見つめるものが違った、だからこそ鬼やんは強かった。
四国の離島で産まれ育ち、海辺の町で過ごす少年・吉田茂、通称鬼やんは曲がったことが大嫌い。中学を仕切る風紀部に逆らい、小柄ながら強い信念に基づき逆風を撥ね退ける快活な少年だ。子クジラを救い仲良くなるが、浜のイベントでクジラ狩りが開催されると知り、逃がそうとするが子クジラは非業の死を遂げる。
怒った母クジラは浜で暴れて町は崩壊の危機に瀕する。人間の傲慢さに対して自然の報復とも言うべき母クジラの暴走を冷静に見つめる鬼やんだが、親しき人たちが死ぬかもしれないことに黙っていられるはずもない。
鬼やんは母クジラの怒りを鎮め、遠い沖合に逃がそうと奮闘するが、またしても妨害しようとする大人たち。
ネタばれになるが、この物語は悲劇で終わる。普通ならここで「残念ながら・・・」と書き込むところなのだが、私にその気はない。残念に思えないというか、それがあるべき結論なのだと感じたからだ。
爽快なエンディングとは言えないはずなのだが、読後感はなぜか清々しい。あまり有名な作品ではないと思いますが、鬼やんの男らしさ、清々しさ、凛とした生き方は、是非一度は知って欲しい名作だと思います。
忙しい最中ではありますが、無性に読みたくなった作品でした。そして読んで後悔なしの絶品でしたよ。