ヌマンタの書斎

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持分、寄こせ その二

2018-12-05 12:28:00 | 経済・金融・税制

医業は金儲けの手段に堕してはならない。

その基本的理念は、私でも理解できる。だが、現在の覇権国であるアメリカの考えは違う。医業も立派な金儲けの手段だと考えている。そのため、アメリカでは医師は概ね経済的に裕福であるとされる。

もちろん例外はある。特に貧困者向けのボランティア医療に携わる医師たちは、それほど裕福な訳ではない。またこのボランティア医療は、キリスト教教会や、NGOのような非営利団体が寄付を募って運営している。

だが、前オバマ大統領が問題視していたように、アメリカの医療制度は大半の国民には酷な制度となっている。はっきり言えば金持ち優遇医療制度である。だからこそ、最新の医療がアメリカでは提供されるのだが、その一方で先進国とは思えないほど、貧困な医療しか受けられない国民も少なくない。

はっきり言えば、アメリカにおいては医療は投資の対象である。医師により運営されているのではなく、投資家、特に保険会社によって医療は決められる。加入している医療保険の内容により、治療の内容が決まる国、それがアメリカである。

そのアメリカが虎視眈々と狙っているのが日本の医療市場である。

小泉政権が生まれる少し前から、アメリカは日本市場への参入を狙っていた。その大看板が第二次大戦後、世界の市場経済のルールを決めてきたGATTに替わって自由市場の世界展開を狙ったWTOである。

経済の規制緩和と自由市場を題目に、日本においても強硬な市場開放を迫ってきたことは、ご記憶にあろうかと思う。小泉内閣の頃だが、医療特区や、混合診療の解禁などの言葉を新聞紙面で見かけたことを覚えているだろうか。

病院の株式会社化や、医療保険の導入も、この時期に議論されている。オリックスの宮内が、この時期に政府に上手く取り入って「ガン保険」の許認可をとったのも、この時期である。

このアメリカの侵略に対し、必死で抵抗したのが他でもない厚生省であった。表向き、規制緩和に対する理解をちらつかせつつ、本音では自由な医療業の拡大には反対であった。

ただし、この抵抗は決して一枚岩ではない。当時既に問題化していた健康保険の赤字に対する危機感もあって、高度ながん治療に限って、従来の社会保険診療ではなく、民間の医療保険の活用を認める。

でも、本音では医師会同様、厚生省も医療の自由化には大反対であった。

だからこそ、医療法人の営利禁止という大前提は絶対崩せなかった。営利禁止なのだから、当然に配当禁止である。医療法人が解散した場合の出資持分の払い戻しは認める訳が出来なかった。

だからこそ、持分ありの医療法人を、持分なしに変更することを迫ってきたわけだ。

分かりやすく説明すると、あなたが出資して会社を作ると株主となる。その株主に対して、株式の権利を放棄せよと迫ってきた。だから医師たちは抵抗した。当然である。

こんな理不尽な決まり事(医療法)を押し付けてくるほどに、日本の医療の世界では、規制緩和、医療の自由化には大反対なのである。

もっとも霞が関のエリート役人様も一枚岩ではない。やはり健康保険の大赤字を減らすためにも、健康保険証をつかえない医療、すなわち自由診療を推し進めたい意向は確かにもっている。

また医師会でも、毎年評価(点数)が下がり収入減に直結している保険診療よりも、自由診療で稼ぎたい医師は決して少なくない。現在、稼いでいる医者は、みんな自由診療(美容整形やインプラント治療など)が収益の柱だからだ。(まだ続きます)

コメント (2)
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