旅限無(りょげむ)

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解散・解党・憲法改正 其の壱

2010-09-26 11:39:56 | 外交・情勢(アジア)
■昔、昔、大英帝国という大きな国にネヴィル・チェンバレンという首相がおりました。大学で科学と冶金学(金属工学)の学位を得た理系の首相だったそうですが、オーストリアを腕力で併合したドイツのアドルフ・ヒトラー総統とイタリアのベニート・ムッソリーニの仲介で話し合いを持ち、1938年9月29日に「ミュンヘン協定」という悪名高い宥和政策を実現した歴史上の人物であります。この協定によって旧チェコソロバキアのズデーテンラントがナチス・ドイツに与えて第二次世界大戦の始まりを1年先延ばしすることができたのでそうです。

■それから10年も経たない頃、大日本帝国は世界の主要国を敵に回して大きな戦争に負けそうになり、何を勘違いしたのか日露戦争で海と陸でこてんぱんにやっつけたソ連(ロシア帝国)に戦争終結の仲介役を頼もうかなあ?と本気で考えていたのだそうです。満洲に展開していた対ソ用の軍隊を国境から引かせて「刺激しないように」気を使っていたところ、相手は仲介役になるどころか中立条約を破って攻め込んで来たので吃驚仰天……。そんなまだ故事と呼ぶには新しい歴史の話をふと思い出してしまいますなあ。そうそう、チェンバレン首相の国には13世紀に現在のフランスにあった領土を失ったジョン欠地王(John the Lackland)と呼ばれた王様もいたことなどもいましたなあ。

■そんな事を思い出したのは、二期目に入って「これからが本格的に内閣が仕事をするぞ!」と有限実行内閣を宣言した菅アルイミ首相の内閣が、突如としてチャイナの船長を釈放してしまったと聞いて衝撃を受けたことが原因であります。これが本当に「有限実行内閣」の目指している政治であるなら、政権交代にうっかり期待して投じた1票を悔いている多くの有権者のためにも、一刻も早く衆議院を解散して欲しいと切に望む気持ちがいよいよ強くなります。

■「政権を執ったばかりで……」と自らを若葉マークを付けた初心者政権だと、一見、謙虚な姿勢を擬態に使い肝腎な時には無責任に開き直る悪い癖が治らず、とうとうそれを個人的に体現しているような「イラ菅」と陰で呼ばれる人物が総理大臣になってしまったのですから、一向に出口が見えない経済の危機的状況に対しては「経済音痴」と蔑まれ、外交政策となったら党を二分した代表選挙でも柱となる戦略的な構想は欠片も出せない体たらくでも、何だか怪しげな「政治とカネ」の問題を背負っているらしいクラッシャー小沢よりはマシかも?とか、カレンダーみたいに毎年総理を掛け替えているのは格好が悪いし戦前の嫌な思い出と重なるからとか、辛抱強い国民は気味が悪いほど高い支持率をマスコミに示しているのも仕方がないのかも知れませんが……。


9月7日、尖閣諸島(中国名:釣魚島)海域で操業していた中国籍漁船と日本海上保安庁の巡視船が衝突した事件で、那覇地検は24日、公務執行妨害容疑で逮捕・送検された中国人船長を処分保留で釈放した。25日午前1時45分ごろに八重山警察署を出発した中国人船長は、車で石垣島空港に向かった。同午前2時12分ごろに中国政府が派遣したチャーター機に搭乗し、チャーター機は早朝5時ごろに福州市に到着した。……記者からの質問に対し、船長は「疲れたが、帰国することができて疲れが吹き飛んだ。皆の気遣いに感謝したい」と述べた。続けて船長は、「釣魚島は中国領であり、そこでの漁は合法であるはずだ。国家と共産党および中国人民に感謝したい」と述べ、拘置期間中、日本から過ちを認めるよう要求されたが、拒絶したと述べ、「釣魚島は何がなんでも中国領である」と主張した。
2010年9月25日 サーチナ 

■チャーター機に乗る時も降りた時もVサインを出した船長は、チャイナ側が着々と英雄に仕立て上げる猿芝居のシナリオに従って上手に振舞っているようにも見えますが、日本を発つ時は検察と警察ががっちりガードしていてマスコミは取材が出来ず、復建に到着した時も日本の報道陣には取材許可証が出されなかったそうですから、両国政府は情報操作のやり放題という状態であります。「何がなんでも中国領」というめちゃくちゃな主張を日本の司法当局に認めさせたかのような英雄譚が一人歩きされるのは、甚だ迷惑な話です。

■権威が地に堕ちて穴があったら入りたいのが今の検察当局ですから、仙谷官房長官からの電話一本で「処分保留」を決める間抜けな国賊役を押し付けられても断れないのでしょうが、検察側の発表によると決定の理由は「とっさに取った行為と認められ、計画性等は認められず、かつ、中国人船長には、わが国における前科等もないなどの事情」だそうですから、明日からでも「前科の無い悪いやつがとっさに」強盗に押し入って来たらどうしよう?と不安にもなりますが、一応、「みずきの乗組員が負傷するなどの被害の発生もなかった」から釈放するとも言われているので、陸の上にいる限りは日本の法律は国民の生命と財産を守ってくれそうではあります。

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