Gottliebのアーティスト三人目は、「ゴードン・モリスン(Gordon Morison、以降ゴードンとする)」です。ゴードンは、1969年の遅い時期に、既にクリスが所属していた「Advertising Posters」に、Gottlieb専任として雇われました。クリスは、「ゴードンとはいつも隣同士で仕事をしていた。我々はそれを好んでいたし、互いにアイディアを相談し、たいへん尊敬しあっていた」と言っています(「The Pinball Compendium: 1970 -1981」に掲載されたクリスへのインタビューによる)。これは、前々回に紹介したMardi-Gras-Man氏の言葉とも符合します(Mardi-Gras-Man氏がこのインタビューを読んでいた可能性もありますが)。
ゴードンは、アートと入れ替わるかのようなタイミングで、「ポインティ・ピープル」全盛の1971年からSS機が完全に普及する1980年までの10年間でおよそ150機種(別バージョン含む)のアートを担当しています。作風はいくつかあり、それらはタイプ別に分けられそうにも思うのですが、ワタシにはそれを的確に分析するだけの技量がありません。ここでは、主にゴードンがデビューした1971年から最後のポインティ・ピープルが描かれた1974年の間の作品を、思いつくままに分類して例示しておこうと思います。
第一のタイプは「サイケ調」です。ゴードンは、デビュー直後の1971年に「Now」と「4 Square 」の2作を描き、また1974年には「Out Of Sight」を描いています。
サイケ調の例。掲載順に、「Now (1971)」、「4 Square (1971)」、「Out Of Sight (1974)」。
サイケデリック・ムーブメントが流行ったのは70年代の前半くらいまででしたが、ゴードンはその後も「Canada Dry (1976)」や「Strange World (1978)」のように、「現代風にアレンジされたサイケ」とも言えそうな画風をしばしば描いています。
第二のタイプは、コミカルなアメコミ調です。このタッチの作品はゴードンのキャリアの前半に多く、また1973年以前の作品には極限まで短いミニスカートの若い女性が描かれることが多いです。
コミカルなアメコミ調の例。掲載順に、「Sheriff (1971)」、「King Cool (1972)」、「Jack In The Box (1973)」。
この作風は、1976年以降になると、「Neputune (1978)」や「Count Down (1979)」に見られるように、後述の「シリアスなアメコミ調」とのハイブリッドのようになっていきます。
第三のタイプは、おそらくゴードンの全キャリアを通じて最も多いと思われる、人物の陰影を意識したシリアスなアメコミ調です。この画風はデビュー作の「2001 (1971)」から見られますが、「ポインティ・ピープル」の全盛期だった1974年まではあまり多くはありません。しかし、1975年以降から徐々に増えていきます。
シリアスなアメコミ調の例。掲載順に、「2001 (1971)」、「High Hand (1973)」、「Sky Jump (1974)」。
1975年以降は、「Atlantis (1975)」や、「Centigrade 37 (1977)」のように、よりわかり易い例が増えてきます。
ゴードンが描くテーマには、近未来、宇宙、ロボット、メカ、神話、魔法など、パルプマガジンにありそうなSFやファンタジーが大変多く、アメコミ調の絵はそれらと親和性が高かったのだと思います。
またゴードンの特徴に、絵のハイライト以外の人物を単色で彩色するという手法がしばしば見られますが、これは、前任者であるアートが「Crescendo (1970)」で採っている手法です。
周辺人物を単色で彩色している例として、「King Pin (1973)」(上)と、前回の記事に掲載した「Crescendo (1970)」(下)の比較。
「Crescendo」は、アートの作風としてはかなり異質で、人物のタッチを除けばむしろゴードンの作風に近いようにも思えます。これは果たして、ゴードンがアートの影響を受けたのか、それともゴードンがアートに協力していたのか(時系列的にはあり得ないことではない)、あるいは全く関係ないのか、現時点では全く見当が付きません。ここでまた一つ新たな謎が出てきてしまいましたが、今までの調査で、アートとゴードンの接点に関する記述は全く見つけられていないため、今回はこれ以上追及しません。
他人様からいただいたアレンジボールのフライヤー画像から始まった、ワタシの長年の謎を解き明かす調査の記録は以上で終了です。思いがけず長引いてしまいましたが、なんとか年内に完結させることが出来ました。ご高覧くださっている皆様にとって、来年も良い年となりますようお祈り申し上げます。
(このシリーズおわり)
ゴードンは、アートと入れ替わるかのようなタイミングで、「ポインティ・ピープル」全盛の1971年からSS機が完全に普及する1980年までの10年間でおよそ150機種(別バージョン含む)のアートを担当しています。作風はいくつかあり、それらはタイプ別に分けられそうにも思うのですが、ワタシにはそれを的確に分析するだけの技量がありません。ここでは、主にゴードンがデビューした1971年から最後のポインティ・ピープルが描かれた1974年の間の作品を、思いつくままに分類して例示しておこうと思います。
第一のタイプは「サイケ調」です。ゴードンは、デビュー直後の1971年に「Now」と「4 Square 」の2作を描き、また1974年には「Out Of Sight」を描いています。
サイケ調の例。掲載順に、「Now (1971)」、「4 Square (1971)」、「Out Of Sight (1974)」。
サイケデリック・ムーブメントが流行ったのは70年代の前半くらいまででしたが、ゴードンはその後も「Canada Dry (1976)」や「Strange World (1978)」のように、「現代風にアレンジされたサイケ」とも言えそうな画風をしばしば描いています。
第二のタイプは、コミカルなアメコミ調です。このタッチの作品はゴードンのキャリアの前半に多く、また1973年以前の作品には極限まで短いミニスカートの若い女性が描かれることが多いです。
コミカルなアメコミ調の例。掲載順に、「Sheriff (1971)」、「King Cool (1972)」、「Jack In The Box (1973)」。
この作風は、1976年以降になると、「Neputune (1978)」や「Count Down (1979)」に見られるように、後述の「シリアスなアメコミ調」とのハイブリッドのようになっていきます。
第三のタイプは、おそらくゴードンの全キャリアを通じて最も多いと思われる、人物の陰影を意識したシリアスなアメコミ調です。この画風はデビュー作の「2001 (1971)」から見られますが、「ポインティ・ピープル」の全盛期だった1974年まではあまり多くはありません。しかし、1975年以降から徐々に増えていきます。
シリアスなアメコミ調の例。掲載順に、「2001 (1971)」、「High Hand (1973)」、「Sky Jump (1974)」。
1975年以降は、「Atlantis (1975)」や、「Centigrade 37 (1977)」のように、よりわかり易い例が増えてきます。
ゴードンが描くテーマには、近未来、宇宙、ロボット、メカ、神話、魔法など、パルプマガジンにありそうなSFやファンタジーが大変多く、アメコミ調の絵はそれらと親和性が高かったのだと思います。
またゴードンの特徴に、絵のハイライト以外の人物を単色で彩色するという手法がしばしば見られますが、これは、前任者であるアートが「Crescendo (1970)」で採っている手法です。
周辺人物を単色で彩色している例として、「King Pin (1973)」(上)と、前回の記事に掲載した「Crescendo (1970)」(下)の比較。
「Crescendo」は、アートの作風としてはかなり異質で、人物のタッチを除けばむしろゴードンの作風に近いようにも思えます。これは果たして、ゴードンがアートの影響を受けたのか、それともゴードンがアートに協力していたのか(時系列的にはあり得ないことではない)、あるいは全く関係ないのか、現時点では全く見当が付きません。ここでまた一つ新たな謎が出てきてしまいましたが、今までの調査で、アートとゴードンの接点に関する記述は全く見つけられていないため、今回はこれ以上追及しません。
他人様からいただいたアレンジボールのフライヤー画像から始まった、ワタシの長年の謎を解き明かす調査の記録は以上で終了です。思いがけず長引いてしまいましたが、なんとか年内に完結させることが出来ました。ご高覧くださっている皆様にとって、来年も良い年となりますようお祈り申し上げます。
(このシリーズおわり)