中島さおり『なぜフランスでは子どもが増えるのか』(講談社現代新書2052、2010年)
フランス人の恋愛・仕事・子育てを主題にした本が最近よく目につくようになった。日本の出生率がついに1.3くらにまで下がったのに対して、フランスは1995年の1.6を下げ止まりにして、今や2.1くらいまで上昇して、移民に頼らなくても国が維持していけるような状態にまで蘇ったことが、また働くとか恋愛をするということが、どうやら日本やアメリカなどともずいぶんと違うらしいということが分かってきたことで、日本人の関心がこういう方面にも向くようになってきたことを意味しているのだろう。
一般的に日本人は恋愛をして、結婚をして、子供を作ってという経緯をたどる。恋愛と結婚のあいだに同棲という一時的な状態がある人もあるだろうが、たぶん少数派だろう。また恋愛中に子供ができたら、結婚してしまうことがほとんどだ。いわゆる出来ちゃった婚というやつ。ところがフランスでは、恋愛から結婚というのが少数派になりつつある。また子供ができても結婚しない人も多い。結婚しても、日本のように、女性の姓が夫の姓になることもあまりないので、外見的には、結婚しているのかしていないのか分からないケースも多い。
なぜフランス人女性は結婚しないのか、結婚しなくても、法律的には結婚しているのとほぼ同じ状態にあるし、逆に結婚すれば、離婚するときに心身ともに大変な苦労をしなければならないことが分かっているから、結婚しない。また結婚していようと、していなくても(つまり嫡出子であろうと、非嫡出子であろうと)子供が差別を受けることもない。
でも結婚している方が税金や転勤なんかで保護されるのではと思うかもしれないが、そういうこともない。そうした特典を得るにはパックス法(市民連帯法)を使って、申告しておけば、そうして特典も得られる。
つまりフランスでは、結婚によって得られる利益、結婚していないことによって受ける不利益が、限りなくゼロに近い社会であると言える。
こうした理想的な男女平等の関係を保証しているのは、20歳代から50歳代の労働力人口にあたる女性たちの80%が仕事をしているという経済的自立にあると言える。経済的に自立しているから、夫に縛られずに好きなように生きていける。
さらに、なんといっても1970年くらいまでカトリックの縛りがものすごくきつかったことの反動なのだろう。カトリックでは離婚も妊娠中絶も避妊も認められなかった。そのために、妊娠中絶をするために、非合法で手術を受けて、母子ともに不幸な目にあうというようなこともたくさんあった。ところが、1970年前後にピルの解禁、協議離婚、妊娠中絶法などが矢継ぎ早やに起きて、いまや半数以上のフランス人女性はピルを常用して、自分の意志で出産を決めれるようになっている。
この本は、そういうことについて、恋愛という視点や、子育ての視点や、労働という視点などから、著者自身が体験したことも含めて、分かりやすく書いている。最初は「フランス人女性の歴史」みたいな教科書的なものにしようかとも思ったけど、やめた、と書いているように、教科書的でないところが、読みやすさ、親しみやすさを強めている。教科書的でなくてよかったと私も思う。こういう問題を教科書的に書いたものほど退屈なものはない。フランスで有名なクセジュ文庫がまったくおもしろくない理由はそこにある。
それにしても日本の出生率の低下はもう歯止めがかからなくなっている。フランスを見習えなんて言わないが、どうしてフランスの出生率が増えているのか考えて見る必要はあると思う。非嫡出子への財産分与が嫡出子と差別がなくなったなんてのがつい最近なんてのを見ると、お先真っ暗としか言いようがない。その異論が「不倫を助長するのか」というのだから。
この著者はこんな本も書いている。
フランス人の恋愛・仕事・子育てを主題にした本が最近よく目につくようになった。日本の出生率がついに1.3くらにまで下がったのに対して、フランスは1995年の1.6を下げ止まりにして、今や2.1くらいまで上昇して、移民に頼らなくても国が維持していけるような状態にまで蘇ったことが、また働くとか恋愛をするということが、どうやら日本やアメリカなどともずいぶんと違うらしいということが分かってきたことで、日本人の関心がこういう方面にも向くようになってきたことを意味しているのだろう。
一般的に日本人は恋愛をして、結婚をして、子供を作ってという経緯をたどる。恋愛と結婚のあいだに同棲という一時的な状態がある人もあるだろうが、たぶん少数派だろう。また恋愛中に子供ができたら、結婚してしまうことがほとんどだ。いわゆる出来ちゃった婚というやつ。ところがフランスでは、恋愛から結婚というのが少数派になりつつある。また子供ができても結婚しない人も多い。結婚しても、日本のように、女性の姓が夫の姓になることもあまりないので、外見的には、結婚しているのかしていないのか分からないケースも多い。
なぜフランス人女性は結婚しないのか、結婚しなくても、法律的には結婚しているのとほぼ同じ状態にあるし、逆に結婚すれば、離婚するときに心身ともに大変な苦労をしなければならないことが分かっているから、結婚しない。また結婚していようと、していなくても(つまり嫡出子であろうと、非嫡出子であろうと)子供が差別を受けることもない。
でも結婚している方が税金や転勤なんかで保護されるのではと思うかもしれないが、そういうこともない。そうした特典を得るにはパックス法(市民連帯法)を使って、申告しておけば、そうして特典も得られる。
つまりフランスでは、結婚によって得られる利益、結婚していないことによって受ける不利益が、限りなくゼロに近い社会であると言える。
こうした理想的な男女平等の関係を保証しているのは、20歳代から50歳代の労働力人口にあたる女性たちの80%が仕事をしているという経済的自立にあると言える。経済的に自立しているから、夫に縛られずに好きなように生きていける。
さらに、なんといっても1970年くらいまでカトリックの縛りがものすごくきつかったことの反動なのだろう。カトリックでは離婚も妊娠中絶も避妊も認められなかった。そのために、妊娠中絶をするために、非合法で手術を受けて、母子ともに不幸な目にあうというようなこともたくさんあった。ところが、1970年前後にピルの解禁、協議離婚、妊娠中絶法などが矢継ぎ早やに起きて、いまや半数以上のフランス人女性はピルを常用して、自分の意志で出産を決めれるようになっている。
この本は、そういうことについて、恋愛という視点や、子育ての視点や、労働という視点などから、著者自身が体験したことも含めて、分かりやすく書いている。最初は「フランス人女性の歴史」みたいな教科書的なものにしようかとも思ったけど、やめた、と書いているように、教科書的でないところが、読みやすさ、親しみやすさを強めている。教科書的でなくてよかったと私も思う。こういう問題を教科書的に書いたものほど退屈なものはない。フランスで有名なクセジュ文庫がまったくおもしろくない理由はそこにある。
それにしても日本の出生率の低下はもう歯止めがかからなくなっている。フランスを見習えなんて言わないが、どうしてフランスの出生率が増えているのか考えて見る必要はあると思う。非嫡出子への財産分与が嫡出子と差別がなくなったなんてのがつい最近なんてのを見ると、お先真っ暗としか言いようがない。その異論が「不倫を助長するのか」というのだから。
この著者はこんな本も書いている。