法話メモ帳より
第十六代大統領リンカーン(1809 ―1865)の父は靴職人だった。当時、上院はすべて上流階級の人で大富豪で占められていた。リンカーンが就任式で行なった最初の演説は、はじまると、ある男が立ち上げり傲慢で尊大な態度で語りはじめた。
「リンカーン氏よ、あんたは偶然にも大統領になってしまった。だが、あんたの父親が靴職人だった。実を言うと、あんたの父親はよく私の家に家族全員の靴をつくりにきていた。この靴だってあんたの父親がつくったものだ」
上院全体が笑いのうずに巻き込まれた。リンカーンは目に涙を浮かべながら言った。
「あなたが父のことを思い出させてくれたことに大いに感謝します。彼は完璧な靴職人でした。そして私は、自分がそれほど完璧な大統領にはなれないことをよく承知している。私には彼を打ち負かすことなどできません。でも私は、少なくとも彼の偉大さに近づくための最善の努力をするつもりです」「あなたの家族のために父が靴をつくっていたということに関して、私は全上院のみなさんに申し上げておきたいのですが、私の父が靴をつくっていた上流階級の家庭がまだほかにもあるかもしれません。父は私に、少しであるが靴つくりの技術を教えてくれた。もしあなたの靴の調子があまりよろしくないか、窮屈すぎたり、ゆるすぎたりしていたら私がいつでもお直しします。私は、その父の息子です。どうか気後れなどなさらず、ご一報ください。いつでも私は自分の最善をつくしにうかがいましょう」。その瞬間、すべての嘲笑が真摯な拍手に変わった。(以上)
人間の傲慢さは、まじわりのない心によって打ち砕かれるようです。
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