旅限無(りょげむ)

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冗談も過ぎるとホラーになる 其の七

2012-03-26 15:49:36 | 外交・情勢(アジア)
■自ら解散についてちらほら口走り始めた野田ドジョウ首相でしたが、とうとう消費税の引き上げに「政治生命を懸ける」とまで言い出した由。もしかすると北朝鮮からミサイルが飛来することよりも、ホルムズ海峡が火を噴く心配よりも消費税に引き上げの方が重要だと思い込んでいるのではないか?と国会で開催中の参議院予算委員会の場で集中砲火を浴びて袋叩きに遭っている田中防衛大臣の姿を平然と見物している野田ドジョウ首相の表情を見ていると心配になって参ります。まあ、元々、民主党政権は外交・安全保障に関して確固とした方針も政策も持ち合わせていないのですから、防衛大臣の椅子にトンデモない人が座ってしまっても何の不思議もないのですが……。

■前任の鳩山・菅両人を反面教師として、自分だけは歴史にしっかり名を残すべく腹を括ったのだとしたら、初動対応で大失敗を重ねて大いなる禍根を残してしまった原発事故の後始末と大震災の復興事業は、これから先どれほどの時間と予算が必要になるのか見当も付かない現状ですから、自分の任期を長くても今年の秋までと考えて、下手をすると4月か6月に解散総選挙か?との憶測が飛び交っている厳しい政権運営をよたよたと続けるにしても、大きな政治課題に取り組むのは止めて、政権を失う前に消費税の引き上げを実現し行きがけの駄賃にTPP参加の道筋も付けてしまおう!と本気で考えているような気がします。前任の2人は本当に何もしないで普天間基地移転問題と原発・震災の後始末を置き土産にして逃げるように総理大臣の椅子から転がり落ちたのですから、「ああはなりたくない!」と心から願うのは当然なのですが……。


「環太平洋連携協定(TPP)はビートルズだ」。野田佳彦首相は24日の都内での講演で、TPP交渉参加を検討している日本の立場を、英人気ロックバンドのメンバーに例えて説明、政府の方針に理解を求めた。
首相は「日本はポール・マッカートニーだ。ポールのいないビートルズはあり得ない」と強調。その上で「米国はジョン・レノンだ。この2人がきちっとハーモニーしなければいけない」と述べ、日本の交渉参加への決意を重ねて示した。 
2012年3月24日(土)18時4分 時事通信 

■拙ブログでは超親米だった小泉元首相に「プレスリー」のミドル・ネームを献上しておりますが、野田ドジョウ首相の口から「ビートルズ」が出て来たのには驚きつつも強い違和感がありました。それ以上に「TPPはビートルズだ!」と唐突に聞かされた講演会に参加した人達はどんな感想を持ったのでしょう?その意味と真意が伝わったのでしょうか?御本人は気の利いた事を言った心算かも知れませんが、ビートルズが解散したのはジョン・レノンがオノ・ヨーコさんと手に手を取って飛び出してしまったからで、ポール・マッカートニーは名曲『Let it be』を作って解散を回避しようと頑張ったけれど、その思いは伝わらずにビートルズは消滅したのではなかったでしょうかな?もしも「米国がジョン・レノンだ」と言ったのは米国がTPPをぶっ壊してしまう可能性があるとのメッセージだったのならば、それはそれで一つの見識なのですが……。

■この不思議な演説が行なわれた3日前に、第84回選抜高校野球大会の開会式がありまして、21世紀枠で選出された石巻工(宮城)の阿部翔人主将が見事な「選手宣誓」を行なって多くの日本人が感動したばかりでしたから、その余韻を乱暴に消し去ってしまうような野田ドジョウ首相の手前勝手で乱暴な比喩が何とも後味が悪いものになってしまいました。国会から聞こえて来る政治家達の言葉が余りにも貧しく卑しく無責任であるからこそ、高校生の宣誓に皆が感動したとも申せましょう。言葉で人を動かし国を引っ張って行くのが政治家の仕事であり使命であるのに、何も決められない国会の茶番劇がいつまで続くのでしょう?

■せめて茶番劇は国内だけに留めておいて欲しいものですが、民主党はちゃっかり役にも立たない訪中団を結成して仰々しく送り出していたのでした。


民主党の輿石幹事長の訪中団と鳩山元首相は23日、それぞれ中国を訪問し、北京市内の人民大会堂で、中国の次期最高指導者に内定している習近平国家副主席と個別に会談した。
輿石氏の訪中は、民主党と中国共産党の「日中交流協議機構」の事業の一環で、23日から3日間の日程で始まった。訪中団は仙谷由人政調会長代行らを含む10人。一方、鳩山氏も同じ日程だが、現地ではほぼ別行動だ。…… 

■金魚のフンならぬ、こういうのを「ドジョウのフン」とでも言うのでしょうか?二番煎じという言葉もありますが、この場合は「恥の上塗り」という表現が適していましょうなあ。わざわざ「我が党は分裂状態であります」と満天下に示すために税金を無駄遣いしているようなものです。尖閣での酒乱船長暴走衝突事件を卑屈に解決して見せた仙谷さんと、田中防衛大臣の産みの親とされる輿石幹事長が揃い踏み、さぞや北京の覚えは目出度かったことでありましょう。それにしても、どうして10人もぞろぞろ出掛けて行ったのでしょうなあ?先行き短い政権与党時代に物見遊山の旅を税金で楽しんでおこうと有象無象が付いて行ったのなら、野田政権が主張している「財政再建」は大嘘ですぞ!これほど明らかな税金の無駄遣いを見逃して、何の行財政改革なのでしょう?!


輿石氏は習氏と約50分間会談し、東シナ海ガス田の共同開発条約交渉の早期再開を求めたのに対し、習氏は「事務レベルで協議し、早期に再開できるよう条件づくりをしていかなければならない」と応じた。歴史問題では、輿石氏が1995年の「村山談話」を引用しながら、日本が平和主義を貫いているとの考えを強調。習氏は「歴史を鑑(かがみ)とし、未来に向けていくことが日中共通の政治基盤だ」と語った。
約20分後に行われた鳩山氏と習氏の会談でも、鳩山氏はガス田の交渉再開を求めた。鳩山氏は会談後、記者団に、輿石氏らとの調整の有無を問われ、「全くしていない。私(の訪中)は半年前から決めていた」と語った。
2012年3月24日(土)9時3分 読売新聞 

■たった50分、通訳が入りますから実質20分強の形式だけの会談に、わざわざ自分の方から「村山談話」を引っ張り出して東シナ海の問題をどうしようと言うのでしょう?続いて「東アジア共同体」の悪夢から醒めてない鳩山サセテイタダク元首相とも判で捺したような会見をこなした習近平国家副主席は、「こ奴らはアホだな」と思いつつも来日時に天皇陛下との会見を前例を破って強引に実現してくれた従順で間抜けな政権与党を「うい奴じゃ」とほくそ笑んでいたことでしょう。3日間の日程で「日中交流協議機構」の事業という名目で飲めや歌えの熱烈歓迎宴会を繰り返していたのなら、もう処置なしであります。


民主党訪中団(団長・輿石東幹事長)は24日、北京市内で中国共産党や外務省の幹部らと会談した。仙谷由人政調会長代行は、北朝鮮が予告した「衛星」名目の弾道ミサイル発射について「国連決議違反だ」と批判し、発射阻止へ日本と共同歩調を取るよう要請した。これに対し、中国の熊波外務省アジア局副局長は「憂慮している。米国、北朝鮮と密接に連絡を取り、情報をつかもうとしている」と応じた。
仙谷氏はまた、中国の軍事力増強に懸念を表明。呉小毅国防省外事弁公室アジア局長は「(情報を)一枚二枚と脱いでしまうと、丸裸になるからできない」と述べるにとどめた。
2012年3月24日(土)21時41分 時事通信 

■こういうのを「ガキの遣い」と呼ぶのでしょうなあ。要するに仙谷さんが「日本は何も出来ませんし情報もありません」と自国の弱点をバカ正直に伝えて「分かっているよ。黙って我々に任せておけ」と軽くあしらわれ、「怖いから軍事力を増強しないで」とこれまた真っ正直に膝を屈して懇願し、「怖がらせるために増強しているのさ」と切り替えされて返す言葉もなくすごすごと引き下がったということでしょう。これが民主党の外交か?!税金の無駄遣いであるばかりでなく国益を大いに損なっているような気がしてなりませぬ。


……鳩山元首相は「東シナ海を真の意味で友愛の海に」と述べた。会談で鳩山氏は、持論の東アジア共同体構想を説明し、東シナ海を友愛の海にしたいと訴えた。……その1時間前には、輿石氏らが習氏と会談し、東シナ海ガス田開発交渉の早期再開と原発事故による日本産品の輸入制限の早期解除を求めたが、習氏は「条件づくり」や「環境整備」への期待を示しただけだった。また輿石氏は、植民地支配を謝罪した「村山談話」に触れ、習氏は「歴史問題は直視することが大事だ」と述べた。
夕食会では、樽床幹事長代行が、北朝鮮のミサイル問題で協力を呼びかけたが、輿石氏が尖閣諸島問題や中国の不透明な軍拡などに触れることはなく、帰国後に野党から批判も上がるとみられる。
2012年3月24日(土)7時37分 フジテレビ系(FNN) 

■東シナ海を「友愛の海」にするために普天間基地を国外に追い出そうとした鳩山元首相は、自分が総理大臣を辞めざるを得なかった理由をまったく分かっていないのか、すっかり忘れてしまったのか?実に不思議な思考回路を持っている奇怪な政治家であります。既に鳩山グループと呼ばれた手下達は後ろ足で砂をかける様にして去ってしまったと報じられ、すっかり裸の王様(最高顧問)になっているのに、元総理大臣の矜持を守っているかのような言動が時々報道されているようです。「どうせ選挙になったらカネ欲しさに手下が戻って来るさ」とでも考えているのかも知れませんが、自分自身が落選して大恥を掻き、大金を注ぎ込んで作った民主党が消滅するかも知れないなどとは、まったく考えられない強靭な思考回路は健在なのかも知れません。そろそろ総理時代の「宇宙人」というニックネームは返上して「政界のゾンビ」とでも自称しては如何でしょう?嗚呼、気味が悪い。

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