のろや

善男善女の皆様方、美術館へ行こうではありませんか。

いじめ 自殺

2006-11-15 | Weblog
いじめと自殺をめぐって様々な言説が飛び交っております。
のろも ふたこと みこと 思う所をつぶやきたく。

いじめに苦しんだ少年や少女の自殺が伝えられるたびに
「全校集会を開き、子供たちに 命の大切さ を訴えた」だの
「子供たちに 命の大切さ を教えていかなければならない」などという文句がニュースに流れますが
私はこういう文句を耳にするたびに腹立たしくなります。
自殺した若者をバカにしているのではないかとさえ思います。
自死を選んだ少年や少女たちは、命を大切にしなかったから死んだのではありません。
リセットして次の人生を生きればいい、という軽い思いで死んだのでは断じてありません。
彼らが死へと向かったのは
いじめという地獄から抜け出す出口が、そこにしか見いだせなかったからです。

全校生徒に向かって「命を大切にしよう」と呼びかけることなど
いじめる側にとっても、いじめられる側にとっても、ほとんど何の意味もなさないのではないかと思います。

いじめる側にとって、彼らの行為は「命」とは全く何の関わりもありません。
なぜならいじめる側は、別に相手を殺したくていじめるのではないからです。
ある人をバイ菌扱いし、人々の前で堂々と罵倒し、笑い者にし、あるいは徹底的に無視しても
それが相手を死の淵へと追いやる行為、即ち相手の「命」を軽視する行為だとは
いじめる側は、おそらく露ほども自覚していません。
これらの行為は彼らにとってアミューズメントであり、日々の不満のはけ口であり、
より消極的には「自分はいじめられっ子ではない(=より大きなグループの方に所属して、存在が承認されている)」
ということを自他において確認するための踏み絵です。

いじめる側の彼らは全校集会で、校長先生の話を神妙な気持ちで聞くかもしれない。
「そうだ、命というのは大切なものなんだ」と思うかもしれない。
しかしその認識は、彼らの「いじめ」というアミューズメントを止める理由にはならないでしょう。
彼らにしてみれば ウザイやつをおちょくる という日々のちょっとした娯楽と
校長先生のおっしゃる「大切な命」との間には
何の関連性もないのですから。

他方、いじめられる側にとって
「命は大切」という甚だ概念的な言葉は
現実として目の前を覆っている絶望を払拭する手助けにはなりません。

「君がこの世に生まれるためには何万というご先祖様が云々」
「君の命はこの宇宙にたった1つしかない云々」
「君をここまで育ててくれたお父さんお母さん」
こういった文言を聞いて
「ようし、そうだ、たとえ皆からバイ菌扱いされて、親も先生も誰も助けてくれなくて、これからもずっとお金をまきあげられたり、ウザイとかキモイとか言われ続けるとしても、僕は頑張って生きていくぞ。だって僕の命はこの宇宙にたった1つしかない、大切なものなんだから」
などと考え、実際にそうできるるのは、神がかり的に強い精神の持ち主だけではないでしょうか。

むしろ学校や教育関係者、ひいては社会全体が訴えるべきことは
「いじめ」というものが、いかに卑劣で、醜い、人間として恥ずべき行為か、ということです。

人を屈辱的な言葉で罵倒すること。
弱者を標的にして、笑い者にしたり身体的/精神的暴力を振るうこと。
ある人の、大多数の他人とは異なる点をあげつらって
バカにすること。

全校集会で訴えられるべきは、「命の大切さ」というつかみ所のない話よりも
こうしたいじめ行為が
人間として 本 当 に 恥 ず べ き 行 為 だ、ということです。

TVの中で、人気者のタレントたちがどんなに面白おかしく演じてみせようとも
あるいは、先生を含めたクラスの有力者がどんなに熱心に、または当たり前のように
その行為に及んでいようとも。

自分のしていることがいかに卑劣で醜悪なことか気付かぬ限り
いじめる者はあくまでも無自覚に、弱者である他人の生存権を踏みにじり続けるでしょう。
いじめる者に対しては、その行為の醜悪さの自覚を促すメッセージが発せられるべきです。

そしていじめられる者に対して発せられるべきメッセージは、決して
「命は大事なものだから死なないで = いじめられても、つらくても頑張って」というものではなく
「あなたは不当な仕打ちを受けている。その状況は絶対に打開されるべきものであり、
社会はあなたに対して加えられる暴力を、断じて許さない」というものであるべきです。


残念ながら、公職にありながら臆面もなく 強者の論理 を振りかざす
現都知事のような人物(いったい何様のつもりなんでしょう)も存在しておりますが
弱者を弱者たらしめているものは、往々にして
強者の無自覚な横暴である、ということに
社会全体が意識を向けてしかるべきなのです。


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