今を去る事6年前の2011年、当時のG2Eを見た私は、ノートに、「ビデオスロットはその伸び得る方向を急速に消費し尽くしつつあり、発展の可能性にも限界が見え始めている」と書き留めていました。そして今年の2017年、スロットマシンの進歩は、ソフト、ハード両面共にいよいよ限界に達し、本格的に手詰まりとなってきているように思われます。
今後の新たな方向性として期待されている「スキルベースドゲーミング」や「バーチャルリアリティ」も、現段階ではまだ模索の域を出ておらず、成功を予感させるレベルにはありません。10年ほど前にトレンドとなりかけた、一つのバンクでゲームをしているプレイヤー全員でボーナスゲームを共有する「コミュ―ナルゲーム」が結局のところたいしたモノにはならなかったように、これらもそれと同じ運命をたどる可能性も決して低くはない(むしろ「高い」と言う方が適切か)と思います。
技術的な面でなく、ゲーム性で差別化することももちろん考えられます。アリストクラートなどはこの方向で一定の成功を収めていますが、しかしゲーム性の良し悪しを一目見ただけで理解させることは困難です。そこで、手っ取り早く注目を集めるために、既存の人気キャラクターを看板にする「IPモノ」に走るようになります。
IPの導入が盛んになってきたのは10年くらい前からのことですが、今回のショウでは、バーリーが映画「007」シリーズを大々的に取り上げているのがひときわ目立ちました。バーリーは、数ある「映画・007シリーズ」から複数のタイトルを採用し、ゲーム性の異なるスロットマシンにそれぞれ別の007シリーズの名を被せて発表してきました。過去にも、同じタイトルで複数の異なるゲームを同時に発売する例はありましたが、今回のバーリーはスロットマシンのシリーズと映画のシリーズを巧みに組み合わせるという、従来の単なる看板に留まるIP戦略とは一味違うヒネリを感じさせています。この辺は、さすがアイディアのバーリーと言うべきかもしれません。
バーリー(と言うかSGと言うか)が出展した007シリーズスロットマシン。左より「カジノロワイヤル」、「ゴールドフィンガー」、「ダイヤモンドは永遠に」をテーマとしており、それぞれゲーム内容は異なる。
SGはまた、ETG(Erectronic Table Game =電子ゲームテーブル)の開発にも力を入れていました。元々、バーリーに買収され、そのバーリーの買収に伴ってSGの子会社となったシャッフルマスター社が手掛けていた分野ですが、今回はバーリーのブランドで新しいETG「REVOLUTION REELS」が出展されていました。
SGの新しいETG機。5つの同心円に配されたカードでスタッドポーカーを行う。通常のポーカーハンドの他、ベットしたスーツのランクをブラックジャックの要領で加算してその点数の多寡によって配当が付くという賭けもある。
「REVOLUTION REELS」は、スロットマシンの変形ともルーレットの変形とも言えますが、スロットマシンにしてはゲーム結果が出るまでに時間がかかり、またルーレットほど単純なゲームでは無い点が気になります。
SGからもうひとつ、「REVOLUTION REELS」と同じ筐体を使用したビデオルーレット。メカを使わない分、故障が少ないとか筐体が小さくできるとかコストが安いという利点はある。ビジネスとしては合理的なのだろうけれども、このような電子ゲーム機器がスタンダードとなるまでには、まだ5年、あるいは10年単位の時間が必要ではないかと思う。
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ETGと言えば、最近のアルゼもこのジャンルに傾注しているようです。今回は新製品として、オートビッグシックス、オートルーレット、電子クラップステーブルが出展されていました。
●BIG WHEEL(オートビッグシックス)
7年前になる2010年のG2Eに出展し、現在のラスベガスでもそこそこ普及している「Big Wheel」のグレードアップ版です。従来品との大きな違いは、円盤の中央部分にモニターがある点です。ここで、ベット受付中から締め切り、ゲームの進行まで、ビジュアルに訴える演出が行われます。
このビッグシックスは、前作も今作も、とてもよくできていると思います。特に感心するのは、当りの目を指すクラッパー(clapper =当りの位置を指し示すベロのようなもので、アナログのビッグシックスでは皮とフェルトでできている。円盤が回転している間「バララララ」という特徴的な音を出す)の動きと、サウンドやグラフィックの演出がほぼ完璧にシンクロしている点です。一見なんということもなさそうに見えますが、全自動の機械で人の自然な感覚に違和感を感じさせず、かつ結果の判定を間違いなく行えるように作るには、かなり工夫の要ることだと思います。「神は細部に宿る」という言葉がありますが、このクラッパー部分には間違いなく神が宿っています。
今回のビッグホイール(上)と7年前のビッグホイール(下)。クラッパーとは、円盤の上部に見える、赤いベロのこと。プレイヤーがスロットマシンについているようなレバーを引くと回転を始める仕様は継承しているが、レバーの形は変わっていた。
●ROULETTE(オートルーレット)
オートルーレットはかなり古くからありますが、アルゼの機械は、頭上のビルボードに隠された投影機から、ルーレット盤全体にプロジェクションマッピングを行っていました。単に映像を投射するだけなら別に驚くこともないのですが、この機械では、投影する画像が回転盤の回転にシンクロして付いてきていました。もっとも、プロジェクションマッピングを行っているオートルーレットは他社でも出展されており、アルゼだけがすごいと言うわけではありません。
アルゼのオートルーレット。オートルーレットは、ゲーム中にプレイヤーがボールを取り上げるなどの不正ができないように、ルーレット盤の上には透明な材質の覆いが付くものだが、これはまだ試作段階と言うことで、覆いが無かった。盤内が美しくクリアに見えたのも、もしかしたらそれが関係しているかもしれない。
●CRAPS(電子クラップステーブル)
一見したところ、従来からあるアナログのクラップステーブルに見えますが、テーブルの内部は一面モニターとなっており、プレイヤーはテーブルの周囲に設置されたモニターからベットするようになっています。ゲームも、やはりアナログゲームと同じようにプレイヤーがダイスを振って出目を決定します。ダイスの目は自動的に識別されるわけではなく、一人の係員がコントロールパネルから入力し、各席はその結果に従って配当を払い出します。
クラップスというゲームを運営するには、通常はダイスを扱うスティックマン1人、チップの配置や配当を行うディーラー2人、それに審判を行うボックスマン1人の合計4人を要しますが、この電子テーブルならスティックマン1人でオペレートできます。カジノにとってはありがたいことなのかもしれませんが、人対人のコミュニケーションが希薄になってしまうのはさびしい気もします。また、ダイスの下が発光しているので、それが逆光となってダイスの目が見にくいと感じました。
電子クラップステーブル。中央の女性がスティックマンで、プレイヤーが投げたダイスの目を入力し、スティックでダイスを回収する。ただ、ゲーム結果の入力を間違えた場合のバックアップがないと聞いた。ダメじゃん、と思った。
電子クラップステーブルのレイアウト。ビデオなのでいろいろな演出ができるのは利点だろうけど、それが逆光となってダイスの上面が見にくい。
ワタシは、アルゼのスロットマシンは、その筐体デザインもグラフィックのセンスも大嫌いで、全くやる気がしないのですが、今回出展されていたこの3つに限れば、少なくとも雰囲気は良くできていると思いました。
今回のショウでは、アルゼはもう一つ、G2Eショウではたいへん珍しいコインプッシャーを出展していました。
①アルゼが出展していたコインプッシャー、「CASH CLOWN」。 ②プレイフィールドには、通常のトークンの他に、ルーレットを回したり、直接賞金になると思われるトークンがある。 ③ルーレット部分。黄色のトークンを落とすと回り、結果によってプレイフィールドにトークンが払い出されたり、クレジットが上がる。 ④WIN口を覗き込むと、落ちたメダルとトークンの選別機構が見える。
どんなところでの稼働を目指しているのかはよくわかりませんが、G2Eにプッシャーが出展されるのは珍しいことです。コイン以外の異物を自動的にプレイフィールドに補充するプッシャーは、日本のゲーセンではもはや当たり前ですが、海外ではまだ珍しいモノと思います。それにしてはあまり注目を集めているようには見えなかったのが残念です。
(もう一回つづく)
今後の新たな方向性として期待されている「スキルベースドゲーミング」や「バーチャルリアリティ」も、現段階ではまだ模索の域を出ておらず、成功を予感させるレベルにはありません。10年ほど前にトレンドとなりかけた、一つのバンクでゲームをしているプレイヤー全員でボーナスゲームを共有する「コミュ―ナルゲーム」が結局のところたいしたモノにはならなかったように、これらもそれと同じ運命をたどる可能性も決して低くはない(むしろ「高い」と言う方が適切か)と思います。
技術的な面でなく、ゲーム性で差別化することももちろん考えられます。アリストクラートなどはこの方向で一定の成功を収めていますが、しかしゲーム性の良し悪しを一目見ただけで理解させることは困難です。そこで、手っ取り早く注目を集めるために、既存の人気キャラクターを看板にする「IPモノ」に走るようになります。
IPの導入が盛んになってきたのは10年くらい前からのことですが、今回のショウでは、バーリーが映画「007」シリーズを大々的に取り上げているのがひときわ目立ちました。バーリーは、数ある「映画・007シリーズ」から複数のタイトルを採用し、ゲーム性の異なるスロットマシンにそれぞれ別の007シリーズの名を被せて発表してきました。過去にも、同じタイトルで複数の異なるゲームを同時に発売する例はありましたが、今回のバーリーはスロットマシンのシリーズと映画のシリーズを巧みに組み合わせるという、従来の単なる看板に留まるIP戦略とは一味違うヒネリを感じさせています。この辺は、さすがアイディアのバーリーと言うべきかもしれません。
バーリー(と言うかSGと言うか)が出展した007シリーズスロットマシン。左より「カジノロワイヤル」、「ゴールドフィンガー」、「ダイヤモンドは永遠に」をテーマとしており、それぞれゲーム内容は異なる。
SGはまた、ETG(Erectronic Table Game =電子ゲームテーブル)の開発にも力を入れていました。元々、バーリーに買収され、そのバーリーの買収に伴ってSGの子会社となったシャッフルマスター社が手掛けていた分野ですが、今回はバーリーのブランドで新しいETG「REVOLUTION REELS」が出展されていました。
SGの新しいETG機。5つの同心円に配されたカードでスタッドポーカーを行う。通常のポーカーハンドの他、ベットしたスーツのランクをブラックジャックの要領で加算してその点数の多寡によって配当が付くという賭けもある。
「REVOLUTION REELS」は、スロットマシンの変形ともルーレットの変形とも言えますが、スロットマシンにしてはゲーム結果が出るまでに時間がかかり、またルーレットほど単純なゲームでは無い点が気になります。
SGからもうひとつ、「REVOLUTION REELS」と同じ筐体を使用したビデオルーレット。メカを使わない分、故障が少ないとか筐体が小さくできるとかコストが安いという利点はある。ビジネスとしては合理的なのだろうけれども、このような電子ゲーム機器がスタンダードとなるまでには、まだ5年、あるいは10年単位の時間が必要ではないかと思う。
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ETGと言えば、最近のアルゼもこのジャンルに傾注しているようです。今回は新製品として、オートビッグシックス、オートルーレット、電子クラップステーブルが出展されていました。
●BIG WHEEL(オートビッグシックス)
7年前になる2010年のG2Eに出展し、現在のラスベガスでもそこそこ普及している「Big Wheel」のグレードアップ版です。従来品との大きな違いは、円盤の中央部分にモニターがある点です。ここで、ベット受付中から締め切り、ゲームの進行まで、ビジュアルに訴える演出が行われます。
このビッグシックスは、前作も今作も、とてもよくできていると思います。特に感心するのは、当りの目を指すクラッパー(clapper =当りの位置を指し示すベロのようなもので、アナログのビッグシックスでは皮とフェルトでできている。円盤が回転している間「バララララ」という特徴的な音を出す)の動きと、サウンドやグラフィックの演出がほぼ完璧にシンクロしている点です。一見なんということもなさそうに見えますが、全自動の機械で人の自然な感覚に違和感を感じさせず、かつ結果の判定を間違いなく行えるように作るには、かなり工夫の要ることだと思います。「神は細部に宿る」という言葉がありますが、このクラッパー部分には間違いなく神が宿っています。
今回のビッグホイール(上)と7年前のビッグホイール(下)。クラッパーとは、円盤の上部に見える、赤いベロのこと。プレイヤーがスロットマシンについているようなレバーを引くと回転を始める仕様は継承しているが、レバーの形は変わっていた。
●ROULETTE(オートルーレット)
オートルーレットはかなり古くからありますが、アルゼの機械は、頭上のビルボードに隠された投影機から、ルーレット盤全体にプロジェクションマッピングを行っていました。単に映像を投射するだけなら別に驚くこともないのですが、この機械では、投影する画像が回転盤の回転にシンクロして付いてきていました。もっとも、プロジェクションマッピングを行っているオートルーレットは他社でも出展されており、アルゼだけがすごいと言うわけではありません。
アルゼのオートルーレット。オートルーレットは、ゲーム中にプレイヤーがボールを取り上げるなどの不正ができないように、ルーレット盤の上には透明な材質の覆いが付くものだが、これはまだ試作段階と言うことで、覆いが無かった。盤内が美しくクリアに見えたのも、もしかしたらそれが関係しているかもしれない。
●CRAPS(電子クラップステーブル)
一見したところ、従来からあるアナログのクラップステーブルに見えますが、テーブルの内部は一面モニターとなっており、プレイヤーはテーブルの周囲に設置されたモニターからベットするようになっています。ゲームも、やはりアナログゲームと同じようにプレイヤーがダイスを振って出目を決定します。ダイスの目は自動的に識別されるわけではなく、一人の係員がコントロールパネルから入力し、各席はその結果に従って配当を払い出します。
クラップスというゲームを運営するには、通常はダイスを扱うスティックマン1人、チップの配置や配当を行うディーラー2人、それに審判を行うボックスマン1人の合計4人を要しますが、この電子テーブルならスティックマン1人でオペレートできます。カジノにとってはありがたいことなのかもしれませんが、人対人のコミュニケーションが希薄になってしまうのはさびしい気もします。また、ダイスの下が発光しているので、それが逆光となってダイスの目が見にくいと感じました。
電子クラップステーブル。中央の女性がスティックマンで、プレイヤーが投げたダイスの目を入力し、スティックでダイスを回収する。ただ、ゲーム結果の入力を間違えた場合のバックアップがないと聞いた。ダメじゃん、と思った。
電子クラップステーブルのレイアウト。ビデオなのでいろいろな演出ができるのは利点だろうけど、それが逆光となってダイスの上面が見にくい。
ワタシは、アルゼのスロットマシンは、その筐体デザインもグラフィックのセンスも大嫌いで、全くやる気がしないのですが、今回出展されていたこの3つに限れば、少なくとも雰囲気は良くできていると思いました。
今回のショウでは、アルゼはもう一つ、G2Eショウではたいへん珍しいコインプッシャーを出展していました。
①アルゼが出展していたコインプッシャー、「CASH CLOWN」。 ②プレイフィールドには、通常のトークンの他に、ルーレットを回したり、直接賞金になると思われるトークンがある。 ③ルーレット部分。黄色のトークンを落とすと回り、結果によってプレイフィールドにトークンが払い出されたり、クレジットが上がる。 ④WIN口を覗き込むと、落ちたメダルとトークンの選別機構が見える。
どんなところでの稼働を目指しているのかはよくわかりませんが、G2Eにプッシャーが出展されるのは珍しいことです。コイン以外の異物を自動的にプレイフィールドに補充するプッシャーは、日本のゲーセンではもはや当たり前ですが、海外ではまだ珍しいモノと思います。それにしてはあまり注目を集めているようには見えなかったのが残念です。
(もう一回つづく)