3/1の続きでございます。
スペイン絵画セクションの最後に展示されておりますのが、大きな作品ではないのにやたらと存在感のある、ゴヤのカバリェーロ侯ホセ・アントニオの肖像 。ここから次の中央展示室へと、圧巻の肖像画コレクションが展開いたします。
本展の呼び物であるベラスケスの肖像画2点と、「11歳の女帝マリア・テレジア」がひとつの壁面に並んでおります。
21歳でみまかる王女、4歳で逝く皇太子、そして16人の子を産み、政治的手腕を振るって国を繁栄に導いたのち、63歳で往生を遂げることになる「女帝」。その三様の運命が、作品の中に描き込まれているかのようではございませんか。
左端のマルガリータ王女はラス・メニーナスと同じドレスをお召しでございますね。
その隣で、豪奢な家具に囲まれてぽつねんと立っているのはマルガリータの弟、皇太子フェリペ・プロスペロ。可愛らしいお守りや護符をいくつもぶら下げた姿は、何ともはかなげでございます。眉毛の薄い、青白い顔の皇太子は、この絵が描かれた2年後に亡くなったということでございますから、椅子の上に描かれている犬の方が長生きであったかもしれません。実際の所、主役である皇太子よりも、脇でふざけている犬の方がはるかに生き生きとした表情を見せているのでございました。
それにしても、こう、小さな画像にしてみますと、まるで繊維の一本一本まで描き込んでいる緻密な絵のように見えますね。しかしご存知の通りベラスケスの作品は、実際にはかなり荒めのタッチで描かれております。
そうと分かってはいても、作品の近くに寄って、ばさ、ばさ、とほとんど無造作に置かれたかのような筆跡を目の当たりにすると、やはり驚きを覚えずにはいられません。
そして右端で自信に満ちた微笑みを浮かべているのは、表情といいしつらえといい、どことなく少女マンガ的なマリア・テレジア11歳。ぎらりと輝くつややかなドレスをまとった少女は、既に大物然とした風格を漂わせております。
技巧にも観察眼にも卓越したベラスケスと並べられるのはなかなかのハンデでございます。そのハンデを埋め合わせておりますのは、精緻な質感表現よりもむしろ、モデル自身の自信満々の表情でございましょう。
スペインの落日とオーストリアの繁栄を生きた3人の真向かいには、マリア・テレジアの時代から約一世紀の後、ハプスブルク家の黄昏を生きたエリザベートが薄暗い空の下で微笑んでおります。
この両壁の間に立って、時代を彩ったお歴々の肖像画をぐるっと眺めますと、栄枯盛衰という言葉が頭に浮かんでくるのでございました。
あと一回だけちょろっと続きます。
スペイン絵画セクションの最後に展示されておりますのが、大きな作品ではないのにやたらと存在感のある、ゴヤのカバリェーロ侯ホセ・アントニオの肖像 。ここから次の中央展示室へと、圧巻の肖像画コレクションが展開いたします。
本展の呼び物であるベラスケスの肖像画2点と、「11歳の女帝マリア・テレジア」がひとつの壁面に並んでおります。
21歳でみまかる王女、4歳で逝く皇太子、そして16人の子を産み、政治的手腕を振るって国を繁栄に導いたのち、63歳で往生を遂げることになる「女帝」。その三様の運命が、作品の中に描き込まれているかのようではございませんか。
左端のマルガリータ王女はラス・メニーナスと同じドレスをお召しでございますね。
その隣で、豪奢な家具に囲まれてぽつねんと立っているのはマルガリータの弟、皇太子フェリペ・プロスペロ。可愛らしいお守りや護符をいくつもぶら下げた姿は、何ともはかなげでございます。眉毛の薄い、青白い顔の皇太子は、この絵が描かれた2年後に亡くなったということでございますから、椅子の上に描かれている犬の方が長生きであったかもしれません。実際の所、主役である皇太子よりも、脇でふざけている犬の方がはるかに生き生きとした表情を見せているのでございました。
それにしても、こう、小さな画像にしてみますと、まるで繊維の一本一本まで描き込んでいる緻密な絵のように見えますね。しかしご存知の通りベラスケスの作品は、実際にはかなり荒めのタッチで描かれております。
そうと分かってはいても、作品の近くに寄って、ばさ、ばさ、とほとんど無造作に置かれたかのような筆跡を目の当たりにすると、やはり驚きを覚えずにはいられません。
そして右端で自信に満ちた微笑みを浮かべているのは、表情といいしつらえといい、どことなく少女マンガ的なマリア・テレジア11歳。ぎらりと輝くつややかなドレスをまとった少女は、既に大物然とした風格を漂わせております。
技巧にも観察眼にも卓越したベラスケスと並べられるのはなかなかのハンデでございます。そのハンデを埋め合わせておりますのは、精緻な質感表現よりもむしろ、モデル自身の自信満々の表情でございましょう。
スペインの落日とオーストリアの繁栄を生きた3人の真向かいには、マリア・テレジアの時代から約一世紀の後、ハプスブルク家の黄昏を生きたエリザベートが薄暗い空の下で微笑んでおります。
この両壁の間に立って、時代を彩ったお歴々の肖像画をぐるっと眺めますと、栄枯盛衰という言葉が頭に浮かんでくるのでございました。
あと一回だけちょろっと続きます。
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