読書な日々

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『チェンジング・ブルー』

2009年01月31日 | 自然科学系
大河内直彦『チェンジング・ブルー』(岩波書店、2008年)

チェンジング・ブルーなんてタイトルを見ても何のことか分からないと思うが、サブタイトルに気候変動の謎に迫るとあり、最近かまびすしい地球温暖化をめぐる最先端研究から見た地球規模の気候変動の過去を解明し、将来の気候変動を知るための本であることが分る。といってもけっして一般大衆向けの啓蒙書というほど読みやすいものではなくて、まぁ大学でこれからこの方面の研究を専門に勉強してみようかという学生レベルの知識を持った人を対象に書かれていると思ったほうがいい。けっこう専門用語なんかも出てきて、読みやすいものではなかった。

私が地球規模での気候変動に関心があるのは、いうまでもない、昨今の二酸化炭素排出による地球温暖化というキャンペーン(まるで私たちが生きるために必要としている呼吸さえ地球温暖化を後押ししているような脅迫的言説の繰り返しに少々腹を据えかねている)に疑問を持っているからである。本当に二酸化炭素の排出が地球を温暖化させ、地球を破滅に導こうとしているのか、本当に疑問であるからだ。

地球の気候変動が現在把握できる限度である60万年前から現在にいたるあいだで、定期的に寒暖を繰り返していることが認められている。その原因もいくつかあって、地球の公転が楕円形であるために必ずしも太陽と地球の距離が一定ではなく10万年くらいの周期で変動していることや、地球の自転軸の傾きが木星のような巨大な惑星の影響などからぐらついておりその傾きが一定でないことなどが、長期的な気候変動に影響していることははっきりしている。そういった大きな規模の変動やその他酸素同位体比などの調査から、現在の地球は40年前の地球とよく似た状態、つまり間氷期の頂点、いいかえれば地球温暖期の頂点にあることが分る。すでに1万年にわたって温暖な時期がすぎており、あちこちで起きている氷床の崩壊や氷河の貧弱化というような現象はそうした長期にわたる温暖化の結果であって、二酸化炭素が増えた結果などではないことは容易に想像できるはずだ。

したがって、これから百年の単位で寒冷化していくことが予想されるのだ。しかし一直線に寒冷化するわけではなく、日本の季節と同じで三寒四温のごとく、何度もゆり戻しをしながら、寒冷化して行く。

それにしてもこの本を読むと、地球の気候変動に深層水が大きな影響を持っているとか寒冷期には二酸化炭素が減るとかいろいろなことが分ってきているにもかかわらず、「なんでそうなるの!」ということがまるで分っていないのだ。グリーンランド沖に深層水ができるところがあるらしいのだが、それはメキシコ湾で水分が蒸発して塩分濃度が濃くなった海水がこのあたりで深く沈むからで、ところが氷床が解けて真水が大量に流れ込むと塩分濃度が薄くなって深層水ができなくなる、その結果、深層水の流れが止まると、北緯の高いところの大気に熱が供給されなくなり、今度は寒冷化することになるというのだ。だが、なぜそんなことが起きるほどの氷床の溶解が起きるのか、ここのところはまったく説明してくれない。しかし普通に考えたら、氷床が解けるなんて事態はよほどの温暖化が長期にわたって起きたということからしか説明できないのではと思う。つまり温暖化して氷河が解けて海水の塩分濃度を薄くする→深層水の動きがとまる→寒冷化する→氷河が形成されるというサイクルが見えてくるだろう。もしそうなら昨今北極の氷山が溶けていることや高山の氷河が細っていることを指して世も末のようなことを言っているが、1万年続いた間氷期がこれで終わろうとしていることを示しているだけのことではないか。

なんかこの本、たしかに面白いところもたくさんあるのだが、現在あれこれ言われている温暖化問題にどのようなスタンスで書いているのかまったく不明で、八方美人的な書き物になっていることに少々腹立ちを感じる。よくまぁ岩波書店がこんな本を出したものだとあきれる。

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