のろや

善男善女の皆様方、美術館へ行こうではありませんか。

『ボローニャ国際絵本原画展』

2008-09-19 | 展覧会
2008 イタリア・ボローニャ国際絵本原画展へ行ってまいりました。

全部ではございませんが、こちらで入選作を見ることができます。

去年ほど印象深い作品はございませんでしたが、心に残ったものをいくつかご紹介させていただきたく。

絵そのものよりも発想が非常にのろごのみだったのが、トービアス・ヴィーラントの「ソーセージ日記」。
主人公はソーセージでございます。
一枚目はゆりかごの中でおしゃぶりをくわえているみどりごのソーセージ
といっても、口もなければ目鼻も手足もなくただひたすらにソーセージなのですが。
二枚目では少し成長して、タキシードの父(ソーセージ)とロングドレスの母(ソーセージ)によりそって記念写真におさまっている、セーラー服姿の幼いソーセージ
その後学校に入学したり、仲良しの女の子(てっぺんにリボンをつけたソーセージ)とクロケットをして遊んだり、遊び仲間たちと一緒に探検にでかけたりしてらっしゃいました。
この遊び仲間たちも、もちろんみんなソーセージでございます。
ひょろ長くて眼鏡をかけたソーセージ、ズドンと太くて、ひょうきんな帽子をかぶったソーセージ、ハンチングをはすにかぶって、口(とおぼしき所)に草をくわえているちびのソーセージ、紅一点の女の子ソーセージ
ハカセ風、腹ぺこキャラ、反抗児、紅一点、それにちょっといいとこ育ちの主人公。いかにも児童文学に出て来そうなメンツでございます。
ただ一点、みんなソーセージであるということを除いて。
これらがみなモノトーンの生真面目な調子で描かれているのが素晴らしい。
何たって、馬鹿馬鹿しいことを生真面目にやるというのが一番面白いんでございます。

それにしても今回はドイツの入選作が多うございました。
わけても大胆な構成になみなみならぬセンスを感じさせる Meike Andresen の太陽の谷、鉛筆のみで描かれた繊細かつ確かな線が非常に美しかったアンゲラ・グレークナーの作品、きっぱりした色彩とユーモアが楽しいフランツィスカ・ローレンツの大きすぎ、小さすぎなどが印象深うございました。

またシックな色使いの中、謎めいた人物が浮遊するガブリエル・パチェコ,単純なフォルムと執拗な描法で不思議な世界をつくっているエンリカ・カセンティーニもよろしうございましたし、タン・ケビというフランスの若い作家の作品は、現実(白黒)と想像(カラー)をひとつの画面の中に共存させ、たいへんおしゃれで心躍るものでございました。

全体を通して思ったのは、例年の傾向ではございますけれども、やはりCG作品が多いなあということ。
数えてはおりませんが、半分以上はCGを使った作品であったかと思われます。

CGもひとつのまっとうな描画ツールとして認めるべきなのでございましょうが、ワタクシは手描き風の作品がCGと分かると、なんだか騙されたような気分になってしまいます。
「CGでーす!」と叫んでいるような、あからさまなCG使いは嫌いじゃないんでございますけれどね。
手段がCGであろうと、手描きやコラージュやシルクスクリーンであろうと、出来た作品の良し悪しは結局作者のセンスにかかっている、ということは承知しております。
むしろCGはできることの幅が広すぎるくらい広いだけに、何をやって何をやらないかということの見極めが難しいということもありましょう。
いくらでも修正できますから、完成度を高めようと思ったら使わなければ損と言えるかもしれません。
それでも(そして見かけ上はその違いが分からなくとも)ワタクシはCGを経ずに作られた作品の方に、より大きなリスペクトを感じるのでございますよ。
頭が古いのかもしれませんが。




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