のろや

善男善女の皆様方、美術館へ行こうではありませんか。

あいちトリエンナーレ・レポ3

2010-09-22 | 展覧会
名古屋市内にいくつかある会場のうち、ワタクシが行ったのは愛知芸術文化センター、名古屋市美術館、そして納屋橋会場の3つだけでございます。その限りでのことではありますが、映像作品や映像を使ったインスタレーション作品がずいぶん多いようでございました。

さきにご紹介した Staging silence をはじめ、ビデオアートはテクノロジーを利用した表現という点でも、物体としての空間的広がりを持たないという点でも、その手法自体がいかにも現代的なものでございます。
そんな中、大きさと素材感、そして造形性という空間的・直接的な要素に訴えることによって圧倒的な存在感を放っていたのがジャン・ホァン Zhang Huan の ”HERO"でございます。こちらの写真で大きさのほどがお分かりいただけるかと。

泥まみれの巨人のようなものが、展示室いっぱいに足を投げだして座っております。右肩には子どもらしきものがくっついており、膝はむくむくと膨れ上がって今しも何かが生れ出てこようとしております。近づいてみると、泥のように見えたまだら模様は何枚も張り合わされた牛の毛皮でございました。白や黒や茶色のつやつやとした、しかし尻尾や蹄もついたままの毛皮が、むき出しの針金で固定されている親子像。荒々しさと生物のぬくもりとが混在する作品を前にして、恐ろしいような、慕わしいような、何とも名状し難い感覚に襲われました。
たまたま一団をひき連れてやって来た解説ボランティアさんの話によると、発掘された太古の神をイメージしているのだとか。確かに、見る者のプリミティブな部分に訴えて来る作品でございました。

ジャン・ホァン氏は国立国際美術館で昨年開催された『アヴァンギャルド・チャイナ』にも出展しておられました。こちらは映像作品だったのでございますが、アーティスト自身が取り組むほとんど苦行か人体実験のようなパフォーマンスには、やはり強烈なインパクトがございました。
『アヴァンギャルド・チャイナ』 - のろや

芸術文化センター地階のミュジアムショップに作品集があったので少々立ち読みさせていただきましたが、立体もパフォーマンスも、ただもう凄いのひと言でございます。こんな力のあるアーティストの作品をじかに、しかも同時代に見られるのはまことに幸せなことでございます。

本人のHPでドローイングや版画作品も見ることができます。ううむ、これまたいい。

次回に続きます。