旅限無(りょげむ)

歴史・外交・政治・書評・日記・映画

野田ドジョウ外交の始まり 其の壱

2011-09-21 15:13:44 | 外交・情勢(アジア)
■先の台風12号が残した傷跡は国の激甚災害指摘を受けるほどに深刻で、今回の台風15号による大雨で土砂ダムの決壊が懸念されているのは天災でありますが、12号来襲時に官邸を空けて1000円散髪に外出した野田ドジョウ首相の危機管理能力が疑問視されたのは災害対応が後手に回る人災になるのを懸念するが故の声だったのでしょう。そして15号が速度を上げて日本列島に上陸せんとする動きを見せている時に野田ドジョウ首相御夫妻は無事に米国ニューヨークに到着された由。紀伊半島の土砂ダム決壊も心配ですが、庄内川の氾濫による名古屋市周辺で避難生活をしている人達のことも気になります。そして台風上陸後に直撃を受けるかも知れない首都圏の大混乱はもっと心配で、それから辿る北上進路によっては福島第一原発の汚染水流出も不安の種となります。

■野田ドジョウ首相は20日、訪米前に米紙ウォールストリート・ジャーナルのインタビューに応じたそうで、原発は「来年の春以降、夏に向けて再稼働できるものは再稼働していくということを、きちっとやっていかないといけない」と唐突に発言した由。どうやら前と前の前の総理大臣のような稚拙で愚劣な「思いつき」ではなく対外的な宣伝効果を狙った民主党政権にしては周到な?準備をした上での発言らしいのですが、国民にとっては6万人の反原発デモが行なわれた直後でもあり、やはり「唐突」な印象を持ってしまいます。


野田佳彦首相は20日午後、福島県広野町議会の坂本紀一議長らと首相官邸で会い、東京電力福島第1原発事故収束へ向けた取り組み強化の要請を受けた。この中で首相は、来年1月としてきた原子炉を「冷温停止」させる時期を、年内に前倒しする意向を伝えた。原子炉の温度を安定した状態で100度以下に保つ冷温停止の実現は、事故収束に向けた政府と東電の工程表で「ステップ2」と位置付け、来年1月までの達成を目指していた。これについて首相は「何とか年内に目標を前倒しして実現できるよう、頑張りたい」と述べた。
冷温停止をめぐっては、細野豪志原発事故担当相も19日にウィーンで開かれた国際原子力機関(IAEA)の年次総会で、年内に達成する方針を表明している。 
2011年9月20日(火) 時事通信 

■1日前に国際社会に向けて「大丈夫だよ」と精一杯のアピールをしておいて、翌日には事故現場の町議会議長さんに直接「大丈夫だよ」と胸を張って見せることで外と内とが呼応して原発大事故の収束を印象付けたかったようです。でも、問題は「冷温停止」後に待っている広域となった被災地での除染作業が喫緊の問題でしょうし、それ以上に廃炉作業と最終処分方法の決定という気の遠くなるような大仕事もどっかりと残っているのですから、「工程表の前倒し」ではしゃぎ過ぎるのは実に危ない感じがしますなあ。

■菅アルイミ前首相が唐突に言い出したストレス・テストと抱き合わせの「脱・原発依存」という話は、民主党の党是にも政権の継承事項にもなっていなかった事実を、やっぱりなあと脱力感と共に考えるのであります。まあ、そのストレス・テストも欧米の基準とは雲泥の差がある穴だらけのお手盛りテストだと分かってしまった時から新政権の方向性は誰かさん達によって決められていたものと想像されます。原発問題が外交問題でもあることは菅アルイミ内閣の時から、日本国内では脱原発なのにトルコやベトナムには原発を買って貰って大喜びというチグハグな素人外交を見せ付けられていますから十分に国民も理解していることでしょう。

■菅アルイミ前首相の不思議な思考回路では矛盾なく両立できていたそうですが、実際には二兎を追って一兎をも得ずに谷に落ちたか池で溺れたか、結論を示すことなく辞任してしまい、後を継いだ野田ドジョウ内閣は呆れるほどあっさりと脱・原発依存をしれっと棚上げして「再稼動」の日程をイの一番に米国新聞で発表!これが新首相本人の決断なのか、誰かさんの入れ知恵や振り付けなのかは分かりません。しかし、自民党も民主党もころころ首相が変わりましたが、民主党は政策そのものが根こそぎ丸ごとガラッと変えてしまう不気味で信用できない正当だという事だけははっきりしましたなあ。これが泥臭いドジョウ政治の本性ならば日本は泥にまみれてずぶずぶと沈んで行ってしまうかも?

■政党としての綱領も無く、安全保障政策も統一されていない寄り合い所帯の民主党ですから、前の前の首相が沖縄でパンドラの箱を開いて日米関係をぶっ壊してしまった後始末など出来ないだろうと諦めていた時に大震災と原発大事故が起こり、国を挙げて国難だ!国難だ!の大合唱になるドサクサに紛れて政権与党としての寿命が延びてしまったのは、やはり日本の歴史にとっては不幸な出来事だったとそろそろ分かり始めているのではないでしょうかな?民主党政権にとっては国連ビルは鬼門中の鬼門で、鳩山サセテイタダク元首相も菅アルイミ前首相もあまりの嬉しさに正気を失って薄っぺらで直ぐ破ける大風呂敷を広げて見せて、後で大恥を掻く悲喜劇を続けて演じておりますから、三度目の正直でまたトンデモない空手形を切ってひらひら見せびらかすような愚かなことだけはしないで欲しいものであります。

■野田ドジョウ首相ご夫妻が降り立ったニューヨークには何と沖縄県知事が一足先に乗り込んでいたそうで、すでに火の手が上がっている現場に入って行くことになります。玄葉外相も露払い役で先に渡米しているようですが、とても火消し役は務まりますまいなあ。


 --米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)の移設は

「安定した秩序をアジア・太平洋に作り上げていくための基軸は日米関係であり、さらに深めることが大事だ。普天間問題は関係閣僚、前原誠司政調会長らともどのように連携をとるか早く決めたい。移設は(名護市辺野古に移設する)日米合意に基づき進めていく。沖縄の負担軽減は大事なことなので、踏まれても蹴られても誠心誠意、沖縄の皆さんに向き合っていく」……
2011年9月8日 産経新聞 

■新閣僚として就任後発の公式会見で玄葉外相は野田ドジョウ首相の所信表明演説を先取りする格好で「誠(正)心誠意」を使っていたのですが、「沖縄の皆さんと向き合う」前に米国であれこれ話を進めてしまって大丈夫なのでしょうか?

最新の画像もっと見る