まるでミステリーを紐解くような楽しみがある。
表題の書は、漫画「デッドマウンドディスプレイ」からスピンアウトしたものだ。本編のなかでも、謎の奇術師であるソリティアの存在感はずば抜けている。にもかかわらず本編の本筋には無関係な人物ゆえに、その存在価値がよく分からない、なんとも謎多き存在である。
本編である「デッドマウンドディスプレイ」は隔週発刊の漫画雑誌に連載されているが、その真価は単行本にこそある。現在まで11巻が刊行されているが、その各巻末には原作者の成田良悟による短編小説が掲載されている。
この巻末の小説と、本編の漫画は裏表の関係になっているから面白い。ちなみに短編小説では主人公の師匠である死霊魔術師がメインとなり、本編の漫画だけでは分からなかった部分を補足する形になっている。それ故に私は単行本を買うと、真っ先にこの巻末の短編小説を読んでいる始末である。
だが物足りさなが残っていた。謎の奇術師ソリティアがその典型で、お調子者の手品師に思えるが、とんでもない深い闇をその笑顔の奥に隠している気配もする。その彼を主人公に迎えてのスピンアウト作品なのだから、これを読まずにいられようか。
たかがライトノベルなのだが、読んで後悔なし。いや、実に嬉しい。本編では名前しか出てこない謎のキャラクターたちが、ちょこっと、ちらっと出てくる。この出し惜しみ~!と憤慨したくなるが、本心ではワクワクしている。ワニ姉妹や誕毒犯、ジョアッキーノと出てくる、出てくる。もう楽しくて仕方ない。
すこしずつ謎が解けていく楽しみが、この作品にはある。本編の作画者である藤本新太の描くイラストも絶妙だ。二巻目以降が今から楽しみである。
なお本編の漫画を読んでいない方には、この作品はまったく無意味、無価値、無駄であることはご了承いただきたい。