読書な日々

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『ショウコの微笑』

2020年02月01日 | 韓国文学
チェ・ウニョン『ショウコの微笑』(クオン、2018年)

前回読んだ『ヒョンナムオッパへ』という短編集で「あなたの平和」という作品を書いていたチェ・ウニョンさんの短編集である。

高校の交流事業で、自宅にホームステイさせたことで知り合った日本人女子高生のショウコとの10年来の関係を描いた「ショウコの微笑」、韓国のベトナム戦争参戦という過去を描いた「シンチャオ、シンチャオ」、フランスの修道院にボランティアとして長期に滞在したときに知り合ったケニアの青年との突然の断絶を描いた「ハンジとヨンジュ」、大学時代の先輩ミジンが留学していたロシアのサンクトペテルブルクを訪れて、ミジンのルームメイトであったポーランド人女性ユリアから、先輩ミジンの生き方を知ることになる「彼方から響く歌声」、夫と娘のために働き続けてきた「母」と「娘」のすれ違いを、ローマ教皇の訪韓のにぎやかな町の様子にからませて描いた「ミカエラ」など。

どれもこれも、読んでいるこちらの心が陰鬱になってくる作品ばかりで、最近ではこういう作品に人気があるのだろうかと疑問に思うし、もしそうだとするならば、理由が私にはまったくわからない。

とくに「ショウコの微笑」は2013年の文芸誌の新人賞を獲得したそうだし、2016年に出たこの短編集もベストセラーになったという。

「ショウコの微笑」は、語り手の韓国人女性ソユが、高校の交流事業で自宅に、日本人女子高生のショウコをホームステイさせたことで知り合う。ショウコとソユは英語で会話するしかなかったが、ソユの祖父は日本統治時代を経験しており日本語が話せるので、日本語で会話した。普段は厳しい祖父がショウコとはにこやかにいろんなことを話すことに、違和感を感じる。

帰国するとショウコからソユには英語の、祖父には日本語の手紙が定期的に来ていたのに、ある時、祖父のせいで東京の大学に進学できなくなったという手紙を最後に、文通は途絶えた。やがて大学生になったソユは、日本に来てショウコの家を訪ねる。そこにいたショウコは、うつ病で、薬のせいでぼっとしたショウコで、まともに話もできないまま、韓国に帰る。その時、ソユが感じたものは優越感であった。

また年月が経って、今度はソユのほうが映画監督になるという夢を追い続けた結果、精神的にも経済的にも追い詰められて引きこもりになる。そしてそこへ元気になったショウコが訪ねてくる。

この作品の登場人物は四人でソユと祖父、ショウコと祖父というようにまったくの相似形をしており、いわばショウコと祖父はソユと祖父の鏡に写った姿のようなものとして描かれている。こういう構成を作ることでいったいどういう効果を狙ったのか、どんな意味をもたせようとしたのか、私にはよくわからない。日本の現実も韓国のそれも似たようなものだということなのか?うつ病になっているショウコを見てソユが感じる優越感を相対化したいということなのか?

最近続けて二冊の韓国小説(どちらも女性作家のもの)を読んだが、どれもこれもあまりの陰鬱さに、しばらくそちらには気持ちが行かないと思う。

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