旅限無(りょげむ)

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解散・解党・憲法改正 其の参

2010-09-27 06:38:24 | 外交・情勢(アジア)
■そもそも船長の逮捕を決定したのは外務大臣に横滑りする前の前原国交相だったと言われていますが、外相就任直前に現場の石垣島に行って衝突された巡視艇に乗り込んで証拠のビデオ映像もしっかり見て、本気で日本の国内法に従って「粛々と」事を進めるぞ!と明言したものでした。でも、逮捕決定当時から仙谷官房長官は反対の慎重姿勢を執っていたそうですから、八ッ場ダム問題・高速道路問題・JAL問題などなど多くの難問を取り散らかしたままで国交相のポストから引き剥がして外相に横滑りさせた仙谷人事も、今回の衝突事件が大きな要因になっているのだとしたら、何の知らない・何も出来ない菅アルイミ首相を横に措いて前原VS仙谷の対立抗争が表面化するかも? 

前原誠司外相は17日夜、外務省での就任記者会見で、東シナ海の天然ガス田「白樺」開発で中国が掘削に着手した場合の対応について「何らかの証拠が確認された場合は、しかるべき措置をとっていく」と述べ、中国側の動きをけん制した。ガス田施設では中国船が掘削作業用ドリルのような機材を運び込んだことが確認されているが、中国側は「修理のための作業」と説明している。前原外相は「しっかり事実確認をしていく」と述べたうえで、ガス田開発の条約締結交渉の早期再開を求めた。……
2010年9月18日 毎日新聞 

■「修理のための作業」の序でに掘削作業の準備も進めて、日本政府に文句を言われたら、今回の衝突・逮捕・釈放の屈辱を蒸し返してねちねちと日本側に責任を押し付けて本命だったガス田開発を強引に進めてしまうような気がしますなあ。いくら前原新外相が「しかるべき措置をとる」などと言っても、国内法に従って今回の事件を処理できなかった日本ですから、結局は何も出来ずに指をくわえて見ているだけの話に終わるようで、今から落胆する心の準備をしておかなければならないかも?
 

那覇地検が……中国人船長を処分保留で釈放する決定を公表したことに24日、与党・民主党からも失望や疑問の声が相次いだ。党代表選後、内閣支持率の上昇に勢いを得た菅首相だが、中国の圧力に屈服した格好の今回の決定は、今後の政権運営に大きな影響を与えそうだ。菅直人首相の求心力低下にもつながり、民主党代表選で首相に敗れたばかりの小沢一郎元幹事長の「復権」を早めることになるかもしれない。「内閣支持率はがた落ちでしょ。10ポイントは落ちるんじゃないか。いや、60%から40%に20ポイント落ちるかも。首相も仙谷由人官房長官も謙虚さが足りない」民主党中堅幹部は釈放決定のニュースを聞いて、天を仰いだ。 

■心優しく平和ボケ気味の日本国民が、一体、何を期待して菅アルイミ首相の政権を支持しているのか?と不思議に思っていたら、単に怪しい小沢金権政治になるよりは、少なくとも悪い事をしない(出来ない)印象のある菅アルイミ首相で我慢しようじゃないか、と無いもの強請りを諦めて妙に達観した民意が積み上がっていただけのようです。ただ総理大臣の椅子に1日でも長く座っていたいだけの菅アルイミ首相の周辺では、それぞれが長年持ち続けている「虚仮の一念」やら「三つ子の魂百まで」やら、マニフェストにも各種演説にも現れない奇怪な政治信条に基づいた言動が大小の摩擦や衝突を起こし続けているようです。


仙谷氏らは検察当局の判断だと強調するが、世論の不満や野党などの批判は「政治主導」を掲げる首相らに向かうのは必至だ。党内のリベラル系議員からは「中国も怒っているし、やむを得ない決定だ」(中堅)と擁護の声もあるが、首相支持派の中堅議員は「これは禍根を残す。首相や仙谷氏が決めたといわれても仕方ない」ともらした。松原仁衆院議員、金子洋一参院議員ら保守系有志5人は「法秩序を蹂躙する」と抗議し、釈放の撤回を求める緊急声明を出した。 

■何の実も無い不毛な内輪の痴話喧嘩でしかなかった代表選挙は、予想通りに民主党を政権政党として脱皮もさせず、鍛えることもなく終わったのでありました。元々、菅VS小沢の対決は最も生臭い政治家としての生き残りを懸けた権力闘争でしかありませんでしたから、綱領なき政党の代表を選ぶ儀式らしく内政・外交両分野で具体的なビジョンも法律や制度の設計図も提示されずに終わり、鳩山サセテイタダク内閣を吹っ飛ばした沖縄の基地移設問題の善後策も語られず、党の最大の弱点とされている安全保障政策は封印されたままで菅アルイミ内閣は「ほんと~に、あっりがとございま~す」の軽い再出発をしたのですから、逮捕・釈放のどたばた劇を演じるのは当然でありましょうなあ。


代表選で小沢氏を支持した平野博文前官房長官は「おかしい。勾留延長して途中で(釈放決定)というのは、どういう理由なのか、はっきり説明しないといけない。何のために延長したのか意味がよく分からない」と指摘した。同じく小沢氏を支持した山口壮政調筆頭副会長も「国益の観点から筋が通らない」と決定を批判した……小沢氏は24日昼、都内のホテルで開いた政治資金パーティーのあいさつでこう述べた。「今度こそしばらく静かにしている。ただ、天命が下ればその時はまた、命を懸けて国のためにがんばりたい」……小沢氏は「(代表選は)マスコミのネガティブキャンペーンなど逆風の中だった」とこぼしたが、支持者からは「次は勝てるぞ!」とのかけ声が飛んだ。パーティーの直後に流れた中国人船長釈放決定は、小沢氏にとって「天命」につながっていくかもしれないニュースといえる。昨年暮れに党所属議員140人以上の大訪中団を率いたような小沢氏が政権の責任ある立場にいれば「今回の事件に適切な対応をとったかは疑問」(菅支持の党幹部)だ。しかし、「一兵卒」として菅政権に距離を置いたことが結果的に、小沢氏に有利に働くことは十分あり得る。
2010年9月25日 産経新聞 

■誰も聞いてくれない演説をするために菅アルイミ首相は渡米中、就任直後の前原外相も張り切って後を追い、海上保安庁を管轄する馬淵新国交相は23日に奈良市で開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)の観光相会合に出席して、チャイナから出席した国家観光局の祝善忠副局長との「会談を辞退」「歓迎レセプションを欠席」と陰湿な嫌がらせ合戦を展開していたものの、前任の前原大臣の決意と意志は受け継いではいなかったようです。新任の柳田稔法相は検察特捜部の大不祥事に対応やら拉致被害者家族との面会などの合間を縫って仙谷官房長官に2回も呼び付けられ、伝家の宝刀「指揮権発動」を匂わされて慌てて検事総長に相談に走らされたとの噂もあって、24日の段階で「指揮権発動はない!」と必死に言い張っていたそうな。

■あの代表選挙の大騒ぎの中、人が変わったようににこにこ顔でテレビ局を渡り歩いて露出度を急に上げたクラッシャー小沢が、どこかの番組で「自分は中国の首脳に尖閣は日本の領土なんだ」としっかり直接言って来たんだ!と早口で話していた記憶があります。大訪中団を引き連れて北京に乗り込んだ姿が報道された時、「人民解放軍の野戦軍司令官」発言は聞きましたが、尖閣諸島の問題にも言及していた事はまったく知りませんでしたから、エッと驚いた記憶なので間違いはないと思います。もしも、代表選で勝っていたら、組閣前の衝突事件ですから前原国交相が同じ対応をしたでしょうが、さてさて「野戦軍司令官」はどんな姿勢を執ったことやら……。今更、火中の栗を拾わなくてよかった!と喜んでいるような側近ばかりなら、やはり首相にならなくて良かったと国民は改めて安堵すべきなのでしょうか?

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