日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

経営のトリセツ3 ~ 計数目標共有の重要性

2007-09-21 | 経営
昨日の続きで、「俺と社員の会社」=「組織」という考え方についてです。

会社を成長させる大きなポイントである「俺の会社」から「俺と社員の会社」への脱皮というお話をしました。これはすなわち「組織をつくる」ということでもあるのです。
社長とそれ以外からなる「俺の会社」の時代は、社員ひとりひとりが1日に行う仕事の課題やそれを遂行するための標準条件が呈示される訳ではなく、毎日目の前にあるものを単に処理し、社長が都度指示する課題に取り組むだけの状態が続きます。

20世紀初頭、アメリカの経営学者テイラーは、このような状態を「成り行き管理」と名付け、労働者のその日の気分や社長の監視の有無によって生産性が上がるか下がるか大きく異なる状態であるとしました。
おや?今勤めている自社が、「テイラーの成り行き管理状態」であると感じられる方も、意外にいるんじゃないですか?

社員がすべて社長の手足であるうちは「成り行き管理」でも仕方がないとも言えます。しかしながら、規模が拡大して社長一人の管理では手に追えなくなったとしたら、「成り行き管理」では思うように前に進まず困ったことになるに違いないのです。

テイラーは「成り行き管理」を脱する方法として「科学的管理」を提唱しました。すなわち、課題を与えその遂行標準条件を設定するとこで、「成功」「失敗」の判断基準として報酬に反映させるやり方を考えたのです。誰が上に立っても同じやり方ができる訳で、これはすなわち、組織管理の始まりでもあると言えます。

つまり、「俺の会社」から「俺と社員の会社」に移行することは、社長ひとりの管理から社長自身の管理と他の人による管理に分割管理することであり、他の人による管理を社長からも見えやすくするためには他の人が「組織」として任された部分を管理をする必要があるのです。そして社長は、「お山の大将」もしくは「猿山のボス」的存在から「組織の長として」&「部下を管理する」という立場に変わっていかなくてはなりません。

私が知るかぎり、会社が大きくなってきて社員が増えてくると、「部」や「課」を作ってみたり「部長」や「課長」を任命してみたりはするのですが、結局はすべて社長が決めないと先に進まないという会社がよくあります。形だけの部門創設や肩書だけの役職発令ですね。
「お前がんばってるから部長にしてやるぞ」「ヘマしやがって課長に降格だ!」とか、言ったりしていますが、権限も責任も委譲してなければ単なる「褒美」や「処罰」の一部に過ぎず、まさに「お山の大将」「猿山のボス」の行動と変わらないのです。

形の上で「部」を作り「部長」任命しても、末端まで自分が目を光らせ、直接指示しようとする姿勢が変わらなければ、そこで企業の成長は止まらざるを得なくなるのです。

私はよくそんな会社に出会うと、「社長が社員に権限を委譲して組織をしっかり作らなければ、会社は社長のサイズを超えられないんですよ」と言ってあげます。
でも大抵の場合社長は、「やつらに任せられる訳がないだろう。ここまで会社を伸ばしたのは俺の力だよ。すべては管理しきれないとしても、俺がやったほうがマシだよ。そんな目に見えて業績の足を引っ張ることをやるのはマイナスでしかない!」なんて言い放つんですね。

そんな時は一言!
「「損して得とれ」ですよ。目先は足を引っ張るかもしれませんが、長い目で見れば絶対にプラスになる話です。会社を大きくしたければ、このままじゃダメだって分かりますよね。業績好調の今決心しなければ、不調に転じたときにはとてもそんな余裕はないですよ」
この段階で気持ちが固められないのは、少しでも目先の損を嫌がるかなりケチな経営者です。これが決心できないぐらいだと、早晩ケチるあまりにコンプラ違反でも犯して、“退場”とならなければいいのですけどね…。

決心ができたら次に問題になるのは、いかにいちいち口出しをしない自分になれるか。そのための仕組みづくり=「目標の設定」が不可欠です。目標を定め、途中経過でチェックは入れても、やり方をまかせ結果をみて評価する。管理者には、いかに目標達成に向けて努力させるかです。
そして管理者は、自分に課された目標を部下に割り振って管理する。目標のないところに管理なしですから。

この段階でよく出るのは、「いきあたりばったりで予算も計画もないわが社に、目標数字なんかつくれないですよ」という声です。

たしかに、中小企業では「予算」とか「年度計画」とかがしっかりできている会社はまず稀です。でも過去の「実績数字」はありますし、いかにワンマン社長でも一国一城の主であるなら、社員を食わせるためにいくら稼がなければいけないかなど、社長の頭の中には何らかの「目標数字」なり「計画数字」なりがあるはずなのです。だから、まずはそれらを使って、「組織」が共有できる「目標」をつくればいいのだけの話です。
そんな簡易版の「目標」ができれば、その数字を管理者に分け与えて、さらに管理者はそれを部下に分け与える、ごくごく簡単なことからのスタートでかまわないのです。

社長がうまくできないなら、その部分の入口だけ私のような“安い(?)コンサルタント”に頼んだっていいんです。それと並行して、社長との「分業」相手になる管理者の意識づけを外部研修でおこなうとか(管理者教育は社内では難しいです)、部下を育てられる管理者養成をしっかりやっていけば、2~3年できっと組織然とした企業ができあがることと思います。


思いがけず長々と、具体的な話にまで展開してしまいました。
この項、さらに次回「トリセツ」に続きます。