presented by hanamura ginza
大寒が近づき、1年で一番寒い時季となりました。
ここ東京でも、氷のような風の冷たさに、
身を震わせるような寒い日が続いています。
北国では雪が大量に積もり、
札幌では、まもなく雪祭りが開催されます。
東京都内では、まだ初雪は観測されていませんが、
先週の土日には、有楽町駅の前にある広場に、
本物の雪を用いて、大きなかまくらが作られていました。
そのかまくらは、秋田県で積もった雪を運んで作られたもののようです。
明りが灯されたかまくらは、たいへん幻想的で、
寒さのために家路を急ぐ人々も、
しばし足を止め、その景色を眺めていました。
雪と聞くと、寒い、冷たいというイメージもありますが、
真っ白な雪に覆われた雪景色を眺めると、
幽玄で神秘的な美しさも感じられます。
遠い昔の人々も、雪を畏怖しながらも
その美しさに惹きつけられ、雪を崇めてきました。
今日は、この雪をモチーフにした文様について、
お話ししましょう。
平安時代、雪は豊年の前兆とされていました。
初雪が降った日には、多くの臣下が朝廷を訪れ、
天皇から贈り物を賜ったようです。
また、当時の貴族たちは、
雪の鑑賞も楽しみ、
雪景色の様子を和歌などにも詠んで、
その美しさを称えました。
雪が意匠のモチーフとして文様化されたのは、
室町時代の頃です。
笹や柳、松などに降り積もった雪の様子を意匠化した
「雪持文様(ゆきもちもんよう)」が考案され、
雪を被った枝葉の名前と合わせて、
「雪持笹」「雪持柳」「雪持松」などとよばれました。
この雪持文様は、雪景色の情感をあらわす文様として、
当時つくられた能装束の意匠に多く登場します。
江戸時代には、
雪景色の美しさはもちろんのこと、
雪の結晶の美しさも注目され、
「雪輪文様」とよばれる文様が考案されました。
雪輪文様は、雪の結晶の六角形の輪郭を花びらに見立て、
円形にあらわしたものです。
優美でかわいらしい雪輪文様は大流行し、
雪輪の中に四季折々の草花を配した文様や、
雪輪の輪郭を抽象的に用いたものなど、
さまざまな雪輪文様が生まれました。
柄行きによっては冬以外に、
春夏秋にも楽しめるものもあり、
夏の着物(帷子)には、
暑い夏に涼をもたらす文様として用いられました。
上の写真の名古屋帯は、
昭和初期につくられた帯をお仕立て直ししたものですが、
雪輪の中に、手描き染めで梅に桔梗、萩があらわされ、
秋冬とお召しいただける柄行きになっています。
江戸時代の後期になると、
はじめて顕微鏡を用いて、雪の結晶が細かく観察されました。
雪の結晶のかたちは、人々を魅了し、
微細にあらわした結晶のかたちを集めた
「雪華(せっか)図説」という書物も出版されました。
この本に紹介されたさまざまな雪の結晶の姿も、
すぐに文様のモチーフとなり、
雪華文様とよばれ、雪輪文様とともに、
たいへんな人気となったようです。
雪をモチーフとした文様は、
現代でもたいへん高い人気がありますね。
四季折々の美しい自然の景色をあらわした
「雪月花(せつげつか、せつげっか)」という言葉に残されているように、
雪は、古来より日本人の美意識を揺さぶってきました。
しんしんと心に染み入る美しさが雪にはあるのでしょう。
「山寺や雪の底なる鐘の声」小林一茶
※上の写真の雪輪に草花文 手描き染め 名古屋帯は1月20日(金)に、
花邑銀座店でご紹介予定の商品です。
花邑のブログ、「花邑の帯あそび」次回の更新は1月26日(木)予定です。
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