水車ボランティア(+山家鳥虫歌)

ボランティア解説員としての見聞から始めた、ボケ防止メモ。12年目。新たに「山家鳥虫歌(近世諸国民謡集)」を加える。
 

新・しんぐるま解説(8)万力と搗き臼

2010-10-14 18:26:03 | 水車紙上解説
「水車を回転させて得た動力を他に伝えるためには歯車が必要です。鉄が普及する前の日本では、歯車を木材でつくり、万力と呼びました。
しんぐるま にも多数の万力が組み込まれています。

ごらんの通り、この歯車は寄木細工のように多数の部材を組み上げており、寄せ歯式と呼ばれます。日本には寄せ歯式のほか、一枚の円盤の周を削って刃先を作る削りだし式、円盤の周上に格子状に刃先を組み立てる差し歯式と呼ばれる歯車があるそうです。

 この万力を見ていただくとおわかりのように、刃先の両側が削られています。刃先だけを交換することができ、なおかつ、一本の刃先の両側も使う、というすぐれものです。刃先の材料は、庭に植えた樫の木です。樫の木の比重は0.8ぐらいで、とても硬い木です。刃先以外の部材はケヤキだそうです。これの比重は0.65ぐらいだそうです。庭の一番太いケヤキの樹齢は300年を越える、といわれています。


 ここに14本並んでいる柱のようなものが杵です。これらが上下に運動し、下の臼の中に入れた米や麦を搗きました。下の臼は4斗つまり1俵の穀物を入れることができます。杵は15cm角の欅でおよそ18貫(67kg)あるという話です。

 水車の回転力は、大万力ともうひとつの万力(繰り出し万力)を伝い、この太い棒(欅で横芯と呼ぶそうですが)の回転に転換されます。そして、この横芯の回転にともない、それについている棒(なで棒)が杵についている板を跳ね上げ、その反動で杵が落ち、臼の中を搗きます。

 水車の回転速度を毎分10回転と仮定しますと、大万力(38)と繰り出し万力(20)の歯数、なで棒の数(4)から、杵は毎分80回程度上下していたものと思われます。杵ごとになで棒の位置がずれていますから、フル稼働したときは壮観だったにちがいありません。

 この太い杵で搗いていたのは大麦だったそうです。麦には挽き割麦と押し麦とがあります。
押し麦は昭和初期に押し麦機が普及した後、食されるようになりました。
 
 一方、挽き割麦は、それをつくるのに大変手間がかかったようです。ここのオーナーであった峰岸さんのお話が、”水車屋ぐらし”(三鷹市教育委員会、p42)に次のように残っています。

(麦は皮が固いのでそのままでは搗けない。水を使って表面を潤し、柔らかくしてから荒搗きをする。次に水を少なくして仕上げ搗きし、丸粒に精麦する。この丸粒を干してから割り麦にする。・・・・・丸粒を石の引き割り臼でひく。この臼は上下を同じに刻んだ剣刃になっていて、粉には挽けず、一粒が2~3つ割の挽き割りになる。)

荒搗きと仕上げ搗きにそれぞれ10時間、引き割り臼に4時間要したそうです。」

     つづく


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