日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

売れ筋ビジネス書<ブックレビュー>2・13号

2009-02-13 | ブックレビュー
昨日に引き続き最近の売れ筋ビジネス書の<ブック・レビュー>です。

★「テキトー税理士が会社を潰す/山下明宏(幻冬舎:1429円)」

仕事柄、普段から世間一般に問題のある“手抜き”税理士は多いと思っていただけに、このタイトルとそれを現役の税理士が書いたという内容に期待しました。

結論から言うと、税理士界に一石を投じるような良いことを言っているな、と思わせる半面、ポイントとなる話が繰り返し登場し中身はさほど深くないこと(簡潔にまとめれば、半分の100ページ程度で収まる内容です)、自身の税理士事務所のPR色が濃く出ていて最後まで読むとそこがやや“鼻につく”こと等、難点も多少あります。

著者の主張としては、「税務監査証明書」の存在を広く知らしめ本来の責任感ある税理士の仕事振りを強調している点や、経営者の「理念」こそが企業経営にとって最重要ポイントであり、会社経営はそれを軸にきっちり推し進めていくべきであるという部分には大変好感が持てました。また、著者が考える本来あるべき税理士の姿が明快に描かれているので、実際現在付き合いのある税理士をそれとの比較評価が簡単にできる点は、中小企業経営者の方々にはありがたいのではないでしょうか。

余談ですが、私自身常々クライアントに「コンサルタントと言えども税務は税理士でない者が指導することは法律で禁じられおり、その意味で税務を含めた総合的な税財務コンサルは税理士の専業領域です。税務対策抜きの中小企業財務コンサルは中途半端なものになるので、私は財務に関して(当然税務は除く)はあくまでアドバイス・レベルに留め、フィーをいただく仕事としてはお受けしません」とお話しております。

その意味で、本書に税理士の本来あるべき仕事の様を明確に書いていただいていることは、税理士と経営コンサルタントの担当領域の違いが読者である中小企業経営者の方々に、分かりやすくご理解いただけるであろうと思われ、その点とても喜ばしく読ませていただきました。(個人的には、お互いの力量が良く分かった税理士と中小企業コンサルタントが、協力しつつそれぞれの担当領域での企業の改善にあたるのが理想形であると思っております)

以上を踏まえ本書は、10点満点で7点。
税理士本来の役割をご存知でない中小企業経営者(特に新米経営者)の方々には、ぜひともお読みいただきたい1冊です。内容は軽いので2時間で十分読めます。