミノの「エイント・ザット・ア・シェイム」を、彼ら的パワーポップに料理したナンバーがけっこうイケています。彼らの音楽は、ビートルズ的要素とヤンキーノリのアメリカン・ポップの要素をうまく取り入れた、アメリカン・パワーポップといった趣です。オリジナル・アルバムではやはり「at武道館」。テクニック的なものを競わないパワーポップにおいてはライブアルバムが少ないのですが、その意味でも貴重な存在です。「甘い罠」~「サレンダー」と続くB面のくだりは、まさしく「これぞパワーポップ」です。

4.「ゲット・ザ・ナック/ナック」
ベスト・アルバムが90年代に出されてはいるのですが、沢山ヒットがある訳ではないので、やはり衝撃のデビュー作を聞くべきでしょう。「マイ・シャローナ」「グッド・ガールズ・ドント」をはじめとして、どれも2~3分台のこれぞパワーポップという“チャップマン・サウンド”のナンバーにあふれています。改めて取り上げますが、よく言われるパワーポップとグラムロックの隣接度合いを検証する格好の題材でもあるのです。

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