水車ボランティア(+山家鳥虫歌)

ボランティア解説員としての見聞から始めた、ボケ防止メモ。12年目。新たに「山家鳥虫歌(近世諸国民謡集)」を加える。
 

日の名残り(113)

2020-03-12 10:13:14 | 日の名残り
At this very moment, unless I am very much mistaken, at this very moment, his lordship is discussing the idea of His Majesty himself Hitler.

この瞬間~~ぼくがよほどひどい間違いをしているのでなければ、いまこの瞬間にだ~~卿は、国王のヒットラー訪問を提案しているはずなんだ。

スティーブンス氏が仕えていたダーリントン卿はドイツのナチ政権と交流を深めていたのだが、ある夜、駐英大使リッペンドロップが屋敷を訪れ、英国側との秘密会議がもたれた。カージナルス氏(この人はダーリントン卿に子供のころから可愛がられていた)という新聞記者が、この会議を嗅ぎ付け、スティーブンス氏から情報を引き出そうとやっきに説得していたときに、発せられた言葉、が上。


日の名残り、を小説として名作に押し上げた根拠のひとつが、この英国国王ヒットラー訪問伝説であった、と思う。
タブーへの挑戦へ、であったのだろうか。

このことの重大さと、スティーブンス氏の、生真面目さとの対比がなんともいえず、絵になる見事さよ。
カズオイシグロの非凡さか。


ところで今世界は、コロナウイルスを原因としたパンデミックだ。
特効療法開発・発見の一番乗りは日本からに間違いない、と信じている。