大田区議会議員 奈須りえ  フェアな民主主義を大田区から!

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公共分野に紛れ込む市場原理と繰り返される施設使用料引上げ

2020年03月21日 | 公共施設整備

2017年に引き続き、2021年から公共施設の使用料を引き上げようとしています。

施設使用料は、大田区の歳入に入る、税負担にも近い区民のみなさまの負担の引き上げです。

たくさん使う人は使っただけ負担する、という受益者負担の考え方は、一見問題ないように見えますが、これを安易に許せば、福祉も教育も、かかった費用を使っている人が負担すればよいになり、社会保障の基本を壊します。

公が住民に求める施設の「受益者負担」は、そもそも、どのくらいの公共施設が必要か、何に対して、どのくらいご負担いただくかの前提がなければ、建てれば建てただけ区民の使用料負担が増えることになります。

しかも、使用料と税で負担するので、当然建てた分、税負担も増えますし、減免したり、利用率が低ければ、さらに一般財源の負担が大きくなり、福祉や教育財源を圧迫することになります。

以下は、施設使用料引き上げ議案への反対討論です。文末に、今回引き上げる施設の対象条例を記載します。



大田区は4年に一度施設使用料を改訂

大田区は、4年に一度施設使用料金を見直すとしています。

 今回の使用料改定は、2017年に引き続き、前回改定しなかった施設を含め、受益者負担の視点から、使用料を2021年から改定するための条例改正です。4年に一度の改正だから、値上げしたと思ったらもう次の値上げのことを考えているのです。

4年前に引き続き、使用料引き上げ議案が送付され、あらためて、大田区がどのような考え方で、区民の施設の使用料を計算しているのか、みてみました。

建設費も維持管理費も受益者負担(割合こそ違うものの)


大まかにいえば、建設費を耐用年数で割り、一年分の減価償却費と、改修費と光熱水費と施設貸し出しのための人件費を足し合わせて、それを全体の面積で割って、共有部分を除いた貸し出し面積でいくらかかるのか計算しています。

あいまいな受益者負担の根拠(公共性と市場性など)

これを、施設ごとに、必需性と選択制、
公共性と市場性、という4つの指標にわけで、その性質で、公費負担と利用者負担の割合を決めて、使用者と公費に分けて負担しています。

今回は、選択性があり、公共性が高い第四区分に該当する施設と、選択性があり、公共性は中程度の第五区分の施設の使用料見直しを行っています。

この公共性、市場性、必需性、選択制の4指標で利用者負担割合を決めていますが、公共性と必需性、市場性と選択制はほぼ同じ意味ですし、この定義があいまいなまま、利用者と公費の負担割合が決められています。

公共性を失いつつある大田区の施設

しかも、行政目的を持たせた施設としての役割や機能を大田区が大切にし、区民活動が活発になるよう努力しているかと言えば、時代的社会的な要因もあるかとは思いますが、努力が感じられません。

市場性や必需性とも密接にかかわる問題ですが、公共性の意義についてもっと明確にして、分類すべきです。

自治体における公共施設とは


一方で、公の施設は、そもそも、使用料金をあてにして、管理運営されるべきでしょうか。

本来、施設として維持管理できるだけの最低限の固定費(建設費、改修費、光熱水費の基本料金、最低限の人件費など)は、通常の税・自治体財源の中で賄うべき費用ではないでしょうか。

そのうえで、使えばかかる光熱水費や、夜間や休日の受付の方の人件費、清掃費、軽微な修繕費などを運営経費として利用者にご負担いただくと言うのが基本的な考え方ではないでしょうか。

必要だから建設する公共目的の施設は、基本税で建設維持管理すべき



そもそも、公の施設は、欲しいから建設するのではなく、必要だから整備するのですし、利用者の多い少ないで施設建設を決めるなら、市場経済でもできることです。

今回の使用料引き上げで、施設を建設したり、野球場を造ったりすれば、利用者は使用料で負担し、残りの公費負担分は、一般財源で負担することになることがわかりました。

一部の人の金儲けを許すようになった公の施設

営利目的で使う施設に無い受益者負担の考え方



実際、見るスポーツや、各種営利目的の事業なども、公の施設で行われるようになっています。今回は指定管理者制度の利用慮近世を採用している施設を料金改定の対象にしていません。しかし、基本的な考え方は、公の施設の公共性の有無に密接にかかわりますし、施設を管理運営することで利益をあげている指定管理者等の受益者負担をどう考えるかも早急に整理すべきです。

有ったらいいな、といった気持ちで施設を作り続ければ、利用者の使用料が増えるだけでなく、施設建設費や運営経費ぶん、一般財源負担が大きくなります。

明らかにすべき公共施設整備の在り方の基本的な考えと財政負担の在り方


使用料の改定の前提に、大田区の公共施設整備の在り方の基本的な考えと財政負担の在り方を明確にすべきだと思います。

使用料は、受益者負担と言いますが、区民のみなさまにご負担いただく費用で、使用料を引き上げると言うことは増税に等しいことだからです。

 しかし、実際に改定される施設のうち、この消費者生活センターはじめ、多くの施設が前回に引き続き改訂されます。

中には前回値下げされたにもかかわらず、今回引き上げられる施設もあれば、この消費者生活センターのように4年前に引き続き引き上げ平成28円以前の料金に比べると5割増しになる施設もあります。

   今後、原価の算定項目、公費負担、利用者負担の割合などは、変わる可能性があると答弁していますが、人口や物価などだけでなく、受益者負担の在り方そのもの、公共性とは何か、など基本的な考え方を整理すべきです。

補助金交付金と使用料

また、大田区が造っている減価表にも、補助金や交付金を記す項目はありません。
しかし、施設ごとに㎡あたり床面積原価を出して計算する方法は、施設の大規模改修などの影響を受けやすく、使用料の継続性が保てません。補助金や負担金は、施設による負担の大きな違いを埋め合わせるためにも、金額として把握しておくべきです。

減免と使用料

 

また、施設を大田区が使用することも多いですし、大田区や教育委員会の後援などがつくと、施設使用料が減免されることもあります。

区の使用や減免で、本来利用者が負担すべきところ、利用者の使用料が入りませんので、その分、公費負担として、区民で広く負担することになります。

大田区は、どの施設でどれくらい減免されているか把握しているはずですが、一方で、過大な使用料負担を区民にお願いしながら、減免について、ブラックボックスになっている現状は改善すべきです。
公表して、区民のめにさらすことで、公平性や、過剰な減免を抑制すべきです。

そのうえで、大田区では、また十分整備されていない、統一的な減免の基準を設けることも必要だと思います。
これらの施設は、指定管理者制度を採用している施設もあれば、直営も委託もあります。 
利用料金制は今後の課題と聞きましたが、営利企業が施設そのものを営利目的で管理運営していることについての受益者負担をどう考えるのかは、施設使用料の問題だけでなく、日本の民営化における大きな課題だと思います。
公の施設を使用する権利があり、税金で負担している区民が、使用料を受益者負担させられながら、公の施設を金儲けで使う指定管理者は、家賃を支払っていません。

今後は公園のパークPFIやコンセッションという考え方が大田区でも使われるときが来るかもしれませんから、使用料の改定を機会に、受益者負担の考え方について整理すべきだと思います。

借りている施設、区保有施設の使用料


生活センターは、大田区所有の施設だと言うことですが、施設によっては家賃を支払っている出張所付属施設のラズ大森などもあります。

家賃はどう扱われるのかの整理も必要で、そこから、区が建設するのと借りて運営するのとどちらが負担がすくないかもおのずと明らかになると思います。

使用料の算定は、大田区のコスト意識を明確にし、運営や建設手法の優劣を判断する材料にもなりますから、これを機会に、きちんと精査してほしいと思います。

税の二重取り


アイルランドは水道事業を税金で行っていましたが、料金徴収しようとした政府に対し住民は税の二重取りだと激しく抵抗しています。
公の施設の在り方も、使用料と税、どちらでどれだけ負担するのかは、決められているものではなく、私たち区民が決めることです。

 そうした意味では、今回の使用料の考え方のように、作ったらその分、利用者に負担を求める考え方は、施設を造るたび、施設使用料という増税が行われることに等しいわけですから、私は、無責任な施設建設につながるため、この考え方で良いのか考え直すべきだと思います。

都市部の豊かな財源の恩恵を私たちはどこで受けているのでしょうか。
立派な箱モノだとすれば、それさえ、今後さらに、使用料という形で負担が大きくなりそうです。反対です。



●第12号議案
大田区立消費者生活センター条例の一部を改正する条例
●第13号議案
大田区区民活動支援施設条例の一部を改正する条例
 
●第14号議案
大田区特別出張所付属施設条例の一部を改正する条例
●第15号議案
大田区立区民センター条例の一部を改正する条例
●第16号議案
大田区立文化センター条例の一部を改正する条例
●第17号議案
大田区立大森東地域センター条例の一部を改正する条例
●第18号議案
大田区立ライフコミュニティ西馬込条例の一部を改正する条例
●第19号議案
大田区立池上会館条例の一部を改正する条例
●第20号議案
大田区立山王会館条例の一部を改正する条例
●第21号議案
大田区多文化共生推進センター条例の一部を改正する条例
●第22号議案
大田区民プラザ条例の一部を改正する条例
●第23号議案
大田区民ホール条例の一部を改正する条例
●第24号議案
大田文化の森条例の一部を改正する条例
●第25号議案
大田区立大森スポーツセンター条例の一部を改正する条例



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