オールドゲーマーの、アーケードゲームとその周辺の記憶

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富士電子工業(FDEK)のダイスゲームとその後

2021年10月17日 17時47分17秒 | メーカー・関連企業

富士電子工業(FDEK)は、千葉県市川市にある電子機器メーカーです。メダルゲーム分野では、かねてよりsigmaと密接な関係にあり、sigmaの代表作とも言うべき「ザ・ダービーMK III」(関連記事:sigma「THE DERBY」シリーズの系譜メモ (と、GWに伴う更新スケジュール変更のお知らせ)の製造を担ったのみならず、これを海外のカジノ仕様とするにあたってはsigmaによってネバダ州のメーカーライセンスを取得させられたとも聞いています。

などと知った風なことを言ってはいますが、ワタシはそれ以外の、例えばsigmaとのそもそものなれそめや関与してきた他の製品などについては殆ど知りません。sigmaから発売された製品で、富士電子工業の名前が対外的に明示されたのは、1990年に発売された「ダイスポーカー・コロコロ」のフライヤーが初めてではないかと思います。その二つ折り4ページのフライヤーの裏表紙には、富士電子工業の名が記載されています。

ダイスポーカー・コロコロの筐体(上)と、裏表紙の部分。製造元として富士電子工業の名が記載されている。

「ダイスポーカー・コロコロ」は、5個のダイスを振って出た目で成立するポーカーの手を予想する、6人用のメダルゲーム機でした。プレイフィールドの四方は急な坂になっており、このうちの一辺の上部から5個のダイスが放出され、坂を転がり落ちて青色のプレイフィールドに落ちて行きます。

ダイスポーカー・コロコロのプレイフィールド(上)とサテライトのコントロールパネル(下)。いずれもフライヤーより。

この当時、RFIDや画像認識と言った技術は既にありましたが、それらはまだ発展途上段階だったので、5個ものダイスの目を識別するだけでも驚きでした。おまけにプレイフィールド上で二個のダイスが重なっても正しく識別したという経験談も聞いて、一体どうやってダイスの目を識別しているのかと大いに不思議でした。

その後、ダイスポーカー・コロコロのダイスは、必ず特定の目しか出ないように重心を狂わせてあると、さる業界の人から教えてもらいました。なるほど、そうであれば、次のゲームで振るダイスを機械内部でセットした時点でゲームの結果は決まっているわけで、プレイフィールド上のダイスの目を識別するような技術は必要ありません。そんな極端な重心の偏りでは転がり方が不自然になるのではないかと思いましたが、実際には特に怪しげな動きは見られませんでした。(2021年10月18日追記:ご高覧くださった「メカさん」と言う方から、コメント欄にて「重心ではなく磁力で必ずその目が出るサイコロでした」とのご指摘をいただきました。メカさん、どうもありがとうございました。今後も貴重なお話をお聞かせください。)

この「ダイスポーカー・コロコロ」を境に、富士電子工業は自社ブランドで製品の発売を始めていくのですが、実はこの辺りの富士電子工業の製品とsigmaの関係の認識があやふやです。もし、「トップダイス」と「SLOT倶楽部」の発売年をご存じの方がいらっしゃいましたら、ぜひともご教示いただけませんでしょうか。

トップダイス(上)とSLOT倶楽部(下)のフライヤー。

富士電子工業は、その後「ダイスポーカー・コロコロ」で確立したダイスの仕組みを使ったシングルメダル機を多く作って、いずれもそこそこヒットしていたように思います。しかしそれもいつしか飽きられ、ダイスとは全く関係ない「宇宙カプセル6」というメダル機(これはこれで、よく考えられた機械だと思う)を作って以降は、子供向けシングルメダル機を多く作るようになり、残念ながらワタシの興味の対象から外れていってしまいました。

宇宙カプセル6のフライヤーの表(上)と裏(下)。