のろや

善男善女の皆様方、美術館へ行こうではありませんか。

シュレックのこと

2010-10-03 | 映画
本日は
ウィリアム・スタイグの命日でございます。

誰だか知らんって。
ええ、ワタクシも存じませんでしたが、映画『シュレック』の原作となった絵本『みにくいシュレック』の作者さんでございます。2003年、95歳で老衰のため死去ということでございますから、大往生と申せましょう。

で、シュレック。
再三申しておりますように、ワタクシこのシリーズの4作目が公開されたら劇場に足を運ぶつもりではありますが、作品の出来にはいささかの不安を抱いております。ストーリーもギャグも全てにおいて薄味であった全作『シュレック3』に、少なからずがっかりさせられたからでございます。中でも最も残念だったのは悪役の物足りなさでございまして、これについては以前当ブログでくだくだ述べさせていただきました。
『シュレック3』 - のろや

エンターテイメント作品は悪役がキモでございます。
最新作でもワタクシが一番気にかけておりましたのは悪役のキャスティングでございます。今回の悪役は...



ルンペルシュティルツヒェン!おおっとこいつぁ期待できそうだ!
しかも



巻き舌!!
いいですね。くらっと来ますね。

ルンペルシュティルツヒェンという奴は要するに、ドイツ版「大工と鬼六」の鬼六でございます。
かいつまんで申しますとこんなお話。
難題を仰せつかって困っている娘が不思議な小人に助けてもらい、王様と結婚する。数年後、王子を授かった所へ小人がまた現れて、三日の間に自分の名前を当てられなかったら、あの時の代償として生まれたばかりの王子をもらって行くと告げる。八方手を尽くしても小人の名前は突き止められず、絶望する王妃。そこへ王様が外出から帰って来て、山の中で「おいらの名前はルンペルシュティルツヒェ~ン♪」と歌っている変な小人(ああ馬鹿)を見かけたと言う。さてその晩小人がやって来て、
「そんじゃ名前を当ててみな。3回だけチャンスをやるよ」
「ええと...カールかしら?」
「はい~はずれ~。あと2回」
「それなら、ハンスかしら?」
「ブッブー。あと1回ねキヒヒ」
「お前の名前はルンペルシュティルツヒェンだあ!!」
「うっきゃーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!
というわけで、ルンペルシュティルツヒェンは悔しさのあまり自分の身体を引き裂いて死んでしまいましたとさ。
めでたし、めでたし。

子供をよこせというルンペルもまあひどいのですが、わざと間違えてルンペルの期待をあおる王妃様もたいがいなご性格の持ち主ではあります。

しかしどうです、「人の苦境につけ込んで恐ろしい契約を交わす」という悪の古典ともいうべき卑劣行為を演じてくれる、とはいえちょっと間抜けなルンペルシュティルツヒェン。シュレックシリーズ最後の悪役としては大いに期待が持てるではございませんか。

ちなみに「ルンペルシュティルツヒェン」はドイツ語読みでございます。英語圏では「ランプルシュティルスキン」となるらしく、『シュレック4』ではこの名前で紹介されております。またこのルンペル氏は挿絵などによく見られる、白いあご髭を垂らした老人という従来のイメージよりも大分若作りでございます。これはおそらく、
・爺さまにすると容貌が邪悪になりすぎるおそれがある
・爺さまが王位についても「これから先ずっとこいつの天下が続く」という危機感がない(ぶっちゃけた話、数年の辛抱)
・いくら邪悪な爺さまでも、ご老体をこてんぱんに痛めつけてハッピーエンドというのは絵的によろしくない
以上の理由からかではないかと。

若作りの理由はどうあれ、トレーラーを見るかぎりではこのルンペル、憎々しい表情といい、TVショッピングさながらのソフトでうさんくさい喋り方といい、王になったとたんにロココ調の衣装に身を固めてカツラまでかぶり出す調子の良さといい、悪役として実に魅力あるキャラクターとなっております。映画よりもトレーラーの方が面白かったという現象は往々にしてあることなので期待しすぎるのは禁物とはいえ、ワタクシとしては魅力的な悪役を見かけるとワクワクせずにはいられないのでございます。
ああ楽しみだ『ルンペルシュティルツヒェン』。じゃないや『シュレック4』。