のろや

善男善女の皆様方、美術館へ行こうではありませんか。

『大脱走』

2010-09-04 | 映画
ゲシュタポ「いい旅を」
マクドナルド「ありがとう」
のろ「うわあああああああああ!」


というわけで

TOHOシネマズの午前十時の映画祭で『大脱走』を観てまいりました。

1年間に渡って往年の名作映画を上映するというこの素晴らしい企画において、ワタクシが最も楽しみにしていたのが『羊たちの沈黙』と『大脱走』でございます。この2作品を大スクリーンで観られるとは。もはや死んでも思い残すことはないや。
とはいっても来月には『第三の男』や『アマデウス』が控えているし、バスター・キートン作品を劇場で観る機会にはまだ恵まれていないし、マーク・ストロングの出演作がこれから続々公開されることだし、4年後のワールドカップブラジル大会にクローゼが出場するかどうか大変気にかかっていることだから、やっぱりまだ死ねないや。

それにしてもこの企画のサブタイトルである「何度見てもすごい50本」という言葉は全く本当のことでございますね。いいものは何度観てもいいもんでございます。のろはおそらく『羊たちの沈黙』を通しで20回以上は鑑賞しておりますが、どういうタイミングでどんな展開が待ち受けているかがよく分かっていてもなお、手に汗握ってしまうのでございますよ。
『大脱走』でも、捕まってしまうことが分かっていても、バイクで疾走するマックイーンや町中を逃げ回るリチャード・アッテンボローを全力で応援してしまうのでございますよ。ううむ、DVD欲しくなってきた。

大脱走 予告編 (日本版・DVD用)



コミカルな場面、シリアスな場面、どこを取っても名シーンの連続という作品ゆえ、観るたびごとに新たな魅力がございます。今回とりわけ印象に残ったのは、トンネルから出た土の「処理屋」であるアシュレーが死ぬシーンでござました。
司令塔として数々の脱走を指揮してきたロジャー(リチャード・アッテンボロー)と彼の右腕のマクドナルド(ゴードン・ジャクソン)がゲシュタポに捕えられそうになった時、自らゲシュタポの注意を引き付けて射殺されるアシュレー(デヴィッド・マッカラム)。
駅の検問でゲシュタポがロジャーに気付く、アシュレーがそいつに飛びかかる、騒然とする民間人たち、混乱に紛れて脱出するロジャーとマクドナルド、「そこをどけ!」というゲシュタポの怒号で一斉に伏せた人々の間をただ一人逃げ走るアシュレー、銃声、倒れる、転げる、ホームから線路の上によろよろと倒れ込んで息絶える。
素晴らしい演出に、デヴィッド・マッカラムの可憐な風貌も相まって、まことに鮮烈でございました。

しかしまあ、この映画は何と言ってもスティーヴ・マックイーンでございましょう。
学生の時、バイク乗りでマックイーン好きの先輩は「女との絡みがあってこそのマックイーンだ。故に『大脱走』での奴はイマイチである」とおっしゃっておいででした。(ちなみに先輩のイチ押しは『華麗なる賭け』)しかしワタクシとしてはやっぱり、マックイーンがいっとうカッコイイのは『大脱走』なのでございます。「狂ってる」と評されるほどの輝かしい脱走歴を誇るマックイーン、敵兵から奪ったバイクで牧草地をひた走るマックイーン、大脱走マーチに乗って意気揚々と独房へ行進するマックイーン、そして懲りた様子もさらさらなく、泥だらけ傷だらけの顔で、またも独房の壁を相手にキャッチボールを繰り返すマックイーン。先輩にゃ悪うござますが、スーツ姿の銀行強盗マックイーンよりもこっちのがずうっと男前だと思いますよ。

というわけで、帰り道ではすっかりマックイーン気分で自転車のハンドルを握り、無駄にあっちこっち見回しながら道を渡ったりしておりました。ええ、馬鹿なもので。