花邑の帯あそび

1本の帯を通して素敵な出会いがありますように…

「鞠(まり)文様」について

2010-11-23 | 文様について

presented by hanamura


11月半ばを過ぎ、
早いもので今年もあと残りわずかとなりました。
街のあちらこちらでは
クリスマスのイルミネーションが輝き、
街行く人の目を楽しませています。

そろそろ、クリスマスのプレゼントを
探していらっしゃる方も多いことでしょう。

プレゼントというと、
昨今では子供用の玩具も凝ったつくりのものが多いですね。
玩具売り場には、子供だけではなく、
大人までもが驚いてしまうようなさまざまな仕掛けの玩具が
多く並べられています。

ちなみに今年は、
子供向けの小さなプラズマカーが人気のようで、
玩具でもやはり「エコ」のものが話題なんですね。

しかし、昔の玩具にこそ「エコ」なものが多いのです。

解れてしまった毛糸を使った「あやとり」や
道端の小石を使った「おはじき」、
古布の中に小豆をいれて作った「お手玉」、
そして「独楽(こま)」の材料には、
建築材にはならないマテバシイの木を用いていたようです。

現代ではゴミとして捨てられてしまうものを材料にしながらも、
アイデア次第で楽しく遊べる玩具として生まれ変わらせていた
昔の人々の知恵には感嘆させられます。

今回は、そういった昔ながらの玩具のひとつである
鞠(まり)をモチーフにした「鞠文様」について
お話しましょう。

鞠には、足で蹴って遊ぶ「蹴鞠(けまり/しゅうきく)」と
手でついて遊ぶ「手鞠(てまり)」があります。

蹴鞠の歴史は手鞠よりも古く、平安時代のはじめ頃です。
蹴鞠は、手鞠よりも大きく、鹿革からつくられています。

一方、手鞠は平安時代後期ごろからつくられるようになりました。
ぜんまいやおがくずなどの不要な材料を芯にして、
綿糸をぐるぐると何重にも巻いてつくられます。
まだ幼いうちにお嫁に出されるお姫さまを思いやった御殿女中たちが
お姫さまが嫁ぎ先で一人でも遊べるようにと着物をほどき、
その美しい糸を巻いてつくったのがはじまりです。



着物の意匠に用いられるのは、この手鞠のほうです。

安土桃山時代には、
当時の絢爛豪華な桃山文化の影響のためか、
幾何学的な文様があらわされた美しい毬が登場します。

江戸時代には、
五彩の絹糸を巻いて幾何学的な文様や梅や菊、麻などが
あらわされた贅沢で華麗な御殿毬(ごてんまり)がつくられました。

しかし、明治時代になると、「ゴムまり」と呼ばれる
ゴムで作られたボールが海外からもたらされ、
その弾力性の良さから昔ながらの鞠が玩具として用いられることは
少なくなっていきました。

それまでの美しい手鞠は、
玩具としてではなく、装飾用になり、
現代では工芸品としてつくられ、扱われています。

着物の意匠には、
その手鞠の美しさをそのまま写すように
あらわしたものが多いようです。

上の写真の名古屋帯は、
大正から昭和初期につくられた
子供用の襦袢をお仕立て替えしたものです。

不規則に配された鞠の意匠からは、
鞠が実際に跳ねているような躍動感が感じられます。
青海波の文様と鞠の文様があいまって
可愛らしいだけではなく、古典的な趣きも感じられます。

現代では、美しい手鞠は、
大人向けのプレゼントとしても
人気があるようですね。
でも、本物の手鞠もよいですが、
手鞠麩でも十分和の情緒は楽しめますね。
むしろ、くいしんぼうの私はこちらかもしれません。



※写真は花邑銀座店でご紹介している名古屋帯の文様です。

花邑のブログ、「花邑の帯あそび」
次回の更新は11月30日(火)予定です。


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