旅限無(りょげむ)

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五輪前のお祝い 其の壱

2007-10-22 16:16:24 | チベットもの
■米国議会が北京政府の抗議を無視して挙行した授賞式のニュースは、日本では亀田一家騒動の何百分の一以下の扱いだったようですが、米国の世界戦略やら経済以外の米中関係やら いろいろと考える材料を豊富に含んだ大きな出来事だったはずです。それから、ただでは済まないだろうとは思っていましたが、やっぱり事件が起こってしまったようです。授賞直後から、学生を中心にした集会やデモが行われたとか、それを鎮圧する騒動が起こっているとか、噂は流れていたようですが、とうとう寺院が舞台となって大きな事件が起こったようです。ミャンマー(ビルマ)のお坊さん達の熱気が飛火したというわけでもないのでしょうが……。でも、ミャンマーの暴動騒ぎに関しては、ダライ・ラマ14世からお言葉も出ていましたからなあ。

中国外務省の劉建超報道局長は18日の定例記者会見で、楊潔※(※=竹かんむりに褫のつくり)外相が同日、ラント駐中国米大使を呼び、チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世に米議会最高勲章を授与したことに強く抗議したことを明らかにした。同報道局長は、楊外相が中国政府を代表して抗議を伝えたとし、中国側の不満が極めて強いことを強調。さらに、ブッシュ大統領が勲章授与式に出席、発言した点にも触れ、「米政府に対し、直ちにチベット独立派の活動支援や中国への内政干渉をやめ、中米関係を維持する現実的な行動をするよう促した」と述べた。 
10月18日 時事通信

■ミャンマー暴動に関しては、元ミャンマー大使の山口洋一さんが週刊新潮10月11日号に『特別手記』を発表したり、日曜日のテレビ朝日『サンデープロジェクト』に出演して亡命組織の代表と討論したりして、さかんにアウンサン・スー・チー女史に米国などから秘密資金が流入している事を述べているようです。この種の話はなかなか真相が見え難い性質のものなんですが、何処の反体制運動でも亡命者や海外の団体からの援助が無ければ運動を継続するのは非常に困難でありますし、そもそも中国共産党自身がソ連だけでなく米国からもあれこれと援助をして貰っていたわけですから、要するに「勝てば官軍」の結果論でしかた語れない厳しさが有るのでしょう。

■日本でもダライ・ラマ法王の著作がたくさん出ていますし、時々来日して講演活動を行う際にも、多くの「浄財」が集まるのですが、それはインドに拠点を置いている亡命政府の貴重な収入源になっているのは確かです。米国政府が国家予算を割いてチベット独立闘争を煽っているかどうかは何とも言えませんが、チベット動乱の際に「ガーデン作戦」とかいう中途半端な軍事援助を行おうとして逆効果になってしまった事があるので罪滅ぼしはやっているかも知れませんなあ。まあ、今回の授賞は表立っての支援を議会を挙げて表明したようなものですから、北京政府としては看過できない問題ではありました。

■さて、事件はラサの古刹デプン寺で起こったと、日本の新聞各社が一斉に報じているようです。


21日付の香港紙・明報によると、中国チベット自治区の区都ラサ西郊にある著名寺院、デプン寺で17日、チベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世の米国での受勲を祝福する儀式を行おうとした僧侶が警官に制止され、怒った僧侶約900人が警官隊と衝突した。同紙によれば、当局側は僧侶らが市中心部に移動して抗議活動を行うのを阻止するため、僧侶約1100人と参拝者数十人を寺の中に閉じ込め、一切の出入りを禁止。また、寺周辺から市中心部に向かう幹線道を封鎖した。 
10月21日 時事通信

■事件発生が17日なのに、香港の新聞に記事が載ったのが21日というのは、いかにも情報管制が厳しいかを証明しているようなものですなあ。旅行者や個人的な連絡ルートから漏れ出て来る噂では、なかなか世界中に配信されないのですが、どうやら本職のジャーナリストが事件の発生を確認した可能性が高そうです。記事に登場する「デプン寺」というのは、ラサ市内から北西に12キロに位置するチベットでも最大規模の巨大な寺院です。日本人にとっては「仏教都市」と呼んだ方がぴったりするでしょうか?今は公称?7000人(実際は政治的な理由で人数はぐっと絞られているはず)の僧侶が在籍中とのことですが、全盛期には楽に1万人を超えていたと言われています。

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