マスコミの力は凄い。
一人の原作者が絶望して自死をしてしまった事件をも消し去らんとしている。日ごろ人権派を謳う政治家も記者も、マスコミ様の意向の前にはひれ伏してしまう。
小説や漫画を原作としてアニメ化、実写化をしようとすれば、どうしても修正が必要になる場合はあると思う。映像の情報量は膨大で、映像を真剣に製作しようと考えれば、小説も漫画も情報量が絶対的に不足するからだ。
だからこそ私は原作と映像化、アニメ化された作品は別物だと割り切るようにしている。しかしながら原作を買い取ったつもりで、勝手に変えてはいけないと思う。そして、それを平然とやってきたのが日本のTV局である。
かつて週刊モーニングという漫画雑誌に「おせん」という漫画が連載されていた。東京は下町の割烹料亭を舞台に繰り広げられる下町情緒あふれる漫画であった。なによりも、その画風が独特で、色使いも華やかで毎回楽しみに読んでいた。
人気が出るにつれ「おせん」の実写ドラマ化がなされたが、これが酷いものだった。おそらく最初にジャニタレの起用ありきの企画で、原作にはない恋愛要素がぶちこまれてしまい、原作の持つ良さが消え去った驚異の駄作であった。
あまりの酷い実写化に衝撃を受け、作者のきくち正太氏は連載を中断しただけでなく、漫画家自体を廃業してしまった。類似の絵柄のない貴重な漫画家だけに、漫画業界は貴重な人材を失ったと思った。そして担当編集者はどうしたかは知らないが、出版社はそのまま幕引きを狙い、当時たいした話題になることなく消え去った事件であった。
この「おせん」を担当したTV局のプロデューサーは、実は「セクシー田中さん」をも担当しており、原作クラッシャーであることをまったく反省していないことが良く分かる。私はこの人が主犯であると考えており、脚本家なんてその手先に過ぎないと思う。
ほぼ間違いなく、今回も沈黙を貫いて事件の抹消を狙っていると私は邪推している。なにせ日ごろ、人権派を謳い文句としている良心的ジャーナリスト様のほとんどが同調して無視しているのですからね。
なお、2008年に筆を折ったきくち正太氏ですが、心の傷も癒えたのか「おせん 和の女」として再開されています。もちろん出版社は変えていますね。作家を守らぬ出版社なんて不要ですから当然です。