旅限無(りょげむ)

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中国洗浄法 其の壱

2006-03-17 19:57:42 | 外交・情勢(アジア)
■小平さんは「四つの近代化」、江沢民さんは「三つの代表」、胡錦涛さんは2人の先輩を足した数より多い「八栄八恥」だそうです。ブレイン役の学者先生や官僚が一生懸命に考えるのでしょうが、こういうスローガンには細かい解説書が付いていて、有無を言わせず全部棒暗記しなければならないので、人民は大変な苦労をするようです。それをテキストにして全国隅々まで学習会を開いて覚えなければならないのですから、大変な苦労です。少数民族も北京語で覚えさせられるのですから、生きた心地もしないでしょう。学校施設に地域の教員を招集してぎゅうぎゅう短期集中講習会などをやる時など、参加者はみるみる内に顔色が悪くなってふらふらしていましたなあ。

■胡錦涛さんは親切なのか単純なのか、対概念になっている8組の用語を並べただけですから、少しは覚え易いかも知れません。3月15日の読売新聞から抜粋してみましょう。


「八栄」=「祖国熱愛」「人民奉仕」「科学尊重」「勤勉労働」「団結互助」「誠実信用」「法律順守」「刻苦奮闘」

「八恥」=「祖国損壊」「人民背離」「愚昧無知」「安逸怠惰」「私利私欲」「道義忘却」「法律無視」「贅沢淫乱」

■「八栄」を実践すれば、共和国は必ず繁栄する!という教えですから、わざわざ列挙して連呼しなければならないほど、誰も実践していないのでしょうなあ。従って、「八恥」が氾濫しているのが実態だと宣伝しているようなものです。「八栄」などは、何を幾つ並べても同じ事でしょうが、「八恥」の方は実際に起こっている大問題が並んでいるに違い有りません。ですから、頭を抱えて困り果てた胡錦涛さんが、やっと8種類の「恥」にまとめ上げたのでしょう。こんなものが100も200も有ったら誰も覚えられませんからなあ。

■「祖国損壊」と「人民背離」は毎度お馴染みのスローガンと同じです。「愚昧無知」は、間違いなく法輪功の撲滅を目指す動きの継続です。「安逸怠惰」「私利私欲」と2つ並べられると、「社会主義革命」はどうなったの?と聞きたくなりますなあ。搾取も経済恐慌も無い労働者の国家なのに、働かない者や欲深い者が溢れているのなら、早く社会主義革命を起こした方が良いのではないでしょうか?「道義忘却」なら儒教を国教化すべきでしょうし、「法律無視」なら韓非子などの法家思想が必要ですぞ。「贅沢淫乱」ならば禅宗や道教の修行が欠かせませんなあ。中華4000年も社会主義革命も何処に行ってしまったのでしょう?


中国では司法機関が党の指導下にあるため、せいじ権力を握る幹部の干渉を受けやすく、判決がゆがめられたり、その執行が阻害されたりといった問題がよく起きる。不正・腐敗に走る裁判官も少なくなく、昨年は378人の裁判所関係者が処分をうけた。……全人代で採択された第11次5ヵ年計画は、「司法の公正を促進し、社会正義と司法の権威を守る」「法律を順守し、法に基づき事を行なうという社会気風を作り上げる」との目標を掲げている。しかし、それを実現するための政治改革などの具体的道筋は何も提示されていない。
3月15日 読売新聞

■典型的な「総論賛成・各論反対」が計画経済政策ですから、更にその計画を実現するための施策となれば、ちょっとでも具体的な部署名や責任者の個人名などが発表されたらクーデターが起こるでしょう。まして、こうした腐敗や不正が蔓延している原因を究明などしようものなら、前政権の悪口を並べなければなりませんから、最悪の場合は内戦が勃発します。ですから、「新農村」などのように「新」という字を冠した意味不明の用語が宙に浮いてしまうのでしょうなあ。

■「私利私欲」「道義忘却」「法律無視」と「恥」の三点セットが絡み付いているのが「地下銀行」の問題です。北朝鮮という穴からは、偽札がひょいひょいと出て来て大変な迷惑ですが、中国には「地下銀行」という大穴が開いていて、折角貯まった外貨がずるずると流れ出ているのだそうです。北朝鮮がやっている偽札犯罪は、刷った覚えの無い紙幣が各国の中央銀行に戻って来るのですから、責任の負えないインフレが起こる危険が増して行きます。しかし、中国の「地下銀行」は中央銀行の外貨準備高が目減りし行く事になりますから、限定的な国内問題に留まりそうですなあ。でも、北朝鮮が中国の人民元をどんどん刷り始めたら目も当てられない混乱が起こりそうです。

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