フィールドノート

連続した日々の一つ一つに明確な輪郭を与えるために

3月13日(日) 曇り

2016-03-15 23:28:00 | Weblog

8時半、起床。

トースト(麻婆茄子をのせて)、紅茶の朝食。

11時に家を出て、神楽坂へ。今日は2カ月に一度の「いろは句会」の日。場所は「SKIPA」。

本日の参加者は、紀本さん、恵美子さん、あゆみさん、低郎さん、林さん、しほこさん、私の7名。常連の蚕豆さんは足を骨折されて入院・リハビリ中で欠席。初回からの連続出席者(今回で15回)は私一人となった。

今回の作品は24句。京さんは仕事の都合で欠席だが、投句はされたのである。写真を撮るのに恵美子さんにもっていただく。昨夜は遅くまで確定申告の書類作りをしていたそうだ。私と同じだ(笑)。

今回の兼題は「下」。「下の歯」、「軒下」、「地下鉄」、「下見」、「下手」、「下水」「枕の下」、「頬紅の下」、「七つ下がり」、「下総」と人数(8人)より多い10句あるが、これは兼題を意識せずに作った自由題の句の中にたまたま「下」という字が入ったためだろう。

今回はなかなか粒ぞろいで、3句に絞り込むのが難しいと感じた。

みな考え込んでいる。

その沈黙を破るように、しほこさんが、「私、俳号を考えてきました」と言った。「松尾万笑(ばんしょう)です」。

各自が自分の選んだ3句(天=5点、地=3点、人=1点)を発表。集計結果は以下のとおり(得点順)。

6点

 軒下にむすんでひらく春の雨  あゆみ (恵美子さんが天、たかじ=私が人)

 遺書のよなラブレターのよな春の文  林 (恵美子さんが地、あゆみさんが地)

 春の朝枕の下にこころざし  低郎 (あゆみさんが天、恵美子さんが人)

5点

 地下鉄は春の恨みを乗せてゆく  恵美子 (紀本さんが天)

 居眠りをしたふり春の小川くん  紀本 (低郎さんが天)

 背中から履歴書透ける三四月  紀本 (万笑さんが天)

 下水温みドブネズミ今を生きる  京 (たかじが天)

 花おぼろ七つ下がりの杯重ね  林 (紀本さんが地、万笑さんが人、低郎さんが人)

 スチームに歪みたる嗚呼カモメの舞い  低郎 (林さんが天)

4点

 猫背して裏切りに舞う春ショール  恵美子 (たかじが地、林さんが人)

3点

 姪ちゃんに摘まず置きたる土筆かな  万笑 (低郎さんが地)

 さよならは別れの言葉じゃなくて春  たかじ (はやしさんが地)

 ものの芽に留めおいてあるきらめきは  林 (万笑さんが地)

1点

 背伸びして座る止まり木月近し  万笑 (紀本さんが人)

 春ショール蛍光管が爆ぜるなり  低郎 (あゆみさんが人)

いつもであれば10点を越える句が1つ、2つはあるのだが、今回は、予想どおり票が散った。3人が選んだのが1句、2人が選んだのが4句、残りの入選作はすべて1人が選んだものである。作品が粒ぞろいだったということもできるが、個々人の好みを越えて、圧倒的な共感を呼ぶ作品がなかったということでもあろう。

複数の人に選ばれた5句について私の感想を述べておく。

あゆみさんの「軒下にむすんでひらく春の雨」は、やわらなか春の雨のイメージを伝える句である。「春雨じゃ、濡れて行こう」ではなくて、小さな子供が2人、ジャンケン遊びをしながら軒下で雨宿りをしている情景がまず浮かぶが、誰もいない軒下で、雨の滴がピチャリと水たまりに落ちて小さな王冠を作っているミクロの映像も浮かんでくる。

林さんの「遺書のよなラブレターのよな春の文」は、「遺書」と「ラブレター」という明暗分かれる手紙に潜む共通点(大切な誰かへ思いを伝えようとする)を鋭く指摘しつつ、「春の文」というやわらなか言葉でその鋭さを包み込んでいる。「春の文」の書き手は樋口一葉のような女性であろうか。

低郎さんの「春の朝枕の下にこころざし」は、私は旅先の宿で読んだ句だと思ったが(実際、作者の解説によればその通りだった)、新入社員が会社に出かける日の朝の自宅の情景と呼んだ人が多かったようだ。私は「こころざし」をチップのことかと思い、でも、それなら「枕の上」だよなと思った。「こころざし」はチップではなく精神的なもののようである。

林さんの「花おぼろ七つ下がりの杯重ね」は古風な言葉を使った擬古文のような俳句である。おそらくこれが他の人にはない林さんの作風となっていくだろうと思う。

恵美子さんの「猫背して裏切りに舞う春ショール」は、「裏切り」という言葉の強烈さも手伝って、映像的に鮮やかな句である。実際は、家から外に出たら思ったより寒かったということで、「予想が外れた」ということなのだが、それを「裏切り」という大袈裟な(滑稽でもある)言葉を使ったところが妙味である。

私自身の作品は、「さよならは別れの言葉じゃくて春」という遊んだ句(薬師丸ひろ子の『セーラー服と機関銃』とJAYWALKの『何も言えなくて・・・夏』のモンタージュ)が入選して、かろうじて連続入選記録を15に伸ばしたものの、「春の雲離れてはまた近づけり」と「下総の平野(ひらの)を行くや春の水」は選外だった。でも、しばらくは高浜虚子のひそみに倣って、平明にして余韻のある句(客観写生)を追及していきたい。

句会を終えて、食事(広義の句会の一部です)。

私は定食(鶏肉団子のスープ煮)をチョイス。

ギタリストの低郎さんのライブ情報です。

次回の句会は5月22日(日)。兼題は「原」(林さんが出題)。

 春風や闘志抱きて丘に立つ  高浜虚子

では、みなさんまたお会いしましょう(恵美子さんは仕事で一足先に帰った)。

神楽坂の駅まであゆみさんとご一緒する。

そして私は改札口で卒業生のTさん(論系ゼミ4期生、2014年卒)と待ち合わせる。

そう、本日の社交は二本立てなのである。

神楽坂はあまり来たことがないというTさん。とりえあず駅からすぐの赤城神社に案内する。今日はなにかのイベントがあるのだろうか、境内にはたくさんの出店。

何かを一生懸命にお願いするTさん。

日曜日は歩行者天国になる坂道を飯田橋方面へ下る。

弁天様でも、何かを一生懸命お願いするTさん。

何をお願いしているかはだいたい想像がつく。「美味しいスイーツが食べたい」でしょ(笑)。

坂を下りきって、「紀の善」で一服。待っている客がけっこういたが、椅子に座っておしゃべりをしながら待っていられたので、長いとは感じなかった。

私はいちごあんみつを注文。最初はあんこのみの甘さで食べ、途中、あんこがなくなってからは蜜をかけて食べる。「甘味あらい」のご主人伝授の食べ方である。

「紀の善」が初めてというTさんには看板メニューの抹茶ババロアを勧めた。願いがかなったでしょ(笑)。

甘いものを食べた後の口直しには磯辺巻きと決まっている(「甘味あらい」ではいつもそうしていた)。Tさんにも一つ分けてあげる。

ここの磯辺巻は海苔を惜しげもなく使っている。

同じ坂道を今度は上る。Tさんは大学時代スキーの選手だったから、この程度の運動は楽々である。

「SKIPA」にはまだ行ったことがないTさんを「SKIPA」に連れて行くが、満席だったので、すぐ近くの白銀公園で時間をつぶすことする。

近所の子供たちや親子連れで公園は楽しい雰囲気にあふれて

Tさんも童心に返ったようである。「うう、お尻がきついです」(笑)。

登りたくなっちゃいましたか。

そうそう、そこから顔を出してみたくなるよね。でも、普通の大人は我慢しているんです(笑)。

うん、立ち上がって、「イェー!」とピースサインしたくなるよね。 

雑誌『明星』の「アイドルの休日」的グラビアでは定番のポーズでした。(笑)。

「SKIPA」に戻ると、ちょうど一つ席が空くところだった。

私はロイヤルミルクティー、Tさんはハーブティー(レモングラス)を注文。

Tさんから「俳句帖」をプレゼントされる。銀座の伊東屋で見つけたそうである。どうもありがとう。精進します。

今日、Tさんは私と会う前、文キャン前のカフェ「レトロ」に一人で行って、学生時代によく食べたふわふわオムレツをお昼に食べたそうだ。そして、この後は彼と新宿で会って、一緒にペットショップに行くそうだ(アパートで飼うことはできなが、見ているだけで楽しいそうだ)。今日一日で「孤独の時間」、「社交の時間」、「親密な時間」をバランスよく楽しもうというわけである(笑)。そうそう、バランスは大切です。私も今日一日で、「グループ的社交の時間」と「個人的社交の時間」を楽しみました(笑)。とくに「孤独の時間」は大切です。それを確保した上での「社交の時間」であり、「家族の時間」あるいは「親密な関係性の時間」です。そうでないと疲れてしまうし、自分を見失うことにもなりがちです。

テレビ局の仕事は大変そうだけど、その笑顔が見えているなら大丈夫。また、会いましょう。

7時、帰宅。

夕食はクリームシチュー(鶏肉、白菜、シメジ)。

デザートはTさんからいただいた桜餅(苺入り)とどら焼き。

 Tさんから届いた今日のお礼のメールにペットショップのわんちゃんの写真が添付されていた。